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第510話


 着いたのは、橋の下を通って、入り組んだ路地に入ったところにあるバーだった。

 これは本格的にあたりだ。


 バーに入ってみると内装は少し薄暗く、落ち着きのある雰囲気だった。

 ここの連中は、さっきの連中よりもずっとヤバそうに見える。

 期待できそうだ。



 「マスター、空きは?」


 「2号を使え」



 マスターと呼ばれたなかなか渋い男は、青年に鍵を投げた。

 どうやら部屋は個室らしい。



 「2号ね」



 俺たちは奥に進み、“2” と書いている部屋に入った。

 カラオケボックスに似たような感じの個室だ。

 すると席につくや否や、男が話しかけてきた。

 


 「現在ミラトニアは完全封鎖だからね。丁度密入国者でもいないかなと思ってたんだ」



 なるほど、だから乗ってきたのか。



 「そりゃよかった。俺も裏っ側の情報通を探してたところだったんだ。そういう意味では正解と思っていいのか?」


 「情報通を探してたなら期待していい。俺は情報量に関しては自信があるからな。金次第じゃ、国家レベルで伏せている情報をくれてさしあげよう。おっと、非国民なんて言わないでくれよ? こちとら商売なモンだからな」



 男は冗談めかしてそう言った。



 「さて、どれくらいから出す? 金貨ならざっと—————————」



 俺はコトッと、テーブルの上にそれを置いた。

 情報屋は表情がギョッとする。

 俺はいきなり白金貨を差し出した。



 「要求するのは、多分国家レベルで且つ相当のレベルの機密だ。アンタの情報次第ではもう一枚重ねよう」



 情報屋はゴクリと息を飲む。

 敢えて自分で引き出す情報を決めさせる。

 と言うのも、コイツを基準にして情報の価値をある程度把握するための実験だ。



 「………」


 「ちなみに、俺が持っている機密はと言うと………………………」



 俺はファリスから与えらえた情報をペラペラと喋った。

 正直、これで商売する気はない。

 しかし、あくまでもこれを下限とする事と、俺が欲している情報のベクトルをそれとなく伝えるために俺は喋ったのだ。



 「………」



 情報屋は額に小さく汗をかきながら、どうするべきか悩んでいる様子だった。



 「少年………そのレベルとなると、すまないが俺では足りないよ」

 

 「そう、か………」


 「それに、多分もう数枚の白金貨が必要になる」



 なるほど、流石に足りないか。

 貴族達なら割とポンと出しそうな値段だしな。

 ギルファルドとか。


 俺はそう思って、席を立とうとした。

 すると、



 「だが………………」



 俺はチラリと情報屋の顔を見る。 

 情報屋は俺にこう言った。

 


 「この街で1番の情報屋の元に連れて行くことは出来る」

 

 「ほぅ………」



 俺はやっぱり立ち上がる。

 しかし、帰るつもりで立ち上がったのではなく、俺は案内してもらうために立ち上がったのだ。



 「それじゃあ、そいつを手間賃として案内してもらおうか」


 「!!」


 「あ、それと」



 俺は念のため釘を刺しておいた。



 「俺の情報は好きに使ってもらって構わんけど、出所に関しては絶対に詮索するな。俺の詮索もだ」



 俺はほんの少しの殺気を乗せて、情報屋に囁いた。



 「消されたくはないだろう?」












———————————————————————————












 俺が案内されたのは、今入った部屋を出て、バーのさらに奥へ入ったところにある隠し扉を通って、さらにその奥にある隠し階段を通って何重もの工程で守られた最奥の部屋だった。

 

 情報屋は、扉の前に立っただけだが、案内された俺よりも緊張している様子だった。



 「ここにいる方が、この街で最も有能な情報屋だ。だが気を付けろ。気に入らない相手はすぐに利用するだけ利用して挙句捨てられる」


 「はいよ」


 「はいよって………少年、本当に甘く見ないことだ。場合によっては死よりも惨たらしい終わりを迎えるんだぞ?」


 「ははは。そいつは怖い」



 俺は口だけそう言ってスイスイと進んでいった。



 「じゃあな、にーちゃん。助かった」



 俺は一言だけそう言って、部屋に入った。

 情報屋は、こりゃだめだといった表情で帰っていくのであった。




 扉には廊下が続いていた。

 微かに漂う薬っぽい気配。 

 混ぜられた魔力の感じからして、おそらく自白剤の一種と見た。

 魔族が魔力から、亜人が匂いから気づけるくらいで、基本気づかないだろう。

 いや、気づいてもなんなのかわからないかもしれない。

 とりあえず俺はパチンと指を鳴らして、自白剤を風魔法で全て巻き取って、俺の掌の上に乗せた。


 俺はそのままそれを握りしめたまま奥へと進んだ。


 すると、廊下を進んだ先に天幕があって、俺はそこに入った。

 そこにいたのは、



 「女………………?」



 肩を出し、大胆に胸元を開いて、煙管を咥えていた茶髪の女だった。

 しかも、かなりの巨体だ。



 「フー………オレに用かイ? 小童」



 煙を吐きながら、その女はそう言った。

 今のところ敵意はなさそうだ。



 「情報屋のにーちゃんの紹介で来た。名前はワリィが………」




 「ヒジリケン」




 「!?」



 この女………マジモンだ………

 さっきのにーちゃんもなかなかの情報力だが、俺の素性が割れてるってことはかなりのもんだ。



 「なかなかやるねェ………大狐の姉ちゃん」



 「! 噂通り、骨のありそうな小童だ」



 女は尻尾を見せて、俺にそう呟くのだった。

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