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第470話


 「………へぇ」



 律人が思わず感嘆の声を洩らす。

 口元は薄っすらと笑みを浮かべていた。


 律人がゆっくりと口を開く


 「………ぼかぁね、リンフィアちゃん。君はこれを防げないと踏んでいたんだよね。でも、現実はどうだ」



 黒い煙が晴れていく。

 そこには、杖を砕いて作った雷魔法の盾を持つリンフィアの姿があった。


 リンフィアは、この杖を一度入学試験で使っているので、【マグネティクス】と相性がいいということをよく知っていた。



 「………危ない力、ですね」



 それを防いだリンフィアの手腕もなかなかの物だといえるだろう。

 よく瞬時に判断したものだ、と見ていた教師陣、それと一部の生徒は感心していた。

 マグネティクスは、色々なものを繋げれば繋げる程、攻守共に威力を増す。

 消費魔力は増えるが、この魔法は数少ない単純な方法で威力を変えられる魔法なのだ。



 「でも、武器は消えちゃったねぇ。武具用魔石は回収したみたいだけど、もう棒術は使えない。どうするつもりかな?」


 「確かに、手持ちの武器はこれだけ。なけなしの格闘術じゃ、ちょっとあなたには通じそうにないかなって思ってます。でも、私は1人じゃない」



 気づいただろうか。

 開幕からずっといなかった、本来リンフィアの隣に居るはずの者の事を。

 ずっと、魔力を試させていた。

 そしてリンフィアは、その使い魔の名を呼んだ。



 「準備は万端ですか? リル!!」


 「とっくに終わっている。待ちわびたぞ、お嬢!!」



 リルは、上空から律人を狙っていた。

 人型から、フェンリル形態へ移行する。

 その巨大な爪には、想像を絶する程の膨大な魔力を秘めていた。



 「決勝まで使うつもりはありませんでしたが、あなた方ならば話は別です。この前のあの盗賊達の虐殺………あんな事の元凶であるあなた達を、私は決して許さない!!」



 「主人の命だ。貴様には少しばかり死に体になってもらおうかッッ!!!」




 リルは空中で魔力をブースト。

 律人の方へ一気に飛んでいった。

 そして、




 「ハァアアアアアアアアッッッッッ!!!」




 それを一気に振り下ろした。

 凶暴なまでに巨大で、激しい魔力を纏った爪が、律人に触れた瞬間、




 ————————————オォォオオオン!!

 







 「………………………え?」

 



 声を洩らしたのは、リンフィアだった。

 

 爪が放ったその一撃。

 巨大な爆発と共に、無数の斬撃の集合体が敵を襲い、斬り裂く————————————筈だった。



 しかし、目の前に立つ巨大な向日葵が、攻撃を一気に飲み込んだのだった。



 「あまり巫女を舐めない方がいいよ。ぼかぁ特別性でね、この世界樹なんて神話っぽい名前も、神様から力を貰わなかったら得られなかった名前なんだよ。その世界樹が、あの程度の攻撃を飲み込めないと思ったかい? ああ、でもまぁ、そういいつつも2度は無理と思うけどね。だから訂正しよう。いい攻撃だったが、ぼくにゃぁ通じないさぁ」



 「………」



 リンフィアは俯く。

 そのまま、動く様子もなく、しばらくそのままでいると、律人の表情には分かりやすい落胆の色が見えた。


 「ふん………こうなったか。まぁ、仕方ないかぁ。とっておきを破っちゃったもん——————」



 ザワッ、と。

 何か本能に訴えかけるような感覚が、律人にはあった。

 そして理解する。



 「!!」



 リンフィアの眼は、まだ死んでいない。



 「態勢を整えます」



 リンフィアは、後ろに意識を向けたまま、律人から離れるように逃げていった。



 「あっはっはっは! いいね、そうこなくっちゃ!! ぼかぁ嬉しいよ!」



 そう言いつつ、律人は追ってくる様子はない。

 それなら好都合、回復をとるべくリンフィアはなるべく距離を取った。



 「お嬢、やつだが…………」


 「はい、多分追ってこないです。彼、一対一の状況を望んでいるみたいですし………………っ、!? リル!!」


 「皆まで言わず、とぉ………もッッ!!」



 リンフィアは大声で叫ぶと、リルも瞬時に反応する。

 リルのすぐ隣には敵が迫っていた。

 リルは間一髪で人型に戻り、攻撃を弾く。



 「フェンリルたるこの我に楯突く愚か者がッッ!!!」


 「おっと」



 向かって来ていたのは、面を付けた選手。

 大人というのはわかるが、声は魔法で変声されており、髪も長いことくらいしかわからなかった。



 「ふふふ、さすが伝説の神獣と呼ばれているだけはあるな」



 「なッ………………」




 

 リンフィアは、運の悪いことに、周囲の敵にも目をつけらていた。

 このお面の選手も同様にリンフィアを注目していた。

 そして今、そのお面が外れる。

 案の定の教師。

 しかも、よりによって彼女だった。

 今までは色々と考えないようにしていたが、いざ目の前にすると、そういうわけにも行かなかった。


 魔法の原点ともいえる魔族からすると、人間の魔法使いなんぞ取るに足らないだろう。

 だが、彼女は魔族ですら無視できないレベルに達している、数少ない魔法使い。

 魔道王とまで呼ばれた、真の求道者だった。

 



 「ははは、流石あのケンの仲間と言ったところか。いや、あった時からお前たち4人には何かを感じていた。これほどの成長速度、予想通り只人ではないな、リンフィア」


 「学院長、先生………………!!」



 


 ファリスは、年甲斐もない子供のような笑顔を浮かべてリンフィアの前に立ち塞がるのであった。

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