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第533話


 菅沼 惑。


 以前、合宿でのいざこざの際に介入していた異世界人の一人。

 能力は催眠・暗示系の能力。

 以前戦った氷上 霧乃という異世界人が持っていた【暗示】という固有スキルと同系統だが、能力は完全に上位互換。

 霧乃の能力はあくまで暗示で、それを応用した限定的な催眠をかけることができる。

 しかし、惑は強制的な暗示と催眠を両方行え、暗示をかける際に条件違反になった者を処罰できる。

 合宿の時に敗北した盗賊が爆発四散したのはこの能力によるものだ。



 今俺が目にしている奴隷達は、恐らく奴になんらかの暗示をかけられているのだろう。

 どれだけ苦痛を感じていようが笑顔を保ち続けている光景は明らかに異常だ。

 


 そして、これが重要なのだが、固有スキルは俺にも解除は難しい。

 条件によるが、SS以上はほぼ解けない。

 曲がりなりにも神の力だ。

 一つだけに限定している上、ランクが高いとより能力が強固になるため、それだけ解けにくなるのだ。



 こうなっては話が変わる。

 ヤーフェルの時のような真正面からの武力による解放は難しいだろう。



 「………合流は後回しだ。エル」



 ぽんっ、と影から飛び出すエル。

 定位置に着くと、じっと目の前にある奴隷等の様子を眺め始めた。



 「ご主人様、これ………っ」



 あまりに異様な光景に、エルも絶句した。

 


 「いいか、エル。上空から観察したいところだが、ここから飛べば結界にぶち当たって内側から飛んだのがバレちまう。かと言って外を飛べば結界の視覚操作で内側はほとんど見えない。だからその形態のまま周囲の様子を探ってくれ。30分後ここに合流だ」


 「ご主人様は、どうするのです?」


 「ゴーレムを飛ばしてもいいが、折角お前がいるんだし、俺は地上を見て回りたい。頼めるか?」


 「はいなのです!」



 エルはヒレをバタつかせながら宙に浮いた。

 この形態ならば大きさ的に見つからないだろう。

 だが、一応念のためエルに隠密系の魔法を掛けておいた。

 


 「それじゃあ、後でだ」


 「行ってくるのです!」


 「おう。気ィつけろよ」



 俺達はそれぞれ分かれて貧民街の偵察を始めた。












———————————————————————————












 リンフィア達は、一先ず宿で休息を取っていた。

 



 「ケンくん来ませんね」


 「貧民街から入るようでしたけど………ケン君もあれを見たのかもしれません」



 ミレアがそういうと、ハッとした表情でリンフィアはミレアの顔を見た。

 


 「じゃあ、一人で探ってるかもしれないって事ですか?」


 「ええ。彼なら恐らく。だとすると、当分帰っては来ないでしょうね。とすると…………臨時の指揮は最年長の先生がとっては如何でしょうか?」


 「まぁ、そうなるか………」



 ファルグは顎ひげをさすりながら何かを考え始めた。

 すると、



 「とりあえず、指揮は俺でいいな。なら、この先の予定だが、俺達がするべきなのは情報収集だ。お前さんら気付いてるかイ? 騎竜で先についている筈のクウコ殿の部下の情報屋ないし、彼女本人から一切音沙汰がないって事をよ」



 ファルグはケンから預かっていた通信魔法具を振り回しながらそう言った。



 「「「!」」」

 


 そう、重要な情報源のクウコから一切の情報が来ていない。

 情報が確定でないという理由で少ししか情報を得ていないのだ。

 このままでは動こうにも動けない。



 「と言うわけでだ。姫サンと護衛君はここで待機。念のため俺とセラフィナ殿は残っておく。後はお前さんらで情報収集だ………これは勘だが、この街はヤーフェル以上にマズい気がする」



 ファルグのピリピリした雰囲気が伝染するように、皆の表情が引き締まる。

 ヤーフェル以上以下を抜きにしても、この街はマズいと全員分かっていた。

 まるで大きな影が街を覆っているような、そんな不透明な雰囲気を。










———————————————————————————










 情報収集のペア組はファルグの決めたものになった。

 ケンを除くメンバー内でトップクラスの戦闘能力を持つレイとニールは、それぞれパーティ内での戦闘力で劣っているラビ、流と組む事になった。それ以外のメンバーは、総合的な実力では似たり寄ったりなので、ランダムで組み合わさっている。

 ルイは実力は突出していたが、普通に余りである。



 これは、そんなこんなで決まったペアの一つだった。




 「会長はどこがいいと思いますか?」


 「そうですね………女二人で酒場は………いや、この街に酒場はないかもしれない………悩みどころですね」



 この2人、実はそこそこ仲がいい。

 別段ぴったり同じ性格でもないし、噛み合わせのいいと言うわけでもない。

 なんとなくである。

 強いていうなら、接点はあった。

 学院にいる時、クラス委員でキチッと仕事をしていたリンフィアは、ミレアの関心を買っていたのだ。

 


 「情報収集といっても、具体的に何をすればいいのかよくわかりませんね」


 「そうですか? 探すべき情報ははっきりしていると思いますが」


 「そうなんですか?」


 「ええ。私たちがここに来た目的は奴隷の解放。そして、その奴隷達に異変があった。ならば、まずは大元を調べるべきでしょう」


 「むむ………なるほど」

 


 頭を抱えるリンフィア。

 すると、



 「ん? あれは………」



 リンフィアは、路地裏で何かが動いているのを見つけた。



 「会長、あの路地裏。何かあるみたいです」


 「路地裏?」



 この街は屋敷と屋敷の間隔が広いので、そもそも路地裏が少ない。

 それ故に目が行ったのだろう。

 住宅ではない施設同士の間に狭い路地があったのだ。



 「大元が目的なら、縦の力が強い貴族相手にはあんまり情報は得られないかもしれませんから、ああいった場所の方がより集まるんじゃないでしょうか?」


 「一理ありますね………ええ、わかりました。少し覗いてみましょう」



 リンフィア達は、その路地へ向かった。

 いざ目の前にしても、特に違和感を感じられない。

 しかし、リンフィアはここでその影を見たのだ。

 少し進んでみると、路地裏の割にはどこか小綺麗な感じがする。

 流石手が行き届いているなとおもいつつ、2人は進む。

 奥にはもう一つ隙間があった。

 真っ直ぐでもギリギリ通れる隙間だ。

 そこを進んで更に奥へ。



 「思ったより奥へ進みますね………」


 「でも、ちょっとそれっぽく感じませんか?」


 「確かに、何か意図のある通路のように感じます」



 

 狭い通路を抜け切る。

 フゥと一息ついて、目の前を見た。

 するとそこには、



 「ここは………」


 「当たりかもしれませんね」



 怪しげな小さなテントが張っていた。


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