第64話
「お前もやっぱり近接戦闘というよりは魔法攻撃を覚えた方がいいかなー」
「そうなのか? うごきまわるのはすきだぞ」
ふむ、なるほど。
だったら、
「近接魔法攻撃型にしてみるか」
魔法を使うやつにも色々いる。
遠距離からの魔法を使うやつ、支援系の魔法で補助を行うやつ、魔法を戦闘の補助に使い、自身で戦うやつ。
他にも色々だ。
こいつにさせるのは、近距離で使える魔法を中心に使い、かつ自身も武器を持って戦う方式だ。
こいつはあくまでも司令塔。
基本戦う必要はない
しかし、能力向上は必要不可欠。
何より、敵の刃が自分の喉もとに届く時、そこで自衛出来る力は必要だ。
「ダガーがいい!」
「ふぅん? じゃあお前には、ダガーを使わせよう。小柄なのを生かしてちょこまか戦え。ここまで小さいやつもなかなか居ないだろうから貴重だぞ」
「ちっちゃくないもん!」
いや、どう考えてもちっちゃいだろ。
「とにかく、お前にはダガーを使ってもらう。それは後で用意するから………そうだな」
俺は近くの木の幹を抉った。
風魔法で細かく研いでいく。
「ほら、練習用だ。とりあえずはこれを持っとけ」
「きじゃん。きでてきをたおせるのか?」
「倒せるさ。見てろよ」
俺はアイテムボックスから木刀を取り出した。
こいつも結構長い付き合いだ。
この辺りの木でいいかな。
「………フッ」
周辺の木を5、6本切り落とした。
「ほらな」
「いやいや、いきなりそんなのできるわけないじゃん」
「いや、斬れるかどうかって話だろ。だったら斬れる。難しかったら魔力コーティングすればいいんだよ。それで長持ちする。それに刃の方はめちゃくちゃ鋭利になってるからいろんなもんが斬れるぞ」
「うーん」
信じてないらしい。
これだからお子様は。
木というものの便利さを理解してないようだ。
俺の木刀はめちゃくちゃ硬い木から作ったからあれとは別物だが、あれはあれでゴブリン程度なら余裕でぶっ刺さるくらいの代物だ。
魔力コーティングでもう少しいける。
「じゃあこれ切ってみろ」
俺は太めの枝を用意した。
「ふといな」
「叩き割るんじゃなくてちゃんと斬れよ」
ラビは半信半疑になりながらも、ダガーを枝に当て、スッと刃を入れた
「おぉ?!」
グッと押すとまるで包丁のように刃が通っていく。
「なかなか木も捨てたもんじゃ無いだろ?」
「うん! すごい!」
「でも、ただの木で作ってんだからあんま使いすぎんなよ。一応練習用なんだし」
その後、いろんなものを斬りまくって流石に痛んでいたから新しいのに変えた。
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「さて、まず何でもいいから来い」
「わかった!」
ラビはダガーを持って構えた。
「お?」
どういうわけか様になっている。
それなりに慣れている構えだ。
「いくぞ!」
ラビは飛び出してきた。
真っ直ぐ突っ込むのではなく。細かく横に回ったり跳ねたりしながら進んでくる。
隙を探っているのか?
「………よし、じゃあどんだけ動けるか試してやる」
俺はわざと隙を作って見た。
「!」
しかし、突っ込んでこない。
「へぇ、誘い込まれてんのがわかってんのか。お前ダガーの扱いとか戦い方とか習ってたのか?」
「ちちうえにおしえてもらってた」
「だろうな。ったく、先に言えよな。余計なこと悩まずに済んだんだっつーの」
だがこれで確定だ。
ダメだったら他のことをさせようと思っていたが、必要ないらしい。
「まあ良いや」
俺は全身隙だらけにしてみた。
「? ししょう、それはさすがにあぶないとおもうぞ」
「さて、どうだかな。良いから来いよ。これはあくまでもテストだぜ?」
「………わかった」
ラビの目つきが変わった。
これだ。
この集中力こそ、こいつの強みだ。
隙だらけにしたので、最短距離を真っ直ぐ攻めてきた。
「シッ!」
なかなか理にかなった動きだ。
こいつの親父さんも良い腕をしていたのだろう。
それに小さい身体をうまく使っている。
リーチが短いという短所を長所に変えているのだ。
「くっそ………!」
なかなか当たらずに悪態をつくラビ。
当たらないのはしょうがない。
こいつは技術はあってもまだステータスが追いついていないのだ。
「だいぶ測れたな」
頃合いだ。
俺はラビの手を掴んで、足を挟み、動きを止めた。
「うっ、動けない………」
「良い腕だラビ。だから勿体無い。それ程の技術と集中力があればすぐに強くなれる」
「………」
ラビは抵抗をやめた。
俺は手を離して、目線を合わせる。
「だから鍛えるぞ。その辺の冒険者なんぞごぼう抜きだ」
手をグーにしてラビに突き出した。
「なんだこれ?」
「お前も手ェ出すんだよ」
「こうか?」
ラビも手をグーにして突き出した。
拳と拳を合わせる。
蓮や琴葉とよくやった。
「おお、なんかいいな、これ」
「だろ? じゃあ、今日はこれでおしまいだ。明日でもう6日経つから、明日で出来るだけお前を成長させる。いいな?」
「うん! わかった!」
ラビは仮家に帰っていった。
さてと、こっちはこっちで頑張るとするか。