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第468話



 『観客の皆さん、大変ながらくお待たせいたしました。これより!! 魔獣演武祭第五種目、バトルロイヤル第一予選を行います!!』



 歓声が巻き起こる。

 連日行われていた競技で、大いに盛り上がりを見せたからだろう。

 マギアーナの住民をはじめ、わざわざやってきた観客たちの期待が大きい。



 「ふぅ………」



 武器の持ち込みは無し。

 アイテムを一つ持ち込む以外は、学院指定の武器を装備するほか無かった。


 リンフィアの手にあるのは、リーチが長めの丈夫そうな鉄の杖だった。



 「棒術習っておいて正解でしたね………」



 そう呟くリンフィアだが、今までは基本的に銃に戦っていたので、多少不安があった。

 それと同時に、これでよかったとも思っていた。

 これならみんな同条件だし、何より魔法を中心に戦える。

 グッと杖を握り込む。

 ケンから預かっていた修行メモと、毎日もらっているアドバイスで上達した魔法をここで披露するのだ。

 そして、優勝する。



 『それでは、選手入場!!』



 「!!」



 いよいよ始まる。

 リンフィアは軽く体を動かしながら、魔力を流していく。

 調子はいい。

 これどこまで通用するかはわからない。

 それでも全力で向かうだけだった。

 それに、最悪()()もある。

 いいところまでは行くだろう。



 「よしっ、頑張ろう………!」



 リンフィアはリングへ歩いていく。

 



 「「「わあああああああああああ!!!」」」




 「!!」



 突然の歓声に驚いてしまう。

 当然なのだが、やはり観客がたくさんいた。

 注目されていると思うと、少し緊張する。

 落ち着かないリンフィアは、少しだけ視線を泳がせた。

 すると、



 「………!」



 右上を見ると、ケンたちが座っていた。

 軽く手を振ると、ケンが振り返してくれたので、思わず笑みが溢れた。

 敵に手を振るなと頭を叩かれたりたたき返したりと楽しそうだった。

 あの合宿以来、より気になる様になっていた。

 何故かはわからない。

 でも、顔を見ると頑張ろうと思えたのだ。



 「えへへ………勝ってるところ見せたいなぁ」



 ここで自分の顔の締まりのなさに気がついたリンフィアは頬を叩いて気合を入れ直す。

 


 「よしッッ………!!」



 キッと目つきを鋭くし、口を結ぶ。

 今のうちに注意すべき敵を見定める。

 敵は特等クラス。

 そして、それ以外にも侮れなさそうな上等、下等がいくつかいた。


 あと、お面をつけた選手がいるが、何を考えているのかよくわからないので、とりあえずはスルー。


 それと、下級生や下等クラスの生徒は、多人数参加されていたので、意外とそこも注意だ。

 それを考えると、注意しなくていい敵が少ないので、困ると思いつつ、やる気も湧いていた。



 「あ………」



 真正面に、先程会話した少年、リヒトーが立っていた。

 会釈をされたので、表情が崩れない様に注意しつつ、会釈を返した。




 『それでは試合開始まで残り10秒! 9!8!7………』



 カウントが始まった。

 リンフィアはスッと意識を深く沈め、集中していく。

 間違いなく始めから仕掛けてくる生徒がいると予想し、強化魔法の準備。

 とりあえずは、無詠唱でも使えるトリオブーストから準備をした。



 『5!4!』



 リンフィアは、ふとリヒトーの方を向いた。

 気になった、とか警戒した、とかなんでもなく本当に気まぐれでだ。

 本当に偶然………何かを感じ取った。



 『3!2!』



 何か、何かがある。

 目を離してはいけない何かがあると確信した。

 これは、決していい予感ではない。

 何が嫌な感覚が全身を駆け巡った。

 


 『1————————————』



 そしてそれは、確信に変わる。



 「ヒヒ………………!!」


 「ッッッ………………………!!!」



 今、リンフィアは見た。

 リヒトーのあの笑み。

 今の笑みは完全に——————




 『0ッッ!!!!』




 ——————邪悪そのものだった。

 

 リンフィアは強化魔法を即行でかける。

 この時、リンフィアはあまりの焦燥で術式を計算するスピードが、一時的にだが各段に向上していたことに気がついていなかった。

 それ故に、




 ドゴォオオオオオオオン!!!!





 地面から迫る巨大植物を間一髪で回避した。



 「ッ………リヒトーさん、あなたは………」



 他にも数名の生徒が上に飛んで()()を回避していた。

 だが、大半の生徒が場外へと吹き飛ばされてしまっている。

 


 「………!! 来るッ!!」



 着地したリンフィアは直ぐに【グランドライズ】で盾を作りつつ攻撃を躱しながら、【ウィンドカッター】を向こうへ放つ。

 だが、それらはいとも簡単に弾かれてしまった。

 効かないとわかったリンフィアは、攻撃を一度ストップさせ、そのまま地面に手をついて、後方から飛んでくる攻撃を、地面から出現させた氷に巻き込んで凍らせながら、その氷を利用して前方からの攻撃を防ぎ、一時の時間を作る。


 そして、最初の修行の成果をここで発揮した。



 「『その肉体は鋼となり、神速を得る。人の限界を越え天上に至らん【カルテットブースト】』ッッ!」



 紅のオーラをリンフィアを包む。

 氷を自ら破壊しながら接近する。

 リンフィアは真正面から攻撃を弾き、【ブレイクサンダー】を連続で打ち込んだ。



 「やるねぇ、リンフィアちゃん」


 「!!」



 リヒトーが姿を見せる。

 植物を纏わせ、初対面の時とは全くの別人の様に歪んだ顔をしていた。



 「いやぁ、ぼかぁ嬉しいよ。強ければ強いほど倒し甲斐がある」


 「………その力、魔法じゃないですね」


 「あ、わかる? うん、そうだ。これは魔法じゃない」



 周囲では普通に戦いが行なわれている。

 どうやら誰も気づいていないらしい。


 「その顔立ち………貴方は、ニホンジンですか?」


 「お? 知ってる? 流石はヒジリケンのお気に入りだ」



 リヒトー………いや、律人はリンフィアに自己紹介をした。



 「改めてこんにちは。ぼかぁ、庭島 律人って言うんだ。よろ死くね!」



 リンフィアにとって、2度目の対異世界人戦が始まった。

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