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第534話


 「これ………なんのテントなんでしょうか?」



 明らかにおかしな場所に設置された怪しげなテント。

 かなり巨大で、サーカスでも出来そうなくらいだ

 意図はわからないが、確実に何かを隠している。

 ここには何かある。

 しかし、ここまであからさまだとなんとなく入りづらい。

 すると、



 「さて、入ってみましょうか」


 「え゛っ!? 会長、思ったより大胆ですね!?」



 リンフィアは案外思い切りの良いミレアに驚いた。

 


 「この組み合わせだったら、どちらかといえば私が大雑把な選択をする感じかなって思ってたんですけど………」


 「大雑把でもありませんよ。単にここまであからさまなら迷うまでもないと思ったまでです。さぁ、行きましょ」



 ミレアはスタスタとテントの中へ入っていくのだった。



 「やっぱりクールな人だなぁ………………よし!」



 そしてリンフィアも、ミレアを追ってテントに入るのだった。











———————————————————————————













 「………暗いですね」



 ミレアはあってないような明かりを頼りにあたりを見回した。

 そこそこ広いテントだったので、中もまぁ想像通り広かった。

 しかし暗い。

 これは山奥の夜中でもまだ明るいと思えるほどだ。



 「そうなんですか?」


 「え?………あぁ、貴女は確かにそうでしたね」


 「はい、夜目が利くのでそこそこ見えてますよ。ただ、見えていてもここがどう言う場所なのか一切わからないんですよね。置いているものに一貫性が無いですし、かと言って日用品があるわけでもない」



 



 「ははは! それはここは占い小屋だからさ!」





 「「っ………!?」」



 突然、目の前から聞こえた声に驚く2人。

 すると、まるでパフォーマンスをするかのように指を鳴らし、テントの明かりを点けた。

 現れたのは、ダボダボで紫色のローブを纏った男だ。



 「一体いつから………」


 「最初からさ。君たちが入ってくる前からここにいたよ。君たち、お客さんかい?」



 気さくそうに話しかけてくる男。

 顔はほとんど見えておらず、口元だけが少し見ている。

 あまりに胡散臭い。

 そして、それ以上に危険な感じがした。

 気配を一切感じさせないと言うのは並大抵のことじゃないと、2人は知っている。

 加えてリンフィアは、半魔族で夜目が利くにも関わらず、一切男に気付けなかったのだ。

 嫌でも警戒してしまうだろう。


 すると、じっと見つめるだけのリンフィア達を見て男はこう言った。



 「そんなに警戒しなさんな。占い師なんて胡散臭いものだよ」


 「っ………そうですか」


 「そうそう。別に戦いに来たわけじゃあるまいし。そもそもこっちには顔も知らない君たちに危害を加える動機もメリットもないわけだよ」


 「………………うーん、確かに………」


 「………」



 一先ず納得する2人。

 信用は出来ないが、よくよく考えてみると、そこまで気を張る必要なはい。

 ………無いはずなのに、何かがこの男を受け付けないような気がしたのだ。

 すると、



 「でしたら、折角の機会ですし、占っていただいても?」


 「!」



 リンフィアは大丈夫なのかという視線をそれとなく送った。

 だが、ミレアは何も言わなかった。

 どういうつもりなのかはわからないが、なんとなく自信ありげな雰囲気だったので、リンフィアはミレアに任せてみる事にした。



 ミレアは男に近づいて行く。

 男の口元はにこやかなまま崩れない。

 何を考えているのだろうか。



 ミレアはそのままテーブルの前にある椅子に座った。

 こんな広い場所を使って占いという時点で色々と怪しいが、あえて突っ込まないでおくリンフィア。

 

 男は小さく咳払いをし、それっぽく口調を変えて喋り始めた。



 「占いと言っても様々ですが、今貴方が求めているものは何ですか?」


 「探し物です」


 「探し物………なるほど。ならばそれとゆかりのある物を占ってあげましょう。手を出して貰ってもよろしいですか?」



 男がそういうと、ミレアは男の前に手を差し出した。

 ふむ、と言いながら手を見つめる男。



 そして直のタッチ。

 直後にビンタ。

 


 「………」


 「………………えぇ………」



 痛み以上に困惑しているような、そんな声だった。



 「あっ………申し訳ございません」


 「えと………なんで殴られたの?」


 「男だからです」


 「男だからです!?」


 

 物凄いショックを心身共に受ける男。



 「なんだろう………すっごいこう………フワッとした動機だね」


 「ええ、よく言われます」


 「よく言われないでよ」



 男はヒリヒリする頬をさすりつつ突っ込んでいた。



 「もう、だから心配したのに」


 「ごめんなさい。やっぱりフードでも男でしたので」


 「まぁ、こうなると思ったんですけどね」


 「あ、そんな感じ?」



 気づいていてあえて止めなかったリンフィアにもそこはかとなくショックを受けた男なのであった。

 


 「では、可能な限り我慢しますので、続けましょう」


 「いや、やめておこう。お兄さんの顔ブドウみたいになっちゃう」


 「そうですか………」



 ミレアは目に見えて落胆した様子で立ち上がる。

 しかし、立ち止まった。

 それと同時に、男がこう言ったのだ。



 「まぁ、この街の奴隷の事を知りたいのなら、西の地域に行ってみると良いよ」


 「!」



 ぽん、と机の中央に手を添える。

 男はそうして、徐にテントを出て行った。

 しばし呆けていたミレアだがが、ハッと我に帰ると、外へ追いかけて男から詳しい話を聞こうとした。

 だが、



 「待っ………て………………………え………!?」




 そこには、誰もいなかった。

 男は、一切の気配を絶って、その場から消えたのであった。



 「ッ………………」



 

 最後まで手玉に取られたようで、正直ミレアは悔しいと感じている。

 それでも、収穫はあった。

 紙に書いた場所と名前。

 ここに、求めている物があるかもしれない、と。




 「こうなっては仕方ありません。リンフィア、地図の場所まで………………」


 「………」



 リンフィアは、小さく額から汗をかいてボーッとしていた。

 不可解に思ったミレアがもう一度声をかける。



 「リンフィア?」


 「………ぁ………はい、ごめんなさい! もう一度いいですか?」


 「はぁ………仕方ありませんね」




 リンフィアはミレアからの説明を受けつつ、ある事が頭の中でぐるぐると回っていた。

 まだ半信半疑。

 それに勘なので、確実では無いのだ。

 しかし、それでもリンフィアは—————————その男を知っている気がしていた。


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