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第584話


 「………疲れた」



 気を失ったファルグを、ローブの男が持っていた魔力を封じる特殊な拘束具で縛り終えたラクレー。

 満身創痍………と言いたいところだが、自然治癒でそこそこ回復したお陰でだいぶ元気になっていた。



 「始末しておかなくていいのか?」



 ファリスはラクレーにそう尋ねる。

 だが、ラクレーはブンブンと頭を横に振った。



 「裏切られても、ファルグは大事な友達。今まで過ごした時間は、嘘じゃないから」


 「………そうか」



 ギルファルドもファリスも、特に殺そうとは思っていなかった。

 万が一起きてもどうにかなるだろう。

 ラクレーもいるし、ファルグが持っていた鍵で枷を外したファリス達なら、今度は一瞬で魔法をつかえる。


 特に心配はなかった。




 「それで、晴れて中を探索できる様になったけど、どうする?」


 「当然探る。だが、とりあえずは狙いを絞る。な?」



 視線を向けられたギルファルドはコクリと頷いた。



 「何か、探したいものがある?」


 「そうか、ラクレーにはまだ話していなかったな」



 今更な感じもするが、調べに来たという事以外はなにも知らなかった。

 2人は、一体なんのためにここに来たのだろうか。



 「私達の目的は、この施設の子供の保護………または処分だ」


 「!!」


 「万が一、危険な思想を持っているのなら、処分せざるを得ない。見ただろ、その男を。放置すれば、とてつもない化け物がのさばることになる。だが、子供なら多分どうにかなるだろう」



 ファリスはそういうが、ラクレー自身あまり殺したくはないと思っている。

 全部失ったラクレーからすれば、偶然にも見つけた同族なのだから。

 だが、



 「………うん。仕方ない」



 同時に、ファルグのような驚異的な力を持った者が放たれることの恐ろしさも実感していた。

 


 「やるなら早くやろう。お父様が………いや、国王がここに来る前に」


 「………ああ」




 この時、3人はまだ知らなかった。

 ミラトニアの三帝となるきっかけが、今探そうとしている実験体と大きく関わるという事を。










———————————————————————————










 後日。



 「……………何? ファルグから連絡がない?」



 伝令からの連絡により、国王は、ファルグとの連絡が断絶した事を知った。

 ファルグとの決め事で、1日でも連絡が無ければやられたと考えることにしておいたのだ。



 「という事は………ベラクレールが倒したのか!? へぇ、我が娘ながらそこまでの力を………というか、もう国内最強なんじゃないか?」



 ルーテンブルク王は楽しそうにそう言っていた。

 すると、



 「悠長ですわね、ルーテンブルク王。やはり頭がないのでは?」



 正面に座っている女がそう言った。

 ()()()()桃色の髪をした、目つきの鋭い女だ。

 衣服や国王に対する言葉遣いから、身分の高さが窺える。

 そう、何を隠そう彼女は、




 「そう言ってくれるな。焦る必要のない事はそちらがよくわかってるだろう………なぁルナラージャ王妃」




 ルナラージャ王妃。

 ウルクの母である。



 「王妃殿のところにいる転移者………10数名は冒険者で言えばSSランク………いや、ともすればSSSランク相当の化け物もいるんだろ?」


 「その上も、ですわ」



 ルーテンブルク王はゴクリと唾を飲んだ。



 「やった甲斐があったよ。やはりあの文献は役立ったとつくづく思う」


 「そもそも、異世界人………正確には、特異点が死ねばその国から加護が失われ、神から“廃国”と認定される事自体知らなかった。運の良いことです。ふふっ………それに」



 ルナラージャ王妃はまるでおかしなものを見るかの様にルーテンブルク王を見た。



 「まさか、それを避けるためとは言え、結果として()()()()()()()()()()()()選択を王たる主が取るとは………ミコトに全ての転移者を喰わせるといった時は正気を疑う………いえ、ハッキリ言って正気ではないですわね」



 ミコト。

 そう、天崎 命だ。

 これは現在より13年前の話。

 命達が召喚されたのは、これより以前のことだった。



        ———


 喰らう、というのは、先代の命の神も言っていたが、一体なんなのだろうか。

 それは、後に知る事となる。

 

        ———

 



 ルーテンブルク国王は正気でないとハッキリ言われると、愉快そうに笑った。



 「わははははは!! 全くハッキリものをいうな。まぁ、国にこれといって愛着はないしな! 政治というのはどうも疲れる。ならばいっそ、より確実な方法で別のものになれる道を作ろうと思うのだ」


 「全く酔狂な王ですこと………………して、そこな子供は? 侍女というには、戦い慣れた雰囲気を持っているようですが?」


 「おお、これか。これが例の天人だよ」

 


 ルーテンブルク国王は鎖で繋いだレイとルイを前に差し出した。

 虚な目だ。

 どうも様子がおかしい。

 何かされたのだろう。

 そう思った王妃がそれについて尋ねると、答えは簡単にわかった。



 「普通ではないようですけれど?」


 「暴れると思って、少し意識をぼかしている。会話は聞かれているだろうが、後で調教すれば問題ないだろう。それで、何か感想があるか?」


 「あるわけないでしょう。研究を終えた今、旧世代の天人に興味はありませんわ。作れるとわかった今、必要なのは大量の天人を生産すること。そのための薬ですわ」



 王妃は赤い丸薬を取り出した。

 どこかで見た様な薬だ。



 「ほう………研究最終段階の始めか」


 「そういうことですわ。ですので………」



 王妃は邪悪な笑みを浮かべた。

 


 「あの研究所、流出する前に廃棄なさってください」




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