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第513話


 一番に伝えるべき情報、とクウコは言った。

 奴程の人物がそう言う情報とは一体どれ程の情報なのだろうか。



 「まずケン、お前が懸念していた異世界人共だが、実はもうこの街にはいねェ」


 「何!?」



 いないと言うのは驚きだった。 

 国境の境目なんて一番警戒するはずだというのに。


 だが、それは俺たちにとって好都合だった。

 目下のところ、手配犯である俺と顔が割れてるウルクにとっては認識阻害を破ることができる者が一番の懸念だったが、連中もかなり警戒すべき対象だった。

 見つからないようにするための策を色々考えていたが、これならその手間も省ける。


 しかし、俺は同時に不気味に思っていた。

 俺を指名手配している以上、俺がこの国に入り込む事くらいはある程度は予測されているだろう。

 それにも関わらず、引き上げた。

 間違いなく何かある。



 「何かあったのか?」


 「確か、何かしらの儀式のため方面に散ってた連中を一度召集したらしい。わりィが、その儀式に関しては、まだ細けェところはわかってねェ。まだ新しい情報だからな。時間がかかりそうなんだわ、これが」



 新しい。

 つまり最近の出来事という事になる。


 だが、それに関しては、そこまで悩む必要はなかった。

 


 

 「………………………最近?………………っ、まさか………」




 一つ、心当たりがあった。

 それは、チビ神も同じだったらしく、俺が言おうとした事を先に言った。



 「天の柩、だろうね」



 ちょこん、とウルクの肩に座るチビ神。

 天の柩とは、神器の一種である。

 遥か古代に神々が直々に作った道具、或いは武器。

 しかし、用途に関係なく、それは確実に配下である転移者たちの力を強化する事ができる。



 「少なくとも、今代の命の神があれを使いこなすには時間がかかるだろうけど、ミー的には急いだ方がいいと思うよ、ケンちん」


 「………“用途”か?」



 チビ神はコクリと頷いた。


 そう、あれは正しくパンドラの箱。 

 あれ一つでとんでもない事になる。

 俺の能力でも対処にはやはり限界がある。

 それは俺に能力があるが故にはっきりと認知してしまう事だった。


 

 「このちっこいのは?」


 「先代の命の神だ」



 まじまじと見るクウコ。

 どこか観察するような視線なのは、もはや職業病なのだろう。



 「へー、じっと見てもわかってンねェもんだな。こいつはどーも。オレはクウコだ。主神が違ェから、悪いがチビちゃんには祈った事がねェなァ」


 「クーちんか。ふむふむ、なるほど。確かに亜人の主神といえばあのヒトだからね。今からでもミーを敬ってもいいよー」


 「あっはっはっは! こいつァいいや。神サマってのは案外親しみやすいんだな。ま、とりあえずよろしく」



 サイズ感握手は無理なので、手を開いて差し出すクウコ。

 チビ神はちょんとクウコの手を握ったのだった。



 「って、そうだ。情報ってのはこれだけじゃアねェ。さっきのはおまけみたいなモンだ。オレが伝えるべき情報は別にある」


 「?」


 「いいか、よく聞け。これはかなりの大ニュースだ。人間界全てを震撼させると言ってもいい」




 あまりに大袈裟な前置きに面を喰らうウルク達。

 俺もかなり気になっていた。

 一体どれほどのニュースか。

 クウコはその大ニュースを、俺たちに告げるのであった。





 「姫の姉貴、ウルフェルア・ルナラージャ。奴の婚約が緊急決定した。相手は王族—————————ルーテンブルクの第一王子だ」



 「「「!!!」」」



 間違いない、政略結婚だ。

 フィリアが蓮と逃亡した事でルーテンブルクはルナラージャの王女をもらう事になったか。

 いや、そんなことはどうでもいい。 

 という事は、




 「同盟………なんて生優しいモンじゃねェさ」


 「同盟じゃない?」


 「ああ。これからルナラージャは統合される。統合後の名称は不明だが、人間界にドデケェ国が立つ事になる」


 「!!」



 「つまり、ケン。お前のお仲間が危機に陥るぞ」




 ふと、琴葉の顔が思い浮かぶ。

 蓮が、七海が、涼子が、美咲が、高橋が、綾瀬が、春が、フェルナンキアのみんなが、学院にいるアイツらが、思い浮かんでくる。


 危機に陥っている。

 そんな事はわかっている。

 だから俺は、この国に来たのだ。

 



 「それと、これはよくわからねェが、一応耳に入れておいてくれ」



 クウコはそう言った。

 まだ何かあるのだろうか?



 「何故かはわからねェが、ルーテンブルクの連中は何かを焦っているらしい。結婚が急なのもそうらしいぜ。それに、ミラトニアとの婚約の時も。オレの勘が言ってらァ。こいつァ何かある。ケン、お前の噂は聞いてるぜ。何か思い浮かばねェかイ?」



 俺はコメカミをコンコンと叩きながら考える。

 しかし、心当たりも情報もないので、何も思い浮かばない。

 レイ、ルイも国のお偉い方の事はわからないだろう。

 それでも、やるべき事くらいは思い浮かんだ。



 「………ワリィが、ルーテンブルクに関しては情報が少ねェ。だが、邪魔が必要なのはよくわかった。だからよ、急ピッチで協力者を増やす事にした」


 「協力者?」


 「ああ。俺らが万が一ルーテンブルク側に渡った時にこの国で暴れられる連中を仲間にしていく。いるだろ? ちょうど仲間に出来るかもしれねーような、お国に反発しか持ってない連中が………………奴隷がよ」





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