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第503話


 3日。

 設けられた期間は思ったよりあっという間に過ぎていった。

 あまり公にも出来ないので、歓迎会のときのような、大掛かりな送別会みたいなものは設けられなかった。

 ここでの暮らしのわりには、あまりにさっぱりとした終わりだと感じる。

 まぁ、なかなか楽しい時間が過ごせた。

 クラスメイトという仲間を、初めて持てた気がする。

 なので、

 




 「ま、ちょっとくらい騒ぐのはいいだろ」

 


 俺はこっそり部屋を借りて送別会を行った。


 ここの地下空間を弄って簡易的な部屋を用意した。

 どうせ隠し部屋なんだから、こうんな風に使わねば勿体無い。

 俺は特科1組のメンバーだけを呼んで少しばかり騒ぐつもりだ。



 「ウオオオオオオオオ!! お前ら!! 急いで食わないとしばらくケンの飯は食えないぞ!!」



 相変わらずはしゃぐマック。

 平々凡々の顔立ちながら、中身はうるさく濃い。

 しかも“感化”持ちのため、つられて早食いする奴らが続々と現れた。

 にしても食い意地が張りすぎてるので、俺も思わず文句を言った。



 「おいテメェマック!! オメーが汚ねーと感化すンだから落ち着いて食いやがれ!」


 「おっごお、おごもももっもま、ぼんも、もも」


 「汚ねぇから喋るなダネ!!」



 ボルコのゲンコツが飛んでマックが一気に喉に詰まらせた。

 かろうじて飲みきると、



 「何すんだテメェ!?」


 「喧しいダネ!! このハゲ!!」


 「ハァ!? ハゲてないですぅー! ボウズですぅ!」



 そうやってこの前料理中に焦がして薄くなった部分を見せぬようにいうマックに対して、



 「いやハゲてるよ」


 「そうだよ」


 「認めろよ」


 「お、ミスした茹で卵みたいなハゲが出来てんな」



 「泣くぞクソども!! つかケン、そのリアルな指摘やめて!!」






—————————






 ギャーギャーと騒がしくしている男子とは対照的に、女子は貴族の出らしく優雅に食べていた。



 「全くうるさいなー。ご飯くらい静かに食べろって話だよ」


 「? シャル嬢、お前いつもうるさいと思うんだが」


 「そこは黙っといてよ!」



 と、シャルティールとアルフィーナを筆頭に徐々にうるさくなりつつある女子側。



 「そー言えばかいちょーさー」



 と、ミレアに切り出すのは珍しくユアだ。

 普段は怠け者なのにどうした事かと思いつつ、ミレアは話を伺った。



 「何でしょう?」


 「ケンとチューくらいした?」



 その瞬間、焦ったように紅茶を吹き出すミレア。

 おぉ、と珍しいものでも見るようにミレアを眺めるクラスメイト達。



 「あの会長が………」


 「気を許すどころか恋仲に………」



 ざわめく女子サイド。

 ミレアは顔を真っ赤にして目をパチパチとさせていた。



 「なななななななな、なん………ななん、の話ッ、!」


 「いやいやー、チューは冗談としてー、惚けるのはもーむりじゃなーい? かいちょーがケンをどう思ってるかくらいならー、女子は勘付き始めてるよー」



 「はわわわわわ………そそ、そうなんだぁ………」



 と、呟いているドレイルは無かったことにして会話を続けるユア。



 「ま、真っ先に見つけたのはユサだけど、ぉッ!?」



 こちらでもゲンコツが鳴り響く。



 「馬鹿者!! 純情な乙女の心を………」


 「ちょっちょっ、おおお、怒らないでくださいっ!! そっ、それだとまるで私が………」



 「そ………それはもう無理じゃないかなぁ………」



 そう呟くのはドレイルだった。

 云々と頷く女子達。



 「あ、でも………わ、私は応援してますっ!」



 「そっ!!」



 と大声で抗議をしようとしたミレアは徐々に声を小さくしつつそっぽを向きながら、



 「………んなに、みんなして言わないでくださいよぅ……………」



 崩壊しかけたキャラと共に、女子たちの中で何かが瓦解した。

 初めて見るいじらしいミレアに、まるで【魅了】でもかけられたようにキャアキャア言い出す女子達。

 結局騒がしくなった。






—————————






 「騒がしィなオイ。ちったァ落ち着けっての」


 「おぉ、普段は一番騒がしいガリウスくんがそんなことをねー。どしたのー?」


 「お前しれっと失礼だな」



 そこにいたのはガリウスとウルクに加え、ローゾルもいた。

 これまた奇妙な組み合わせである。



 「ふふふ、まさか君がそんな事を言うとはね。この高貴なる僕でさえ驚いているよ」


 「るっせェな………俺だっていつでも騒いでる訳じゃねェ」



 「「あ、うるさい自覚はあったんだ」」



 「うっせェわボケ!!」


 「最近静かだったから心配していたが、問題はなさそうだ」


 「チッ………俺にも色々あンだよ」


 「へぇ、ついてこないのもそれだから?」


 「まぁ、そういうこったよ。俺はまだ弱ェからな。いつかアニキの隣に立てるようになりテェんだ。だから今は修行するって決めたんだよ。そういうテメェは何か持ってんのかよ。()()()?」



 そう、実はクラスの連中全員ウルクの正体を知っている。

 というのも、ルナラージャの連中が攻めてきた時に断片的には聞いていたから、詳細を後で聞いたのだ。

 これもケンの時同様、皆すんなり受けいれていた。

 なかなか肝のすわった連中である。



 「んー、まぁわざわざ亡命するくらいなんだからあるよねー」


 「って、亡命だったのか………それなのにわざわざ帰って大丈夫なのかい?」



 ローゾルがそう尋ねると、



 「うん、大丈夫。ここへは元々戦える人を探しに来た訳だし、ケンくんならきっと解決してくれるよー。ガリウスくんもローゾルくんも、ケンくんの凄さはよく知ってるでしょー?」



 ウルクがニッと笑うと、当然だと言わんばかりにガリウスは鼻息混じりに、ローゾルは云々と肯き、笑みを返した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 503話まで行きました! [一言] いやぁ、503話、またあのパーティーがみれる! 電車の中で見ててほんと嬉しかったです! これからも応援してます! 頑張ってください!!!!
2019/12/10 07:34 永遠のゼロ
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