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第478話



 「—————————下kevildjどdけ海ucaka杖いぇいdjskdkw雨!!」



 人では無いナニカと化した律人が、耳障りなその()を叫ぶ。


 酷く歪なその()

 突然現れた異形のバケモノ。

 既に何かおかしいとは思っていた観客たちは、ここで決定的におかしい事に気がつく。

 会場の人々の動揺は徐々に大きくなっていた。

 そして、動揺している人物がもう1人。

 



 「………あ、れ?」


 

 リンフィアは痛みを感じていなかった事を疑問に思った。

 確実に吹き飛ばされた。

 元に今あの化物から遠く離れたところにいる。

 しかし、衝撃は感じなかった。



 「そんな………私、今………」



 一体何が起こったのだろうか。

 そう、疑問に思っているのだろう。



 「間に合ったみたいだな」


 「!!!」



 リンフィアはバッと慌てて振り返った。

 そして酷く驚いた顔を見せる。

 


 「ケンく………………っ……」



 姿が元に戻る。

 一気に疲労と魔力不足が表面に出て、倒れ込んだ。



 「あ、れ………」

 

 「よくがんばった。勝手に覚醒弾を作った件は後で説教だが、今は何も言わねぇ。本当に強くなったな、リフィ」



 そっと頭を撫でる。

 正直、何度も助けに行こうかと思った。

 だが、その度にこいつは、まだ戦える、戦いたいという意思を俺に向けてきた。

 結果、こいつはとうとう俺の予想を上回り、ルナラージャの異世界人相手に勝利を収めた。



 「後は任せろ。選手交代だ」


 「あ………は……ぃ………………」



 リンフィアは一気に力を抜いて、そのまま気を失ってしまった。

 俺は一気に観客席に飛んで、ニールのところへリンフィアを届ける。




 「りっ、リンフィア様ッ!!」


 「心配すんな。気ィ失っているだけだ。回復魔法はかけてる」



 リンフィアの様子を見て、ほっと息を吐くニール。

 ただ少し魔力の回復と精神の回復が必要なので、このまま休ませる必要はある。



 「ニール、頼んだぞ。絶対に守れ」


 「当然だ。お前も抜かるなよ」


 「はッ、それこそ当然だ」




 俺は再びリングへと戻って行く。


 周囲を囲う気配を、俺は敏感に察知していた。

 数はおよそ10。

 その内5人はSSランク冒険者クラス。

 その5人は、少なくともステータス上なら三帝にも退けを取らないレベルだ。

 恐らくこの周辺以外にも敵はいる。


 それに、リング上に現れたこのバケモノ。

 これは先日の暗木メメの姿にそっくりだ。

 加えてこいつには強力な固有スキルがあり、しかもこの暴走によってより強化されてしまっている。



 「まずは………」



 俺は観客席のファリスへ視線を向けた。

 向こうも俺の反応を待っていたようで、言葉を交わさずとも意志の疎通ができた。

 ファリスはコクリと頷き、音魔法でアナウンスをかける。



 『予期せぬ事態が起こった!! 試合は一時中止だ!!! 観客は全員その場を離れるな!! 生徒たち及び教員は戦闘態勢を取れ!! 警戒を怠るなよ!!』



 その瞬間、会場はむしろシン、と鎮まり、ピリッと乾いた空気が流れ始めた。

 町民たちもよくすぐに適応するものだなと感心したいところだが、もう連中が来ている。

 そんな場合ではなかった。



 「聞いたか異世界人ども!! さっさと出てきた方が早ェんじゃねェのか!?」



 俺は大声で叫んだ。

 異世界人というワードに、会場がざわめきを覚える。

 すると、



 「ふふふ、こんなところで会えるなんてね。ヒジリケン」



 観客席の誰もいなかった場所から、一度聞いたことのあるような声が聞こえた。



 「………お前、生きてたんだな。氷上 霧乃」



 氷上 霧乃。

 以前合宿でドラゴンの親玉を探すべくミレアと共に捜索していたときに遭遇した暗示を使う日本から来たルナラージャの異世界人。



 「名前、覚えておいてくれたのね」


 「生憎テメェには少しばかりしてやられたもんでね」



 こいつのせいで、見なくてもよかった俺の過去の一部をミレアに見せてしまった。

 こればかりは少ししてやられたと思っている。



 「あら、ツレないわね。ええ、生きていたわ。命は一度の失敗くらいじゃ私を殺したりはしない。私の能力は有能だもの」


 「確かに、テメェのクズい能力はそちらさんのグズみてェな使い方にぴったりの力だ。よかったな、才能を生かせる国に転移して」


 「ぐッ………」


 霧乃は不機嫌そうに俺を睨みつけた。

 だが、すぐに余裕の表情へ戻す。

 流石に1人というわけでもないらしい。



 「………………まぁいいわ。今回はあなたを殺しに来たんだもの。死人に口無し、は少し違うわね。まぁ要するに、喋られなくなる前にその減らず口をベラベラと回しておけと言うこと」



 霧乃が手をあげると、次々に敵勢力が姿を現し始めた。

 5人は三帝クラス。

 もう5人はそれ程では無いにせよ、観客に混じった生徒たちを萎縮させる威圧感を持っていた。



 「チッ………メンドクセー………」


 「この外にも仲間はいる。さて、あなたの性格や主義は予想だけど、大体聞いてるわ」



 先程律人が言っていたものだろう。

 遺憾だが、アレは認めざるを得ない。



 「ここまで見たらあなたにはわかるでしょう? この状況、絶体絶命よ?」



 「………………」




 ここで戦えば、恐らく一瞬で10人は殺せる。

 だが、向こうが特攻覚悟で暴れ回った瞬間、確実に数人死ぬ上に、そとで暴れられたら一般人は何人死ぬかわかったものでは無い。

 それに、まだ()がいない。



 「だから、こうしましょう?」


 「?」


 「取引する、というのは?」



 「!!」




 突如持ちかけられた取引。

 相手の企みは一体何なのか。

 俺はまだ、知らない。

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