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第542話



 リンフィアサイドにて。




 「予定時刻まで残り2時間。準備は出来た?」

 


 流の問いに対して、頷くリンフィアとラビ。

 装備の準備も心構えもしっかり出来ていた。



 「もちろんだ! ナガレにいこそできてるのか? しっぱいしちゃだめなんだぞ」


 「俺は大丈夫だよ。ここは出来て当たり前くらいの気概でいかないとね」


 「この後が大変ですもんね。この前の話通りなら」



 ゴクリと息を飲む。

 しかし、しっかりと浮き足立たずにいられている実感はあった。



 「それじゃあ、後で」


 「うん!」


 「はい!」



 3人はそのまま各地の持ち場に散った。










———————————————————————————











 リンフィアの持ち場。

 南区の裏路地。

 そこにある廃墟から見える位置にやってくる敵を見張っていた。



 「………」



 住民はほとんど出払っている。

 先にやってきて、寝込んでしまっている住民は全てこちらに移動させた。


 リンフィアは壁に背を向け、隙間から外を覗いていた。


 後1分。 

 大体そのくらいで、敵が所定の位置にやってくる。


 リンフィアは、腰にいつもの銃を引っ提げ、小型の()を持って魔力を練り始めた。

 


 待つ。

 ただひたすらに。


 集中力を高めろ。

 手は抜くな。

 ここから少しでも遅れば死ぬと思え。



 ついに、敵の影をとらえた。

 段々と近づいてくる。

 ゆっくり、ゆっくり。

 そして、所定の位置に、足を………踏み入れた。



 「………………!!」



 杖を向け、魔力を流す。

 地面に仕掛けられた罠は、足元から警備兵に襲い掛かった。




 「な、に………!?」



 この五日間で仕掛けた魔法トラップ。

 簡易的ながら、だがその簡易さゆえに見つかりにくいものだ。



 「はッ、そんな子供騙しが………通じるかよォオッ!!」


 

 しかし、流石はAランク冒険者級の警備兵。

 前方からの魔力にいち早く反応し、地面から飛び出した罠を冷静に避け、飛び上がりながらそれを破壊した。



 「………よし」



 そう、予定通りの動きだ。

 先手を打ち、未知の武器を持った同じくAランク級で現役のリンフィア相手に、楽をしていた警備兵をたった1人が敵うわけが無かった。



 「悪く思わないでください」


 「!? どこから出、デェッッ………………ッ!!」



 放たれた弾丸は、警備兵の横っ腹に撃ち込まれた。

 【スタンガン】が込められた魔法弾。

 Aランクといえど、少しの間動けなくなる。



 「ガ………き、さ………」


 「お借りしますね」



 リンフィアは腕輪を警備兵から取り外す。

 黄金の腕輪には、微かに神威が纏っていたが、やはりリンフィアにはわからなかった。



 「よし………!」



 ここからが本番だ

 リンフィアは片方の銃を自分に向けて放った。

 【クインテッドブースト】の魔法弾である。

 全身を真っ白いオーラが包み、リンフィアの身体能力を上昇させた。




 「魔法弾による強化魔法は持続時間が短い………急がないと!」



 リンフィアはそのまま警備兵を放って走って行った。





——————





 【スタンガン】の効果で麻痺状態になっている警備兵は、走り去るリンフィアを睨みつけていた。



 なんだ今の女は!? 侵入者か!?これは………【スタンガン】か! チッ………マズイ………解かなければ………いや、そんなことよりこれは本当にマズイ………!!



 その瞬間、警備兵から信じられない量の冷や汗が流れ出た。

 焦りと恐怖から、魔法解除が思うようにいかない。

 すると、息を荒げ、目をかっ開きながら、ブツブツと呟いた。



 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………………!!」



 一度だけ目にしたそれを、警備兵は鮮明に覚えていた。

 あまりに凶悪で残忍な、理性のない獣。

 血肉を追い求める化物のようなその容貌と、恐るに足るだけの桁違いな力と魔力。

 来る。

 来てしまう。

 腕輪のない今、理性のない獣を縛る首輪は消えたも同然だった。

 

 そして、その獣はついに、警備兵の自我を喰らった。





 「!? ア………が………ッッ、マっ、て、iiiiiiiiiし、きgaaaaaaaaaaaaa、ぁ、ああああ………ッ、途切れ………たす………ヶ、ttttttt」



 

 伸ばした手が変形し、青く醜い何かの腕に変わる。

 頭が爆ぜ、新たに生えたものは別の頭ではなく、黒くてドロドロとした輪っかだった。




 「………………ぃ、ギギギギギギ」





——————





 「ッッ………これは………予想以上の化け物が生まれたみたいだね………」



 リンフィアは更に走る速度を早めた。

 神威はわからないが、魔力ははっきりと感じ取れる。

 そして確信した。

 間違いなく、あと2秒ほどたった後に、追いつかれる。

 しかし、ここはもう目の前。

 渡すか?

 否。

 このままバタバタ渡してしまえば、失敗するかもしれない。

 なら、せめて戦いつつ。タイミングを測って渡すしかない。



 「………!?」



 息を呑み、銃を構える。

 ふと、ここで気がついた。

 三方向から何かが向かってくる事に。

 2つはおそらくラビと化け物、それと流と化け物だ。

 では、もう一つは—————————




 「間に合ったァアアアラァアアアアアアアアッッッッッッ!!」




 グォオオオッッッ! と、旋風が巻き起こる。



 目の前に現れたケンは、直後に追いついた化け物を蹴り飛ばし、もう一方の化け物に直接ぶつけたのだった。



 「うーし、予定時間ぴったりだぜ」



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