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第520話


 「あの………こんな装備を頂いて本当によろしいのですか?」



 俺はニールの予備用に作っていた装備をいくつかセラフィナに渡した。

 ニールは頑に装備を変える気がなさそうなので、この装備もきっと使わないだろうと思ってあげることにした。



 「あの………」


 「ん?」


 「余ってしまうのですが………」



 ピシッ、と固まる俺とウルク。

 身長も体格も合うのでどうにかなるかなと思ったが、そういえばそうだった。

 男の常識では測れないものだってあるのだ。

 俺は何と言ってやればいいのか分からず思わずオロオロしていた。


 マジでどうしよう。

 そして何と声をかければいいのだろう。


 セラフィナは正直言って結構胸は控えめな方だ。

 逆にニールは鎧で分かりづらいが、部屋着を見るとかなり大きいのがわかる。

 普段はあまり気にしてないが、なるほど。

 こういう時困るな。



 「どっ、どうすんだよ!」


 「ケンくんの撒いた種でしょ!」



 俺は小声でウルクにそう言った。

 そう、デリケートな問題なのだ。

 だが俺は慣れてないのでマジで困る。


 こんな時気頼りになりそうな流をチラッと見た。

 すると、



 「仕方ないさ。新しいのと変えよう。装備はきちんとしておきたいしね」


 「う………すみません」


 「気にする事はないさ」



 と、無難に対処した。

 流石女慣れしてるやつは違う。

 と、思っていたら、



 「ほほぅ………………Fか」


 「やめんかいッッ!!!」


 「んぐふッッ!?」



 俺のかかと落としが入った。

 このダニ野郎、鎧を見てサイズを測っていやがった。

 いっぺん八つ裂きにされた方がいいと思う。



 「軽装備でもいいか?」


 「………そうします」



 セラフィナは仕方なく軽装備で戦うことにした。






—————————






 「………………?」



 ウルクは、ふと違和感を感じていた。

 


 そしてそれはすぐに分かった。

 セラフィナは奴隷から脱した直後にしては、様子が普通な気がするのだ。

 もっと最初は闇から抜け出せず、影が付き纏っているような雰囲気を持っているはずなのに。

 こんな国でも奴隷から解放された例が一切ない訳ではない。

 だからこそ、この違和感は異常だと感じるのだ。

 


 「セラフィナ………無理、してないの?」


 「無理………ですか?」



 一瞬ポカンとすると、“ああ”と呟くセラフィナ。

 


 「そうですね、今平気かと問われれば………はい、平気だと思います」


 「え………………」



 ウルクは驚愕した。

 あそこまでボロボロのセラフィナを見た後では、にわかには信じ難い事実だったのだ。



 「私には縋るものがありましたから。誰かを助ける、守るという気持ちは、時に自分自身をも救ってくれるものなのですよ。でも、こんなことを考えてる時点でまだまだだなって思いますけどね」



 少し決まりが悪そうに苦笑するセラフィナ。

 守りたいという気持ちが、自分をも救う。

 ウルクには何となく分からないでもない感情だった。

 だが、少なくとも情けないとか、ダメだとかは思わなかった。

 これ程までの苦痛を耐えるほどに、屈強な想いなら、ダメなはずがないと思ったからだ。



 「それにもう………」



 セラフィナはボーッとケンを見ていた。

 それを見てハッとするウルク。

 まさかあってすぐのエルフまでもを………なんて思いながら頷いていた。


 あんなにガラが悪いのに良くモテるものだと思う。

 だが、()()()()()()()()()()()のもまた事実。



 「ケンくんは大変だねぇ………」








—————————








 俺は屋敷の制圧に当たって、掻い摘んだ説明をした。

 すると、



 「あ、あの………本当に、これだけでよろしいのですか?」



 奴隷達は自分たちの仕事の少なさに疑問符を浮かべていた。

 特に、戦力になるやつはそう思っていることだろう。

 しかし、



 「おう。最初に関しては殲滅が目的じゃねーしな。今まで逆らわなかった奴隷達が反旗を翻したっつー事実が重要なわけよ」



 俺は、魔力を高めた。

 最近、魔力の扱いにも随分慣れた気がする。

 最初は知識だけで多少追いつけていない感じが否めなかったが、だいぶマシになっただろう。



 「そら、忌々しい奴隷紋を見てみろ」



 甲高い音と共に、俺の眼が黄色く輝いた。

 膨大な魔力は奴隷達を包み、その魔法を発動させた。



 神象魔法・万魔破壊ノ理



 ガラスの割れる様な音と共に紋が崩れて行く。

 奴隷達はその様子を見て、着実に自由へ近づいていっていることを実感した。



 「おぉ………!!」


 「本当に奴隷紋が!!」


 

 魔力を落ち着けていった。

 神象魔法の弊害も徐々に薄まって行く気がする。

 相変わらず魔力消費は凄まじいが。



 「そういえば、奴隷紋の解放なんて荒技したら、連中にバレるんじゃないのか?」



 この光景を見ていた流がそう尋ねてた。

 が、もちろん対策済みだ。



 「バレるならやると思ったか? 当然手を回してる」


 「へぇ、どんな?」


 「この件が広がるのを見計らって、偽情報が流れる様にしてる。奴隷紋が消える方法っつってな。これは敵の連中に危機感をもたらしてかつこの件をより大事に出来る。セラフィナが有名になればなる程俺らが動きやすくなるしな」


 「………なるほどね。ホントに色々考えてるな、聖」


 「はっ、当然だ」



 その噂とは、とある素材を使った武器で、奴隷主の奴隷紋の大元を破壊すれば、契約を強制破棄できるという情報だ。

 なので今回、俺も特別にセラフィナと同じ特徴を持った剣を装備している。



 「では、いきましょうか。セラフィナさん」


 「はい………!」



 初動はとっくに決まっていた。

 狙うはこの屋敷の主及びその一家。

 

 名乗りを上げるためにも、派手に戦おうじゃないか。




 「んじゃ、手始めに大将首を取るかね」



 

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