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第590話


 「やはり………待ち伏せはされていたか」



 出入口は三つあり、内側から外が覗けるようになっている。

 外を覗くと、案の定敵が待ち伏せしていた。

 その中には、当然強敵もいた。



 「あれは………アルデミオ・カサックか?」



 当時も情報の面では相当強かったギルファルドは、彼の名を知っていた。



 「アルデミオ?」


 「かの有名な四死王・鬣の称号を持つ将だ。マズイな………多数対小数では優秀な将が最も厄介だというのに………」


 「だが、逆にいえばそいつさえ潰せば楽になるって事だな」

 

 「馬鹿を言うんじゃない。元々手練が大人数いるんだ。“死ぬ程きつい”が“死にそうな程きつい”に変わる程度だぞ」


 「わかってる」



 ファリスはアイテムボックスから装備品を取り出した。

 現存する中でも最高級の魔法鉱石。

 アダマンタイトで作られたオーブ。

 オーブは吸い付くようにファリスの手に収まった。



 「私はこんなところで命を投げ出す気は無いが、どの道このままだと八方塞がりだ。ある程度数を蹴散らした瞬間、他の勢力が駆けつける前に森に身を隠すぞ」


 「そこからどうする?」


 「身を隠すと言っても逃げ回るつもりだ。奴らの乗ってる馬。あれを頂こう。私がいれば迎撃は簡単だ」


 「………では、任せる」


 「おう」



 ファリスはそう言って、出入口から飛び出した。





——————





 「!!」


 するとすぐに、敵が武器を持って迫っていた。

 敵は密集している。

 おそらく攻撃に威力はそこまでないし、魔法も使ってこないだろう。


 まずは防御魔法をしてすぐに………………

 


 「ちょい待ち、一旦距離をとれ」


 「?」



 アルデミオの指示に従って周囲の兵が間合いから外れない程度に距離を取った。




 「女か………」


 「まぁな。だが、あまり舐めてると痛い目に合うぞ」


 「だろうね。今攻撃していたらなんらかの方法で防ぎつつ、どでかい一撃を放たれてたみたいだからな」


 「!?」



 気づかれている。

 それにこの位置、魔法使いには微妙に戦いづらい位置だ。

 あまり大きな魔法を放ってしまうと自爆になるし、抑えすぎると通じない可能性がある。



 「おーい、伝令」



 アルデミオは奥にいた伝令役の男を手招きした。

 すると早速、アルデミオはその本領を発揮した。



 「はい」


 「このねーちゃん、多分主戦力だ。多分残りはまともに戦えないだろうから、数人残してここに呼んできて」


 「なっ………………」



 なんという事だろうか。

 いきなり全て読まれていた。



 「後がないのが見え見えだ。考えた末の苦肉の策感がすごいのよ………で、どうすんのねーちゃん。俺ら計100人近くなるけど、勝てるかい?」


 「100人………!!」



 

 正直言ってかなりマズイ。

 特に呪印使いというところが面倒だ。

 決まった属性を使うというデメリットはあるが、魔法より圧倒的な燃費の良さと自由さが厄介どころの話じゃない。

 20人30人程度なら、まだ属性を把握しておしきれそうなのだが、流石に100は捌き切れないのだ。

 50が限界といったところだろう。



 一旦中に逃げるか?

 ………いや、ダメだ。

 この人数の時にどうにか潰すしかない。



 宝玉の魔力を高めていく。

 短期決戦。

 そうする他ない。



 「短期決戦しかない」


 「………」



 読まれているのはわかっている。

 いや、それ以外ないのは最早自明の理だ。

 わかっていて戦う。

 それ以外道はない。




 「と、思ってるねーちゃんに朗報だ」


 「…………!」



 アルデミオの後ろから、子供が二人出てきた。

 5歳くらいだろう。

 目隠しをしていて顔は見えないが、恐らくは双子だろう。

 一体なんのつもりなのだろうか。


 すると、アルデミオはポンと子供の背中を叩いてこう言った。

 


 「俺は消えるので、ここにいる二人に相手をしてもらおうと思う」


 「は………………………」


 「アルデミオ殿!? 何を仰るかッ!!」



 どうやら向こうの兵士も聞かされていないようで、声を荒げながらそう言った。

 見た目通り、生真面目そうなベテラン騎士だ。



 「隊長さん、言ったろ? 俺ァ今から別任務なんで途中で抜けるって」


 「せめて目の前の敵を倒していくくらいの義も護れぬというのかッ!!」

 

 「人殺しに義もクソもないでしょ」


 「屁理屈を吐かすなァッッ!!」



 それを聞いた瞬間、アルデミオは相当大きなため息を吐き、文句を言っていた騎士をひと睨みした。



 「じゃあ、アンタらから先に死ぬか?」



 「「「ッッ………………………!!」」」



 そして、おおっぴろに放たれたアルデミオの殺気を受け、ついに黙りこくった。

 これは相当困った事だろう。

 だが、これはファリスにとっては願ってもないチャンスだった。



 「あ、ねーちゃん一つ言っとくわ」



 アルデミオは子供とファリスの両方に目配せをした。

 どうやら、その子供について忠告しようとしているようだが、子供はすでに、目隠しを外して武器を構えていた。



 「!!」



 手の甲に黄金の光を纏いながら。



 「レイ・ウェルザード。ルイ・ウェルザード。こいつら両方、国王から無理矢理解放された天人だ」



 その忠告を言い切る前に、理性を失った2匹の獣はファリスに襲いかかっていた。


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