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第58話


 「ししょう! くんれんってなにするんだ?」


 「お前の場合はまず戦闘方法を決めねーとな。訓練はその後だ」


 リンフィアは思いっきり魔道士タイプだったので、魔法中心に覚えさせた。

 しかし、ラビには特殊な能力がある。

 生物迷宮特有の能力だ。

 これを生かした戦い方をしたい。


 「ラビ、モンスターを出してみろ」


 「モンスターか? わかった!」


 ラビはむむむ、と唸りながら拳を握りこんで力んだ。

 モンスター召喚。

 それが生物迷宮特有の能力だ。

 この世界で召喚というのは、基本的に一つのことを指す。

 それが勇者召喚だ。

 しかし、生物迷宮については知られていないため、モンスター召喚の存在は世間に認知されていない。


 「スライムっ!」


 掛け声と同時に魔法陣が浮かび上がる。

 召喚魔法陣。

 俺が始めて王城に来た時、ほんの短い間だがこれが見えた。


 「おお、お出ましか」


 魔法陣に雷が走る。

 バチバチっと音を立てながら影が現れる。

 影はやがてくっきりと形を表していき、それは姿を現した。




 「キュピーッ!」




 「だしたぞ、ししょう」


 「へぇ、やるじゃねーか」


 「へへん、もっとほめろ! うははははは!」


 こいつは褒めたら調子に乗るタイプか。


 「おいでー、すらざえもん」


 「すらざえもん!?」


 漢字表記でスラ左衛門

 すごい名前だった。

 愛のある名前………なのだろうか?

 

 「もっと出せるか?」


 「サーペントなら出せるぞ?」


 「ならって、一種類につき1匹が限度なのか」


 「うん。それにだせるこたいもきまってるぞ。スライムならすらざえもんがでてくるし、サーペントならへびえもんがでてくる」


 なんなんだそのネーミングは。


 「まあいいや。そういやお前戦闘経験あるのか?」


 「ない」


 だろうと思ったけども。

 ダンジョンマスター直々に戦うことなんか滅多に無いのだろう。

 それ以前にあのダンジョンには人が来ていなかったんだし。


 「じゃあなんか武器が使えたり出来るか?」


 「むり」


 「そうかー。んー、どうすっかなぁ………」


 仕方ないので一から教えることしよう。

 まだ共闘は無理そうなので、戦闘はモンスター主体でこいつにはサポートをさせるようにするか。


 「なにがいいとおもうか? すらざえもん」


 「後方からの支援がいいと思いまする」







 「………………ん?」


 今の………え?


 「どうした、ししょう?」


 「こいつ喋れんの?」


 「はい、会話できまするよ」


 スライムは口を聞いた。


 「キュピーとか言ってたのに?」


 「あれはノリでございまする」


 「スキル?………スライムのか?」


 「私が人語を話せるのはラビ様のスキルのおかげでございまする」


 あった。

 確かにある。

 【意思疎通】というスキルだ。

 テイムした動物やモンスターとの会話が可能になるというものである。

 

 「毎日毎日ラビ様が私に話しかけてくださったおかげで、配下のモンスターが皆喋れる様になったのです」


 「マジかお前」


 「ははうえがおぼえとったほうがべんりだっていってたから、うまれたひからずーっと、はなしかけつづけてたんだ」


 これも生物迷宮ならではのものだろう。

 生物迷宮は出産ではなく召喚で子孫を残す。

 その為、生まれて来たときは既にある程度の知識は備わっている。

 精神面はまだ子供だが、一応大人並みの知識はある。

 ちなみに出産の場合は普通に人間の血を引いた子供が生まれてくる。

 特殊な召喚を長期にかけて行い、だんだんと力を与えて、呼ぶのが生物迷宮の子孫の残し方だ。

 召喚で枯渇した力は数ヶ月で元に戻る。

 ラビの母は丁度力がなくなっている時期に攻略されたため、生きながらえることができたのだ。


 「それにしても、意思疎通ができるのか。それはいいな。ラビ、サーペントも呼んでくれ」


 「わかった」

 


 ラビはサーペントを召喚する。


 「へびえもん。おいでー」


 ヘビ右衛門と呼ばれたサーペントはラビのそばに寄って来た。


 「シャーッ! ラビ様。いかがなされましたか?」


 「さあ? ししょうにきいてくれ」


 「よう、ヘビ公」


 「なんだ、貴様?」


 結構偉そうなヘビだ。

 ラビ以外ではこうなるのか。


 「一応こいつの師匠だ」


 「師匠? シャッシャッ! 貴様のような人間風情が我が主たるラビ様の師匠とは………………あ」


 なんだ? あ、まさか前にぶっ倒された記憶でも残ってんのか?


 その予想はどうやら正解だったらしい。


 「ら、ラビ様ッ! こやつはあああああ!」


 パニックになっている。

 まあぶった斬られた相手を良くは思わないだろう。


 「落ち着けよ。あん時は悪かったって」


 「はん! 謝って当然だこの外道が! いきなり斬りかかるなんぞクソヤローのする事だ! わかったらとっとと消えてなくなれこの金ピカやろ………」


 少しカチンと来た。


 「テメェあんま調子乗ってっと皮剥いで財布にして刻んで刺身にするぞコラ」


 「ヒィィィィ!!!」


 ヘビはものすごい速さでラビの後ろに隠れる。


 「ダメだぞーししょう。へびえもんはびびりなんだから」


 「見りゃわかる」


 「それでししょうはこいつらをよんでなにがしたかったんだ?」


 おっと、本題から逸れていた。

 そろそろ話さねば。


 「お前には戦闘経験がない。だから暫くは近接戦闘を俺と学びながら、支援魔法を中心に覚えていかせる。だから今日からお前の攻撃の要にはこの2匹を使わせる」


 「おお」


 「お前はこの2匹に後方から指示を出しつつサポートをする役。いわば司令塔だ」


 「しれいとう! かっこいい!」


 食いついた。

 一応こういうのを言っておかないとつまらないとごねられそうなので言っておいて正解だった。


 「がんばるぞ、ふたりとも」


 「はい、了解したでございまする」


 「シャー、ラビ様の命なら」


 戦闘形態は決まった。

 いよいよ訓練だ。

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