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第509話


 「やーっと頭痛がひいたか」



 街に着くと同時に、薬の効果が切れた。

 目がぱっちりした気がする。

 


 「んで、とうとう着いたな。ヤーフェル」



 眼前に広がる煌びやかな街並みは、遠くから眺めるよりずっと美しかった。

 建築物の一つ一つが景観を損なわぬように作られており、そこで出歩いている人々も、相応しいもの達ばかりだった。

 冒険者や旅人は少々浮いてしまうだろう。



 「貴族感ハンパねーな」


 「ここは階級の高い国民の別荘地みたいなものだからねー。ここの家主たちは大体めちゃくちゃデカい屋敷を持ってるんだよ」


 「確かに、住宅地ってよりはリゾート地っぽいもんな。こりゃ値も張りそうだ」



 と、言っている俺だが、おそらくそんじょそこらの連中の個人資産よりも金は持っているかもしれない。

 というか、そもそも俺はギルファルドから貴族の権限を貰ったから立場上一応貴族なのだった。

 まぁ、その権限は鉱山の採掘を一回行った以外で今のところほぼ行使した事ないが。



 「サービスも良さそうだな。リフィ、空間繋げてっから、アイテムボックスから必要なもんがあったら好きなだけとって行っていいぜ」


 「え、もうお散歩ですか?」


 「まーな。お前らは今日一日くらいおとなしくしてろよ」



 俺はひらひらと手を振って、そのまま街に入って行った。

 さて、恒例の街探検。

 お目当てのモンは見つかるかね?








———————————————————————————









 「うー、嫌すぎる………」

 


 念のため、浮かない程度の格好はしたが、やっぱり何処か気持ち悪い。

 これだから堅苦しい格好は嫌いなのだ。

 


 「………こっち、か」



 やはり奴隷が目立つ。

 ミラトニアとの大きな違いは、奴隷所有の多さ、そして奴隷への容赦のなさだ。

 この国では、奴隷への無用な体罰は禁じられていないらしい。

 もはや推奨している風潮すらあるように思える。



 「チッ………」



 しかし、不用意に飛び出すわけにもいかなかった。

 リンフィアの時のような事は起こすわけにもいかない。 

 あれは自分でもわからないくらい本当にどうかしていた。

 もう繰り返すわけにもいかないが、このまま放置するのも気持ち悪い。

 一応暴れる手段は思いついている。


 だが、その前に、



 「さてと。情報収集だ」

 


 街の裏の方にだが、酒場があった。

 やっと見つけられたと、俺は息をついた。

 裏の方までは、流石に全て貴族感のある街並みと言うわけでもなく、闇市やら闇カジノやらもあった。


 酒場もどちらかと言うと、裏の方の酒場なのだろう。

 市場じゃ出回らない情報や食材などを使っていると見た。

 俺もどちらかと言うとそちらの方が楽である。

 俺は格好を少し変え、中に入った。




 中は思ったより普通の酒場と同じ様子で、特に違和感はない。

 だが、座っている連中には違和感というか、注意がいく。 

 なかなかの手練れが多い。

 俺が入った瞬間、かなりわからない様にチラッと観察していた。

 その中で1人、面白そうな奴がいたので、俺はそいつの隣に座った。




 「いらっしゃい」



 無骨そうな店主が、グラスを磨きながら俺にそう言った。

 このおっさんも強そうだ。



 「何にする?」


 「んー、隣のにーちゃんのと同じやつで」


 「あいよ」



 黙々と、店主は準備を始めた。

 隣の青年はそっけない様子で酒を飲んでいる。

 と、グラスを置いて、その青年は俺に話かけてきた。



 「俺に何か用かい? 少年」


 「用があるかは今から見極める予定だ」



 フッと笑う青年。 

 グラスの酒を飲み干すと、また同じ酒を飲みだした。



 「見覚えのない少年が俺を試すか………」

 

 「試すっつー意味でならアンタはとっくに合格だよ」



 酒が置かれる。

 なかなか強そうな酒だ。



 「へぇ?」


 「ここに来た時、半分ほどの連中が俺を見た。そしてもう半分は何もしなかった。何もしなかった連中の大半は眼中にない。見た連中も合格とは言えない。だが、」



 俺はフイッと後ろを見る。

 そしてもう一度正面を見た。



 「アンタを含め4人。俺を見ずに、俺を見ていた連中の様子を見た。間接的に俺を見ていたあたりよっぽどやるな、って思ってな。特にアンタは、気に入った。何せここは特等席だからな」



 ここは他3人がよく見える上、店主との距離も近く、逆に入店者からも見られる位置だ。



 「ヒュー、やるねぇ。何者だい? 少年」


 「ただの旅人さ」



 俺は懐から出した、ミラトニアの貴族のメダルを見せた。

 持っていてよかった。



 「!!………………なるほどね。場所を変えるか? 君の求めているものはあると思うよ」


 「ははっ、そうか。我ながらツイてるぜ」



 俺は出された酒を一気に飲み干し、金を置いた後、店主に美味かったと一言言うと、その青年と共に店を後にした。

 さっきの3人が小さくため息をついていたので、俺はフッと笑みを溢すのだった。

本作の投稿についてお知らせがあります。

2019年12月20日以降、投稿間隔を2日に1話とさせて頂きます。

未定ですが、来年の4月までには毎日投稿を復活する予定です。


詳しくは活動報告を御覧下さい。

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