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第54話


 「ここが最奥か」


 石壁の部屋。

 途中に自然の岩場があって、そこにお目当ての鉱石があった。


 「おお、結構多いな」


 資源量に関しては全体的な伸びが、関わっている。

 しかし、初期値に関しては個体差があり、こいつは中でも良い個体なのだろう。


 「いっかいとられたら、もとにもどるまでじかんがかかるから、たくさんはとれないぞ」


 「おう、大丈夫だ。それじゃあ」


 俺は腕の大きさほどのハードミスリルを取った。

 

 「これがハードミスリルか。綺麗な鉱石だな。うん、このサイズなら作れそうだ」


 俺はアイテムボックスにハードミスリルをしまった。


 「少し見て回ってもいいか?」


 「あー、ダメだぞししょう。おとめのひみつをのぞくのは」


 うるせぇ、マセガキが。


 俺は構わずに辺りを観察した。

 見た限りずっと岩しかない。

 本来ここにお宝やら何やらがあるはずなのだが、まだコイツはそこまで育ってないらしい。


 俺はさらに奥まで進むと、何やら台座が置かれてあった。

 

 「あれは………」


 「あれが“こうりゃくいん”だ。これだけはぜっっったい、さわっちゃダメだぞ。ししょう」


 凄い物質だ。

 原動力は魔力、いや、こいつの命そのものか。

 消費しているのではなく連動している。

 これがダンジョンの核。

 それも変化するダンジョンの核だ。

 構造が複雑すぎて俺には作れそうもない。


 「スッゲェ………これが生物迷宮の核」


 「あれにはワタシのちからのすべてがつまってるんだ。あれをなくしちゃうと、のこりカスしかつかえなくなる。ははうえがそんなかんじだ」


 去り際にダンジョンの壁に入って行ったのは恐らく生物迷宮としての力の残滓だ。


 「ははうえはな、すごいダンジョンだったんだ。でも、くろいおとこにこうりゃくされて、ちからをうしなった。ワタシはいつか、そのおとこがこうりゃくできないくらいのダンジョンになって、ははうえのしかえしをするんだ!」


 母の弔い合戦か。

 死んでないけど。

 でも、悔しかっただろう。

 こいつは母親に心底憧れている。

 そんな母が敗れて悔しかったに違いない。


 「そうか。なら、安心しろ。お前は俺が立派なダンジョンに育ててやる。そんな奴一捻りだ」


 「うん! ワタシ頑張るぞ! ししょう」


 幼いながらに強い意志を感じた。

 これならきっとついて来られる。

 






———————————————————————————







 「よし、帰ろう。とりあえず帰ったらハードミスリルを武器に加工する」


 「おお! 楽しみですね」


 「言っとくが、私は使わないからな。前にも言ったが、武器はこれで十分だ」


 やはりそう言うと思っていた。

 なので、


 「お前は武器じゃない。別のモンを作るつもりだ」


 「まぁ、それなら………」


 「なーなー、ワタシは?」


 ラビが俺の足を引っ張ってせがんでくる。


 「お前は戦い方が確立したらだ。あ、こいつ仲間に入れるから仲良くしてやってくれ」


 「よろしくな!」


 「よろしくお願いします。ラビちゃん」


 リンフィアは受け入れると思っていた。

 問題はこいつだ。

 子供は嫌いだ、とか言いそう。


 「よろしく!」


 「ああ、よろしく」


 「!?」


 あまりに予想外の反応だったため、リンフィアに尋ねた。


 「おい、こいつ子供平気なのか?」


 一応小声で。


 「はい、ニールは子供や動物には優しいんです。イヴィリアにいた時は、城下町の子供たちとよく遊んでましたよ」


 「マジでかっ!」


 なんか意外だ。

 失せろ! 子供はうるさいから嫌いだ!

 とか言うのかと思っていた。


 「なーなー、あおがみのおねーちゃん」


 こいつ、今でこそ師匠って呼んでるが、最初俺にはおまえって言ってなかったか?


 「うん? どうした?」




 「そっちのまっしろなおねーちゃんとおねーちゃん、どっちがししょうのかのじょなんだ?」





 一瞬の静寂。

 まるで時間が止まったようだった。


 「ら、ラビちゃん」


 リンフィアは頬を赤く染めている。

 この手の話は苦手なようだ。

 それよりニールだ。

 俺の彼女なんて言われた日にはとんでもない目に遭うぞ。(俺が)


 「………」


 おや?


 「なななななっ………………!」


 この反応は、


 「なっ………何と破廉恥な! い、いいかラビ。わ、私は決してこんなドブネズミの彼女なんぞではないぞ!」


 「はぁ!? 言うに事欠いてドブネズミ!? なんてこと言うんだテメー! なぁリフィ、何でこいつこんななんだ?」


 「え、えーっと、ニールは昔からその、この手の話題が相当苦手で………と言うか男性への免疫がすごい低いんです。ある程度の歳の方なら………ギルドマスターさんくらいの年齢から上で、15歳から下の年齢なら緊張しないんですけど………ニールは同い年くらいの男の子はもうあんな感じでツンツンしてないと接することが出来ないんです」


 「なるほど、必要以上に暴言吐いたり、暴行したりするのは照れ隠しなのか」


 「いや、あれは素ですね」


 「素かいっっ! つーかあいつタメだったのか!」


 魔族は見た目では年齢が判断できないからな。

 

 「私もニールと同じなので、ケンくんと同じですよ」

 

 「いや、お前はもうちょい下かと思ってた」


 「むー、それは聞き捨てなりませんね」


 「うわー、どうしたんだ? あおがみのおねーちゃん


 とぼけた顔で幼女はいう。

 この後暴れる前にニールを止めてダンジョンを後にした。

 

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