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第461話


 「うぉおおお!? 何だこりゃ!?」



 大声を出す観客が1名。

 はっと気づいたその観客………マックは、咄嗟に口を押さえて、一瞬だけ申し訳なさそうにする。

 どうやら目立ってしまったらしく、周囲に人々の視線が集まる。


 するとマックがバレないように視線を周囲に向け、様子を伺う。

 注目が集まった事に気がつくと、ニヤリとほくそ笑んだ………………なんて事をする訳でもなく、ただ純粋に、単純に、聞きたいという欲求のためにその魔法具を使う。



 「おぉぉぉぉ………………」



 配慮しているが、その感嘆の声が周囲に漏れる。

 チラチラと近くの観客も気になりだしたらしい。

 マック本人もそうだが、何よりマックの持っている魔法具に、だ。

 すると、近くにいた奴の視線に気がついたマックは、ハッとした様子で己の本来の目的を思い出す。



 「あのー、試してみます? これ何人かでも使えるらしいんで」



 と言うと、近くで見ていた3人組がおずおずと近づいてきてアイテムを共有した。

 声こそ漏らさなかったが、非常に驚いている様子だった。



 この魔法具の効果、それは、俺が音魔法で発した特殊な音波をキャッチし、周囲によりアレンジのかかった音を流すと言うものだ。

 加えて、流れてしまっている音や、大き過ぎる音を調節し、ちょうどのめり込める程度にすると言う効果もある。



 「これは………!!」



 「凄いっしょ。良かったら買ってみません?3人なら一緒に使えると思うんで」



 そうマックが言うと、3人は魔法具を買って行った。

 すると、ダムが決壊した様に周囲がいきなり興味を示し始めた。

 どんどん買っていく客は増えていき、みるみるうちに売れて行った。



 

 ケンはリアクション芸人などとふざけて言っていたが、実際そのリアクションには効果があった。

 いや、より正確に言うなら、マックの行動ひとつひとつに小さな効果があったのだ。

 感化と呼ばれる特殊スキル。

 マックはそれを持っていた。

 これは周囲に己を溶け込ませ、感化させるスキルだ。

 思考を知らず知らずの間に固定化させてしまうこのスキルは正直かなり有用で恐ろしいものだろう。

 実際、光魔法闇魔法を駆使してスパイ活動なんかをやっていた。

 そこをファリスに拾われたわけだ。


 特に凄いのは、自然体で周囲を感化させるというところだろう。



 「へっへっへ。なかなか売れたな」



 マックは得意げな顔でどんどん魔法具を売っていくのであった。









———————————————————————————









 「………………………………」





 8分間の演奏の末、2曲目が終了する。

 反応は上々だった。

 終わった途端ワッと会場が沸いた。

 やはりこうやって正面から拍手されるのは悪くない。

 さて、ここらで一発変わり種を用意しよう。





 『さぁ、盛り上がってきたな。というわけで!というわけでもないが、ここで司会を交代だ!!』




 風魔法でぐるぐると竜巻を起こし、加えて煙を発生させる演出を見せた。

 俺は客が見えない中で、そいつと交代する。


 「登場演出覚えてるな?」


 「当然だ!」


 「んー」



 対極のような姉妹だが、こういう時はきっちりとこなしてくれる事はこの数ヶ月でよくわかった。



 「頼もしいな。じゃあ、任せたぜ」


 「任せておけ!!」


 「りょー」



 パン、とハイタッチをする。

 まぁ、基本こういうのは可愛い女の子と相場は決まっているらしいからな。




 『さぁさぁこいつは注目だ!! ステージに舞い降りるのは2人の女神。巨大な翼を持つ様に宙を舞う姉妹の流麗な舞をどうぞご覧あれ!!』




 これで演出に専念できる。

 俺はより入念に魔力を練った。

 集中。

 第一印象は大事だ。

 最初この2人にはキャピキャピしたアイドルっぽいショーをしてもらおうと思ったが、予定を変更して、厳かで美しく、それでいて熱くなる様なダンスをしてもらう事にした。

 曲もポップではなくバラード系だ。

 歌って踊るというアイドルの特性を持ちつつ、向こうではできない様なアクロバティックな動きを加え、気品は残す。



 グッと照明を押さえていく。

 竜巻は激しさを、荒々しさを増しそれは2つの大きな竜巻へと変貌する。

 そしてそれはやがて、大きな翼の様になった。




 「……………よし、ここだ——————」





 風魔法強制解除。

 光魔法、氷魔法を展開。

 翼を一瞬で形作り、光魔法でそれを美しく照らし、予めセットしていた展開術式を解放。

 



 荒れ狂う風を引き裂き、晴天の空から現れた比翼の女神。




 見る者を皆魅了し息をする事すら忘れさせた。

 なかなかいいコンセプトだと思う。

 一見相反するように見える姉妹だが、こうしてみるとなるほど、誰よりも姉妹らしい姉妹にも思える。

 



 「「「        」」」




 俺は翼を操作しながら、ゆっくりと2人を着地させた。

 端から散っていく翼が全て消えた瞬間、照明を一転させ、落ち着いた色にする、そこから2人の演技は始まった。

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