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第501話



 こうして、王都からの脱出に成功した蓮たちは、とりあえずラクレーが師匠と住んでいた家のある冥王山へ向かう事になったのだ。

 そして、物語は、冒頭へと帰る。




 「今日の鍛錬は終了だ」

 

 「ハァ………ハァ………ありがとう、ございました………」



 膝に手をつき、肩で息をしながらそう言う蓮。

 指導者はもちろんラクレーだ。


 逃亡したのは、蓮とフィリアだけでは無く、ラクレーも付いていたのだ。

 



 「ここに………来てから………………ハァ………修行がハードに、なってませんか?」



 MPがすっからかんになるほどの魔法剣の多用と、明らかに威力の違う攻撃。

 戦法もずっと複雑になり、付いていくのがかなり辛くなっていた。



 「ん。こうなったからにはレンにはせめてあたしと同等くらいには強くなってもらう」


 「? 元々俺を師匠と戦えるようにするために育ててたんじゃないんですか?」


 「うん。そうだった。でも、ちょっと急がないといけない。早く蓮が強くならないと、あの子が死ぬ」



 ラクレーはフィリアを見てそう言った。



 「………え?」



 驚き止まる蓮。

 



 「一体、どう言う事ですか………?」


 「………」



 ラクレーは目を伏せ、ほんの一瞬、気づかない者なら気づかないほど一瞬、苦しそうな表情を見せる。

 それを見た蓮は、訝しんでラクレーを見た。

 そしてラクレーは、剣をいじりながらこう言った。



 「今から話す事は、誰にも言っちゃダメ。特に、敵対する連中や計画を止め得る存在………ケンには絶対に話さないで欲しい」


 「ケン………ですか!?」



 蓮はケンの力を理解している。

 そして、卓越した頭脳も。

 それ故に疑問だった。

 大抵の場合、ケンがいれば解決するであろう事なのに、黙っている事はおかしいと思ったのだ。


 だが、



 「………聞かせてください」



 事情がある事くらいわかっていた。

 ならば、聞いておきたい

 蓮はそう思った。

 何故ならそれは、フィリアを守る事に繋がると聞いたからだ。


 そして、ラクレーは意を決してこう告げた。



 「………あたしは、ルーテンブルクの第一王女。一族を裏切って逃げた反逆者。目的は、ルーテンブルクの崩壊」


 「!!」



 国崩壊なんて穏やかじゃない。

 なるほど。

 それならば納得できた。

 同盟を組めば、ルーテンブルクとミラトニアが手を組み、その崩落とやらができなくなる可能性が高まる。

 故に、この婚約は阻止しなくてはいけなかった。



 「それに、多分これから人間界では大きな戦争が起こる」


 「なっ………………!!」


 「今から、それについて話す」




 ————————————カチ、カチ、と何かが動く音がする。

 それは、歯車の動く音。

 物語が進む音。

 運命が歩き出す音。


 蓮はそんな音が聞こえたような気がした。




 「これから話をするのは、三帝が三帝となった理由。あたし達の物語」









 

 繰り返しとなるが、これは序章だ。

 だが、これにて序章は幕引き。

 これより語られるのは三カ国の歴史、三帝達の追憶、これから始まる大事件。

 

 

 物語は、続いてゆく。














———————————————————————————














 「なるほどねぇ………」



 俺は少し驚いていた。

 まさかこの短期間で蓮が隊長クラスと渡り合う程強くなるとは。

 まぁ、無理な話ではない。

 元々剣術に関しては人外と言っていい。

 つまり、必要なのはステータスと経験だけ。


 ならば、ラクレーはうってつけだろう。

 同じく人外クラスの剣術が使え、加えて経験に富んでおり、何よりステータスは国内最強クラス。

 最高の師匠だ。

 


 「うん、強くなってるのならいいことじゃねーか」


 「いや誘拐に興味は!?」



 思わずそう突っ込むファリス。



 「誘拐ィ? ンなもんどーでもいーわ。マジで。思春期の少女が駆け落ちしてイケメンと逃げたってだけのエピソードだろ」


 「何を青春物語のように言ってるんだ」


 「婚期もおくれた独身貴族にはなかった青春だな。アッハッハッハッハッハッハッハ」


 「殺すぞ」


 「ごめんなさい」



 反射的に謝ってしまった。

 この手の話題もNGなんだった。

 やれやれとかぶりを振るリンフィア。



 「ま、あいつなら大丈夫だ。やっと素直になったんだから、俺としちゃあ嬉しい限りだ」


 「そう言う問題ではないだろう。お前の友人がお尋ね者にされているんだぞ?」



 確かに大事だ。

 それは間違いない。

 だが、



 「関係ねーさ」


 「何?」


 「あいつは、絶対に無意味にそんな事をする奴じゃない。だから、大丈夫」



 俺は信じているのだ。

 獅子島 蓮と言う男を。



 「あいつは強いし、ラクレーなら信用できる。あいつが一緒にいるのなら心強い」





 まぁ………転生の弊害もあるが、しばらくは大丈夫だろう。

 


 「だから、さっさと先に済ますべき用事の方を済ませようぜ」


 「確かに………そうだな」



 元々俺達が向かっている理由は、ファリスが向こうに集められた連中と俺たちに何か用事があると言ったからなのだ。



 と言うわけで、俺たちはさっさと話を切り上げて、全員が集められたと言う場所に向かうことにした。



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