第69話
「んー。スプレーもう切れたな。じゃあ色彩魔法覚えとくか」
色彩魔法とは、物質に色をつける魔法だ。
スプレーが切れたら覚えようと思っていたので丁度いい。
「魔法陣は………………こうだったな」
魔法陣を覚えながら少し昔を思い出していた。
まだ黒髪だった頃のこと。
もう随分昔のことに感じる。
そしてその頃にはまだ………
「………ダメだな。吹っ切れねぇ。忘れろってのが無理な話だ。それにここじゃあいつの墓参りも出来ない」
俺は魔法を習得した。
「うっし、部屋に戻るか。そういや何で早く戻れなんて言ったんだ?」
なんかあったかな、と思いながら部屋へ帰る。
「終わったぞー。元の金髪のケンくんだ、ぞ?」
中にはケロッとしているラビと、沈んでいるリンフィアと、文字通り沈みそうなニールがいた。
「いや、お前は何沈もうとしてんだ!」
無駄な金がかかっちまう。
今、人数が増えた我がパーティには無駄な出費は許されないのだ。
「あ、ケンくんだ………戻ったんですね………」
「テンションがおかしいぞ」
「いいんです、ほっといて下さい………フッ、私はどうせ子供………」
誰かに何かを言われたのか。
これを見れば犯人はわかる。
「おいラビ、何言った」
「みためはおとなだけど、なかみはこどもみたいなことをいった」
お前人のこと言えないだろ。
「全てお前のせいだ! このロリコン!」
「ロっ!………おい、何でそうなった!」
「うるさい黙れ、変態野郎!犯罪者! 被告人! 死刑囚!」
酷くなっている。
チクショウ、これもどうせこいつだろ。
ラビを見ると実に楽しそうに笑っていた。
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あの後じっくり話し合いなんとか解決した。
ラビの頭には小さなコブが一つ。
「お前マジで言動には注意しろよ」
「いえっさ」
適当な返事だ。
ゲンコツに怯まない11ヶ月。
「そんでリフィ、何かあんのか?」
「そうです! それですよケンくん! お祭りですよ!」
「お祭りィ?」
俺はリンフィアから、大狩猟祭の話を聞いた。
モンスターを狩りまくる祭り。
なるほど、外でガッチャガチャやってるのはそれか。
それは、
「丁度いい!」
新武器を試す絶好の機会じゃないか。
「リフィ、それはどのパーティも参加可能か?」
「はい。登録すれば、全員Gランクでも全員SSSでも参加可能らしいです」
「はっはっは! そりゃあいいや! このGランクだらけのチームで優勝してやろうぜ」
こんな素敵なイベントに参加しないわけにはいかない。
恐らく報酬も出るだろう。
とりあえず金がいるのだ。
「え? 参加するんですか?」
「嫌か?」
そんなわけないよな。
「いえ、参加してみたいです!」
「リンフィア様が参加するなら当然私もだ」
「ワタシも参加してみたい」
よし、決まりだ。
「それじゃあ、登録しに行こうぜ」
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「一週間ぶりのギルドだ」
相変わらずのざわつきッぷり。
「おい、見ろ」
「うわっ! がっ、ガーディアンだ!」
「本当だ! 金髪のガーディアンが来てるぞ!」
「マジだ! と言うことは………女王だ! 女王もいるぞ!」
「あの天使ちゃんもいるぞ!」
「1匹多くね?」
「本当だ! あれはあれで激かわだな!」
ここに来ると何故か注目を浴びる。
何でガーディアンなんだ?
後、お宅らが天使って言ってるのは魔王です。
真逆の存在です。
「えへへ、天使って言われました」
「おい、魔王」
「今は違いますよー」
こいつが天使と言われるのは、度々俺を、と言うか後ろの2人を襲おうとしてるやつをボッコボコにした後に看病をしたことから付けられた。
以来襲われなくはなったが、これはこれで厄介だ。
前に来て拝まれたこともある。
拝んでるのが魔王だと知らずに………
さて、ラビはなんて呼ばれることやら。
そんなこんなで受付だ。
「おっす」
受付にはいつもの様にマイがいた。
この前ラビを連れて帰った時はいなかったので、久しぶりに会った。
「あら、ケンくん。暫く振りですね。ご用件は何ですか?」
「大狩猟祭に参加したいんだよ。出来るか?」
「はい。でも今回はいくらケンくんでも厳しいと思いますよ」
「へぇ?」
俺の力の一端を見た人がこう言ってるのだ。
さぞ強い人がエントリーしているんだろう。
「今回はギルドマスターも参加されるんです」
「ほー、おっさん直々にか。その口ぶりだと今まで出てなかったんだな」
「ええ、フェアじゃないと言われてたので。でも今回のモンスターバブルが大きいらしくて、それだったら参加すると仰っていたんです」
場所さえ分かっていれば、魔力のたまり具合でわかるものなので、大きさを察するのはそう難しくない。
そうか大きいのか。さらに期待できるな。
「それだけではないです。なんと、かつてマスターがパーティを組んでいた方も参加されるとのことで。さらに近くの高クラスの冒険者の参加者多数で、いつもより色々と規模が大きい狩猟祭になります。正直Gランクが大半のあなた達じゃ厳しいでしょう」
「あー、知らん。とりあえず参加させてくれ」
「ふふふ、そう言うと思ってました。参加を認めます。それでは、頑張ってください」
俺たちは、後日行われる大狩猟祭の参加を決定した。




