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第591話


 レイとルイは凄まじい速度で間合いを詰めて来た。



 (速い………!)



 防御魔法を張り、様子を見る。

 まずは小手調べだ。

 しかし、それは愚作だった。



 ファリスを中心に作られた二級の防御壁。

 それが、




 「———————————————」




 攻撃を同時に喰らい、一瞬で砕かれた。

 攻撃がそれ、軌道から外れた2人はすぐ様着地し、再び突っ込もうとする。



 (こいつら………)



 流石にまずいと判断したファリスは、地面を強く踏みつけ、【グランドライズ】で地面を隆起させる。



 「「!」」



 着地の瞬間を狙われた2人は、同時に体勢を崩す。

 そして、2人の死角から炎魔法を放った。



 当然のように2人は跳ね返したが、ファリスはその隙に距離を取った。



 「なるほど。多少無駄はあるが動きは冴えてるな。余程優秀なやつに教わったか」



 元のステータスが低いのと、オーラから見て強化魔法はデュオブースト程度なのが救いだ。

 だが、呪印の力も相まって、クインテットブーストと同等の強化を受けている。

 末恐ろしい子供だ。



 「………………」


 「………………」

 


 いつの間にかアルデミオが消え、兵士たちもファリスを狙い始めた。

 だが、今ならまだ姉妹と小隊で連携がこんがらがっている。

 勝つなら今しかない。




 「………………久々にこれで戦うな」




 ヴゥゥゥゥン………と、低く重い音を発しながら宝玉は薄らと光った。



 「さぁ………起動しろ(おきろ)!!」



 「「「!!」」」



 何か来る。

 そう判断した騎士達は、何かが起きる前に潰そうとファリスを狙った。

 呪印を解放し、一気に射出。

 轟音と共に地面を抉り、空を裂き、木々をなぎ倒していった。



 「………」



 そして、放たれたその瞬間、




 「捉えた」




 それぞれと属性相性のいい魔法が、ファリスから敵に向かって放たれた。



 「「「!!」」」



 衝突。

 耳を突き刺すような鋭い音や、頭に響くような低く大きな爆音が混ざり合い、騎士たちも顔をしかめる。

 そして目にした。

 自分のはなった攻撃が確実に弱まったことを、



 「くッ………………これでは」



 それは一気に魔力障壁と衝突し、爆音を発しながら巨大な土埃を立てた。





 特別魔法具。

 これは後に学院でそう呼ばれる魔法具だ。

 あまりに戦闘向きな為、普段は使わないように使用を制限する魔法具の事だ。

 ミレアたち生徒会は基本所持している。



 この魔法具の能力は解析と出力。

 MPを半分近く持っていく代わりに周囲の攻撃を解析し、逆属性の威力、または速度の値が高めの攻撃魔法を射出する。

 これにより、敵の魔法的な能力を計算できる。

 だが、今回は計算はできない。

 しかし、代わりに敵の属性と能力の強さを一瞬で把握した。



 そう、誰が強い、弱いということがわかったファリスは、



 「火属性」


 「!!」


 「まず、お前な?」



 弱い敵から順に潰し始めるのだった。











———————————————————————————












 「勝率は4割といったところか………」



 中から戦況を分析して、ギルファルドはそういった。

 しかし、勝った後も重要だ。

 その後に逃げ切らなければ、自分も仲間も子供達も死ぬ。



 「ぅあ………」


 「!!」



 籠から声がする。

 どうやらラクレーが目を覚ましたようだ。



 「ラク———————————————!!」




 ただし、叩き起こされる形で、だ。


 籠から吹き飛ばされたラクレーを、ギルファルドがなんとかキャッチする。



 「ケホッ………かッ………ぁ………」


 「ラクレー、無事か…………っ!?」



 意識はあるが、かなり朦朧としている。

 声は届いていないだろう。

 だが、大きな怪我ない。

 とりあえずは無事だ。

 しかし、



 「ッ………なんだこれは」



 キャッチしたラクレーの首元には、小さな手形が付いていた。



 「まさか………………」



 ぞろぞろと出てくる子供たち。

 当然、ただならない様子だ。

 意味のない言葉を口から垂れ流しながら、ヨタヨタよ覚束ないようすで歩いている。

 これは一体………



 『解。暴走期ニ入ッタ』


 「ルアナ!!」



 ルアナは、片腕が完全にひしゃげて、足にも大きなダメージを負っていた。

 籠の中でやられたのだろう。



 「暴走期とはなんなのだ!?」


 『………過去、実験ニ於イテ、実験体ハ廃棄サレル事ハナカッタ。シカシ、アル日突然、一定ノパターンデ暴走スル個体ガ現レタノダト言ウ。ソノ個体ハ、僅カ3歳で、Aランク冒険者を殺セルホドノ力ヲ持ッテイタラシイ』


 「!!」



 だから国王は、今まで実験体1人残らず殺していたのだ。

 それが成長して、自分の脅威となる事を恐れて。



 『タッタ今分カッタ。国王ハ暴走期ガイツナノカ把握シテイル。ソシテ今ハオマエ達ガココニイル事モ………王ハ万一ノ脱走ヲ阻止スル為、予定ヲ早メテ兵ヲ送ッタノダ。………………ッ、マズイ。子供達ガ………………!!』



 話を聞いている間に、子供達は外に放たれた。

 外には敵ばかり。

 しかも人数は子供達より多い。

 まずいどころの話ではない。



 『頼。ギルファルド…………子供達ヲ止メテクレ。暴走期ハ1時間デ収マル。デモ、死ネバ元ニ戻ラナイ!! 頼ム………ドウカ………』



 その姿は、まるで母親だった。

 機械仕掛けの声から感じたのは、確かに子供たちを心配する“感情”だったのだ。


 ならば、応えねばなるまい。

 

 

 「ああ………なんとかしよう」


 

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