第56話
「よし、始めるか」
俺は作業にあたる際にハードミスリル以外の鉱石を用意した。
それがこれ、鉄鉱石。
しかし、侮るなかれ。
ハードミスリルと混ぜる事でハードミスリルほどでは無いが、魔法耐性が高いものができる。。
しかも、特殊な結合により耐久力も鉄より数段上だ。
これで量産が可能。
予備パーツや、強めの魔法用の銃弾などが精製が出来る。
「まずは製鉄からだな」
俺は炎二級魔法【ソルブレイズ】を使った。
この魔法の恐ろしいのはその温度だ。
範囲は小さい上、スピードは遅い。
しかし、触れた瞬間半径1メートル程の物なら8000度の炎で焼き尽せる。
だが、今回は固定させて炎が広がらないようにした。
現在温度は約1000度。
「ほいっと」
鉄を投げて溶かす。
落ちないように魔法は調節している。
万が一の時のために重力魔法付きだ。
「よーし、いくぞ」
一気に温度を上げる。
どんどん上昇、やがて鉄が蒸発する。
しかし、重力魔法で固定してあるため、バラバラにはならない。
「分離させて………」
次にターゲットを鉄だけに絞って重力魔法をかける。
鑑定を使いながら、時間をかけて分けた。
「いいぞ、温度を下げて………」
温度を下げていくと、徐々に元に戻っていく。
今この中では鉄以外に何も無い。
そこに分けたハードミスリルを投下した。
ハードミスリルの融点は1500度。
俺はハードミスリルを溶かしていく。
そこに鉄を混ぜて、合金を作っていく。
ここでも鑑定を使い、名称が変わるまで調節する。
「できた!」
数時間かけて作り出した特殊合金。
アイアンミスリルと言うらしい。
「よし、こっからだ」
材料はできた。
ようやく作業に入れる。
「これでしばらくリフィも敵無しだ」
作りたかった武器。
それは、銃だ。
この世界には銃が存在しない。
飛び道具なら魔法があるし、強化した弓矢は、銃の性能を超えている。
だが、あくまでそれは普通の銃。
今から俺が作るのは、魔法によって強化された銃だ。
形としては拳銃を2丁作りたい。
左右あった方がカッコいい。
と言うのは冗談で、2種類の攻撃を使い分けさせる予定だ。
まずは物理攻撃。
あらゆる付加魔法をつけてとんでもないのをつくりたい。
だが、物理攻撃の場合、硬い敵には効かないかもしれない。
あくまでも、撃ち出すのは銃弾だ。
硬さには限度がある。
なのでもう1種類は魔法射出だ。
銃ではなく、使い捨ての弾に魔法を付加して無詠唱で打てるようにする。
「作るなら自動式が良いな。リボルバーよりは使いこなせそうだし」
どう言うのが良いのか。
まだ細かい設計も決まってない。
今思いついてるのは、拳銃は2丁でデュアル。
それとオートマチックで攻撃は物理と魔法。
「魔法で射出するタイプにしたいから従来の拳銃じゃあダメなんだよな。しばらく考えてみるか」
辺りをうろうろして考えることにした。
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「ズズッ」
俺はラーメンを立ち食いしながら森を散歩した。
特に何も無い。
が、こう言う静かな感じの場所もたまには良い。
「そういや銃以外も考えねーとな」
ニールの分とラビの分も作らなければいけない。
ラビはまた今度だとして、ニールの方はどうしようか。
「防具か。でもあいつの装備って結構スゲェ装備なんだよな。黒竜ヴァルヴィディア。伝説の古竜。多分あいつあの竜の血筋なんだろうな」
以前、覚醒半魔化した時に黒い肌になった記憶がある。
あれはヴァルヴィディア系列の龍人の肌だ。
通常時は人の面が、覚醒時に竜の面が表に出る。
「古竜か。俺も一度会ってみてーな」
ドラゴンは男の夢だ。
死ぬまでに一度は背中に乗りたい。
せっかくの異世界だし。
「うーん、近接戦闘型か。竜の腕力が生かせるような………あ、そうだ………別に防具って限定されたわけじゃ無いか………」
良い感じのが思いついた。
「さて後はリフィだが………まあ粗方設計は頭ン中で出来てきた」
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一方、宿ではとある事件が起きていた。
「ニール、ご飯できましたよー!」
「ご飯?………なっ………!」
ニールは急に屋上から降りてきた。
そして、ブワッと冷や汗を掻く。
「り、リンフィア様。お料理を為されたのですか?」
「? どうしたんですか?」
「い、いえ! なんでもないです!」
事件、それは料理だ。
リンフィアが料理を作ってしまった。
これは知っている人はわかる。
大事件だ。
ケンも一度被害にあっている。
「えと………一体何をお作りになられたのですか?」
「えへへ、今回はうまくいきました」
リンフィアは自信満々に皿を持ってくる。
そう、これは数年前。
「ニール! ご飯作りましたー!」
まだ今より幼い頃。
リンフィアは気まぐれで料理を作ってきた。
リンフィア命のニールはもう泣いて喜ばんばかりに感激した。
よもやそれが人生最後の日となるとは知らずに………
と言う冗談はさて置いて、それほどの代物だった。
「リンフィア様! 私にお料理を下さるのですか!」
「はい! たくさん食べてください!」
リンフィアに近づくニール。
そして気づいてしまった。
皿から放たれる異臭に。
「はー………い?」
思わず足が止まった。
張り付いたように足が一歩も動かない。
「うん? どうしたんですか?」
脊髄レベルで拒否反応が起きている。
気を抜けば一瞬で逃げるレベル。
しかし、リンフィアへの忠義がそれを許さなかった。
ついに皿は目の前までやってくる。
「はい、召し上が——————」
そこから先は覚えていなかった。
「はい、これです!」
ドンっと皿は置かれた。
しかし、以前のような異臭は感じない。
「? はっ………もしや………」
ニールは皿を開けたが、そこには普通の料理が置いてあった。
「食べてください!」
「こ、これなら………!」
ニールはバクっと口にくわえた。
そこからの記憶は無くなっていた。