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第480話


 「行く必要はねぇさ、ウルク」


 「え?」



 俺は遠くからウルクにそう言った。

 ポカンと全員が惚けていた。

 すると、呆れ果てた霧乃が笑いを溢してこう言う。



 「うふふふ、何を言い出すかと思えば………ふざけた冗談は止しなさいよ? あなたの一言がこの会場の人間を全員殺すかもしれないのに」



 もれなく敵の全員から殺気が放たれている。

 本気だと言う事は十分伝わった。

 俺はそうだとわかった上でああ言ったのだ。



 「冗談でもねェし、ここの連中に手出しさせるつもりも毛頭ねェ」



 俺は一瞬でウルクのところまで飛ぶ。

 勝手気ままに動き回る俺に、霧乃は一層苛立ちを募らせた。

 


 「そんなわがままを通すとでも?」


 「あ? オイオイオイオイ、何言ってんだお前? 通す? ハッ、これだから三下は………」



 俺はやれやれとかぶりを振る。

 そしてこう続けた。



 「どの時代、どの世界に於いても、意見を通すのは強者のみ。それは腕力を持つ者の時もあれば知恵者の時もあるし、技巧者の時もある。場合によっちゃア、1人だったり集団だったりもする。その場その時によって強者の意味合いは変わるもんだ。この場ではどうだ? ああ、シンプルだ。この場での強者はそのままシンプルに強ェ奴のこと。それは誰だ?」



 俺は堂々と宣言した。



 「俺だ」



 そしてこう続ける。



 「例えお前ら異世界人がまとめて5人ともかかって来ようが、この場………この街の全員がかかって来ようが、同じ事だ。集団? 個人? 関係ねェな。全て俺の下位互換であり、それはここにいる全員を含めても覆らねェ」



 心配そうな顔で俺を見るウルク。

 こいつは俺を知っている筈なんだがな。

 俺はウルクの肩をポンと叩く。



 「なーに心配そうな顔してんだよ。言ったろうが、お前への借りをきっちり返すって。お前の望みが叶うまで、俺はお前を見捨てないし、望みが叶った後も、蔑ろにする気はない」




 俺は一歩前に出た。

 魔力を練りながら、ゆっくりと。

 警戒するルナラージャの戦士たち。

 その警戒すらも侮りだと言う事を俺は知らしめてやらねばならない。




 「魔法………お前らはそれを一体どれほど理解しているんだろうな?」


 「………何が言いたいの?」



 

 パチンと指を鳴らした。

 膨大な魔力の放出。

 それはなんと、街全体に及んだ。



 「「「!?」」」



 霧乃達の体が光る。

 だが、一切の害はない。

 そのことがむしろ霧乃たちを動揺させた。



 「魔法の真髄、遥か古代に失われた大いなる力の一片を、お前らに見せてやる」




 展開術式。

 詠唱魔法のような即席の魔法とは対を成す仕掛ける魔法。

 その効果は、あらかじめ組んで置いた何かを具現化する、だけではない。

 本来、あれは結界だった。

 と言っても、王都に貼ってあったような持続型の詠唱魔法の結界とは訳が違う。

 空間に性質を持たせることで、特有の空間を生み出すというものだ。

 その時、条件を限定すればする程空間の性質が起こす効果が強まっていく。


 俺が町全体に貼った展開術式。

 それは、『町民及び生徒、教師が人質に取られ、半径2km圏外と500m圏内に同じ一派の敵がいた場合、強制的にある場所へ俺1人とそいつらを飛ばす』という効果の術式だった。








————————


——————


————





 


 「「「!!!?」」」

 



 中央に、20人の敵が出現する

 周囲には不思議な色をした壁があり、外へと続く扉や窓はどこにも見当たらない。

 俺は連中にこう言った。



 「ようこそ、クソッタレ共。ここは俺の魔法で作った異空間だ。出たけりゃ俺を倒すか、テメェがここでくたばるかだ」



 なんて、ハッタリをかますが、実はこの場所、今までいたリングの真上だった。

 出ようと思えば出られる空間。

 だが、向こうは俺の言葉をすっかり信じているらしい。


 しかし、あくまでも強がる霧乃は俺にこう言った。



 「………ハッ、流石にあなたでも転移者7人とルナラージャの精鋭、それに“神威汚染”した庭島を相手に勝てるわけないわ」



 思わず失笑してしまいそうだった。

 情けない。

 余裕を保とうとしているので必死だ。

 以前あった時ほどの余裕は完全に失われている。



 「………[跪け]」

 



 「!?」



 その場の2人がガクッと膝を落とした。

 霧乃が咄嗟にその方角を見る。



 「『言霊』」


 「言霊………?」


 「古代魔法の一種だ。敵が戦意を失い、一切争う意思を持たない場合、命令させることが出来る。お前の強制の遥か下位互換だが、フツーに使えるぜ? 本来、テイムとはこれの派生だった。“強制”ではなく“共生”になったものがテイムと言えるだろう」



 跪いた2人に関しては、完全に戦う意思を失っていた。




 「何故、古代魔法が失われたか知っているか?」



 俺は唐突にそう呼びかけた。

 当然誰も答えない。


 「逆になぜ詠唱魔法が生き残ったか。その理由が簡単だから、というものだ。詠唱魔法は詠唱により、オートで働く。これが大きい。無詠唱が使える理由も、その内容を詠唱時に何度も知って覚えるからなんだよ。だが、その他の魔法は、問答無用で無詠唱な上、全てに於いて難易度が圧倒的に詠唱魔法を上回る」



 俺は再び命令を下す。



 「[刺せ]」



 跪いた2人が揺らりと立ち上がり、いきなり霧乃を攻撃した。



 「っ………クソッ!!」



 霧乃はあっさりとそれを躱して2人を殺す。

 もう10分の1減った。



 「一応、俺にもポリシーがあってな。古代魔法は人目につかないようにしている。だが、ここにいる生徒たちには、勉強になるだろうと思ってな、特別に使ってんだよ。それに」



 俺はニィッと煽るように笑った。



 「格の違いがよくわかるだろう?」


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