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第535話


 男が残したメモには、貧民街のある区画への地図が書かれていた。

 示されていた場所は、街の端の方に位置している。

 

 それ以外に書かれている事はない。

 そもそも、それが本当かどうかも定かではないのだ。

 しかし、男は何故かリンフィア達の目的を知っていた。

 ならば、行くだけ行ってみる価値はあるだろう。

 それがいいか悪いかは別にして、確実に何かはある。

 そう思って向かった結果、




 「まさか………全員ここに来ているとは………」

 



 方々へ情報収集に向かった面々も、此方へ来ていた。

 要するに、待機メンバー以外全員集まったのだ。

 


 「おお、すっごいぐうぜんだ、ってわけでもなさそうだなー」


 「ああ、流石におかしい」


 「確かにそうだな」



 ラビ達が口々にそう言うように、やはり皆奇妙に思っていた。

 リンフィアも、これは流石に出来過ぎだと思っている。

 同時に、先程の男について考えを張り巡らせていた。



 コメカミをトントン、と叩きながら、思い返していく。

 あれはどこか見知った者のような気がしたのだ。

 しかし、いまいち思い出せない。

 声と喋り方が、考えても考えても知人と一致しないのだ。



 「どうされましたか、リンフィア様?」



 ニールは難しい顔をしていたリンフィアの顔を覗き込んでそう言った。



 「や、さっきのローブの男の人なんですけど………って言っても伝わらないかな………」


 「ローブの………………それってまさか」



 次のニールの一言で、全員が凍りついた。



 「紫色のローブの男ですか?」






 「「「———————————————」」」







 静寂。

 全員が一瞬で黙り込み、ニールの方を向いた。

 言ったニール本人も、周りの反応からそれがどう言う事なのか察して絶句した。

 つまり、ローブの男は全員の前に現れたのだ。



 「ッッ………………!!!」



 リンフィアは、心臓まで凍りつくような悪寒を感じていた。

 奇妙を通り越して、もはや恐ろしくある。

 何か、自分の預かり知らぬところで操られている様な、そんな気がしたのだ。



 「そ………それってやっぱり同じ人なんでしょうか?」


 「いや、そう断言する事は出来ないだろう。でも、十中八九繋がりはあるだろうさ。ここに集めた事に何らかの意図は感じる」



 ルイははっきりとそう言った。



 「でも、ここは一体………」



 リンフィアは隣に立つ巨大な防壁を見上げた。

 貧民街のにそびえ立つ明らかに巨大なこの壁。

 微かに声が聞こえるので、人がいる事は分かった。

 しかし、それ以外はなにも分からない。

 あの男は、一体何のためにリンフィア達をここへ集めようとしたのだろうか。


 リンフィアは冷や汗をかきながらそんな事を考える。

 すると、



 「入ってみない事には分からない、か………」


 「だが、何かの施設だと言う事は伺える。近づいて見てわかったが、微かに魔力が漏れ出ている感覚があるからな」



 レイとニールは壁の一番上を睨みながらそう言った。

 すると、2人は徐に体を動かし始めた。

 


 「ニール、どうしたんですか?」


 「レイ? なにをしているのですか?」



 リンフィアとミレアの問いに対して、レイとニールは息ぴったりにこう答えた。



 「「飛び越えようと思って………あ?」」



 2人は不快そうに顔を見合わせた。

 思考より行動派の2人。

 犬猿の仲だが、これで結構似た者同士の2人である。

 しかし、似た者云々関係なしに、方針は決まろうとしていたのだ。



 「ふむ、確かにここでうろついていても仕方がない」



 ルイのその一言で、何となく流れは決まった。

 そして、全員壁の方を向いて体を動かし始めるのであった。



 「それじゃあ、入ってしまおうか」


 










———————————————————————————

 












 「そろそろか………」



 エルを放ってそろそろ30分。

 地上の調査はだいたい終わった。

 後はあいつの帰りを待つだけだ。



 「………来たか」



 ふと空を見上げると、小さな影がこちらに向かって突っ込んだ。

 到着したエルは、少し荒れている様子だった。

 今にも弾けてしまいそうな怒りが見てとれる。

 俺の頭に乗るような気分でもないらしく、エルは着地地点から動かなかった。



 「どうだった」


 「………………これは、あまりにも酷いのです」



 怒りで声が震えていた。

 俺にもわかる。

 これは、相当ひどい。



 「見せてくれるか?」



 エルはコクリと頷いた。

 使い魔は、その記憶を主人と共有できる。

 これで、ここのことは大体わかるようになる筈だ。

 俺はエルの頭に手を置いて、その記憶を自身に入力した。

 そして、



 「っっ………………………!!」



 

 あまりに見るに耐えない光景だ。

 俺は見られなかった光景も、俺が見た光景もひっくるめて全てを空から見たエルの怒りが流れ込んできている。

 ああ、これは駄目だ。

 放ってはおけない。



 「………………ありがとな」




 我慢しろ。

 まだだ。

 まだ抑えるんだ。


 俺は深呼吸をして、エルから流れ込んだ感情と自分の怒りを押さえつけた。



 そうだ。

 これをどうにかする手段はある。

 この場所の奴隷の数、管理方法、暗示の命令と違反基準、そして見張りの数と巡回の経路は、この30分で全て把握した。

 後は貴族の調査だ。

 全て調べるのは少し骨が折れそうだが、調べた後はおそらく何とかなる。



 俺は早速ゴーレムを取り出して改造を始めた。



 何とかしてみせる。

 戦闘は不要。

 ここ街は戦争でどうこうなる街じゃない。

 だから、俺は今から、



 ————————ここの貴族を、全部ひっくるめて滅茶苦茶にぶっ潰してやる。




 

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