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第65話


 ニールに作る装備は、パームカフという手の甲につけるアクセサリーだ。

 これに2つの魔法をエンチャントする。


 一つは、回復一級魔法【ヒールオール】

 使用MPは多いが、ここぞと言うときは使える。

 ニールのHPで瀕死だったとしても、一瞬で回復させられる。

 

 そしてもう一つは、この魔法。

 強化一級魔法【クインテットブースト】

 俺が愛用する魔法だ。

 国内でも片手で数えるほどしか使い手がいない魔法。

 多分あいつなら使いこなせる。


 この2種類を付加する。

 使い分け方は、右側に魔力を注げば【ヒールオール】、左側だったら【クインテットブースト】が使用できる。

 

 これでこの魔法を無詠唱で発動できる。

 こんなことが可能なのに流通していないのには理由がある。

 それは付加魔法の条件だ。

 付加魔法を使う条件。

 それは、その魔法の無詠唱発動が出来ている。

 もしくは、スキルの魔法武具職人のレベルが一定以上かつ、その魔法が使えること。

 レベルは、五級から順に、6、7、8、9、10必要だ。

 それまではこのスキルは名前だけの意味のないスキルだ。

 だから、魔法武具職人は数が少ないのだ。


 「それじゃあ、作っていくか」

 

 俺は、前と同じように、ハードミスリルを溶かす。

 形は、ニールに渡す物なので、竜にして見た。

 黒竜がどのような形かは大体わかる。

 俺はそれをイメージして、細かく再現することにした。


 






———————————————————————————








 「ケンくん遅いですね」


 「今日で5日目。後2日ですね」


 こう言ってるニールの内心は、


 もう少しリンフィア様と2人がよかったーっ!


 である。

 リンフィア好きも大概にしとけ。


 「むぅ」


 「どうされましたか?」


 「寂しいです」


 「——————」


 ニールはなんとも言えない表情になって固まった。

 リンフィアの口から寂しいと。


 この私が居ながらなんたる………ッッ!


 と、思っているニール。



 「あ、いや、ニールと一緒なのが心細いって言うわけじゃないんです。たまには歳の近い女の子同士こうやってゆっくりしたいと思ってます。小さい頃からずっと一緒にいてくれてましたから。ケンくんと2人の時もニールがいないので寂しいと感じてました」


 「り、リンフィア様!」


 ニールの表情は一気に晴れた。

 ド晴天だ。


 「だからやっぱり人が沢山いて、賑やかな方が私は好きです」


 リンフィアはかつての故郷を思い出していた。


 「これは、寂しいのとは関係ないかもしれませんが、なんだか落ち着かないんです。それは多分、私がまだ恩返しできてないからです」


 リンフィアの言う恩返しとは、命を救われたことに対する恩返しだけではない。

 この街に来るまでの色々なことに対する恩返しだ。


 「恩返しですか。なるほど………リンフィア様」


 「うん?」


 「焦らなくともいいのです。多分あの男は、そんな見返りを求めているわけではないと思います」


 「私もそう思います」


 「恩を返すのは大切なこと。だから、今すぐに出来なくとも、その恩をひっくり返せるくらいに大きなお返しをじっくり返していけばいいのです」


 「そっか………うん、ありがとうございます、ニール」


 リンフィアはすっきりした表情になった。


 「でも、今向こうで我々の装備を作ってるらしいですから、ちょっと急がないと山積みになってしまいますね」


 「あ、本当だ。頑張らなきゃですね」









———————————————————————————








 「うっし! 出来た」


 黒竜をモチーフにして作ったパームカフ。

 我ながらなかなかいいのが作れた。


 「おお、カッケーな。昔作ったアクセサリーよりずっと良い。流石魔法を使ってまで作っただけのことはある」


 さて、次は動作テストだ。


 「まずは右から、と言いたいところだが、全然ダメージを負ってないんだよな………久々に死にかけるか」


 俺は、ステータス上昇のために修行でわざと死にかけていた。

 最初の方は体力低下によるHP減少を利用できていたが、今はそうはいかない。

 今それをやるといくらたっても終わらない。

 だから、


 「スカイダイビングだ」


 俺は風二級魔法【トルネード】を使う。

 これはあらゆる物を上空へ吹き上げる魔法だ。

 範囲を狭めて調整すれば、


 「あー、マジで怖ェ………行くか」


 発動。


 物凄い風が俺をはるか上空押し上げた。

 魔力を注ぎ続けて、出来るだけ高くする。



 そして放り出される。


 「うおおおおおおおおおお!!!!」


 一応、頭は守って他は出来るだけ力を抜く。


 

 その日、大きなクレーターが森にできた。









 「あ、が………やっとここまでダメージを………」


 あれから後何回もやってさらに色々やってようやくここまできた。

 ちなみに、落下時に加速しないとダメだった。

 とは言え、やり過ぎると流石に死ぬので、そこは調整した。


 「………ッ」


 俺は、パームカフに魔力を注ぎ込む。

 パームカフが薄く光る。

 回復魔法が発動された。


 「痛ってェ………後何回か」


 もう何回か使ってようやく回復が終わった。


 「ふぅ、動作チェックは終了。うん、これでいいだろ。後は、ラビのダガーか。こっちはすぐ終わるな」


 ダガーに関しては、形が竜より単純なので、1時間ほどで終わった。


 逆に、溶かして固めるだけの作業でこれだけかかったのは、こっちもデザインを多少凝らせたからだ。

 悪い癖だ。


 さあ、後は付加だ。


 「こっちは、ちょっと面白いのを作れたな」


 ダガーの柄に付いているリング。

 ちょっとした仕掛け付きだ。


 俺はリングをはめて魔力を注ぐ。

 すると、ダガーが宙に浮かんだ。


 「よっ、と」


 ダガーを前に投げた。

 そして、指輪を嵌めた手を上に挙げる。

 次の瞬間、指輪に合わせてダガーが動いた。

 これは、以前も使った【マグネティクス】の効果だ。

 ダガーとリングの間に発生している磁力を利用して操作している。

 これだけではない。


 「フッ!」


 ダガーを木に突き刺し、魔力を操作すると、


 「おお!」

 

 指輪の磁力が全身を包み、ダガーへと引き寄せた。

 完成だ。


 


 「これで全部終わったー!」


 ついにこれで全て完成だ。

 


 

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