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第490話


 俺は春とイシュラの治療を終えた後、直ぐに2人を医務室に運び、寝かせておいた。


 第零の連中は、俺が戻ると意識が戻っていたので、こいつらも医務室かなと思ったが、体調はいいらしく、ファリスのところへ向かう事になった。


 祭りはというと、まぁ当然っちゃ当然だが、中止を余儀なくされた。

 これに関しては特に意義のある者はいないらしい。

 とっておきの魔法具を用意してまで張り切っていたミレアや、“羽”まで発現させたウルクには悪いが、今回はお預けだ。



 そして場面は、職員用テントで、第零学部の連中と俺とで、ファリスと対面するというところに移る。





 「久しいな、アルシュラ」


 「はい、本当にご無沙汰しています。学院長先生」



 ファリスはちゃんと名前を覚えていたらしい。

 その辺りは普通に感心する。


 ファリスの何がすごいかって、魔道王なんて異名をつけられながらもちゃんとした教師、それもかなり腕が良く、模範的以上にきちんと教師だという事だ。

 教えるのもうまいし、尊敬されながらも慕われている。

 まぁ、適当なのはたまにキズだが、むしろそこで好感を得ている部分もなくはない。



 と、ファリスの話はその辺にして、今は第零の話がメインだろう。



 「すまなかった」


 

 と、ファリスは頭を下げた。

 やはり、関わっていないにせよ巻き込んでしまったという意識はあったらしい。

 唐突だったが、アルシュラは慌てることもなく、少し苦笑していた。



 「謝る事はないですよ。元はと言えば、デタラメを信じ切って、叶うはずのない願いを叶えるために自分から動いたあたしが悪いんですから」


 「だが………………私の学院で好き勝手されているのを見過ごした私にも非はあるはずだ。せめて、頭くらい下げさせてくれ」




 生徒達は困惑していた。

 みんながみんなアルシュラの様に納得しているわけではない。

 目的が成就できないと知って、絶望している生徒も少なからずいる事だろう。


 第零学区の生徒達は、全員誰か身近な人を亡くしている。

 それに目をつけた研究者が、ファリスの目を盗んでこうやって人材を集めたらしい。

 


 おそらくこれから先、彼らと教師達で色々と話し合う事だろう。

 この問題は簡単に片付く問題ではない。

 だが、ファリスとしては、真先に生徒達の心を治してやりたいと思っている。

 時間はかかるだろうが、きっとどうにかなるだろう。








—————————









 少し経った後、第零の生徒たちは、代表であるアルシュラを残して一先ず寝泊りするための施設に向かったらしい。



 さて、一つ問題がある。

 こうやって話が進んだのはいいが、それにしてはおかしな点があった。

 俺たち3人は、それについて話をする事にした。





 「アルシュラ達の事を思い出したのは、ついこの間だ」



 ファリスはそう切り出した。



 「って言うと、あたしたちのことを忘れていたんですか?」


 「お前真顔でスゲェ事聞くな………」



 言いにくいだろうに。

 だが、



 「いや、そうじゃない。記憶そのものは()()()()()()()


 「「は!?」」



 まさかの発言に俺とアルシュラは驚きを露わにした。



 「時々、イシュラが来た時なんかに、『そういえばあいつ妹いたな。名前は確か………そうだ、アルシュラだ』といった感じで思い出してはいたんだ。でも、ここからが問題なんだが………」



 ファリスは、少し自分でも不思議そうに、こう言うのだった。



 「いなくなった事実だけ、どうしても思い出せなかったんだ」


 「なっ………………どういう事ですか!?」


 「………………」



 俺はスッと目を細める。

 

 これは間違いない。

 誰がやったのかはしらないが、確実にやられている。

 いや………人物もある程度把握できる。




 「なるほど。そりゃ思い出せない筈だ」


 「わかったのか? ケン」


 「固有スキルである事は間違いない。けどな、そこまで持続力があって、尚且つ今思い出したファリスでさえ催眠にかかった事に気づかないって事は相当ランクの高い固有スキルだ」



 SSSランク。

 いや………………こう言った方が正確か。




 「魔法ではたどり着けないレベルに達した固有スキルはSSSランクという括りに入っている。そして、その中でも、特定の固有スキルである事且つ、“大罪”の名を冠する域に達した固有スキルをこう呼称するんだ。Ex(エクストラ)ランク、ってな」


 「Exランク………?」


 「ああ。古代魔法ってのは、もともとこれの下位互換でな。あれはそのExランクスキルを誰にでも使えるようにしようとして作り、詰めに詰めまくった結果、その域まで辿り着けず、しまいにゃ誰も使うことができなくなった出来損ないなんだよ」


 「なるほど………」


 「一回ケン君と記憶を共有したから少しはわかるけど、ちょっと難しいなぁ」



 アルシュラはうーんと唸りながらそう言った。



 「おそらく犯人は、律人を連れて帰ったあいつだ。王条っつったな」


 「エドガー………じゃなかった。リヒトを連れ帰った奴が、私に暗示をかけたのか?」


 「いや、暗示っつーか………」



 俺が説明しようとした瞬間だった。

 イレーヌがファリスを尋ねて来た。

 


 「学院長、宜しいですか?」


 「ん? なんだ?」



 「イシュラが目を覚ましました」



 「「!!」」



 パッとアルシュラの表情が明るくなる。

 やっと兄と話せる事が嬉しいのだろう。

 だが、それだけでは終わらなかった。



 「それと………」



 俺はそれを聞いて、思わず凍りついてしまった。




 「ハル先生が、姿を消しました」




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