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第458話


 午後4時。

 すっかり夕方だ。

 会場の仮ステージでは、参加をする生徒が色々と練習や確認をしていた。

 後数時間で、ライブは始まる。

 それまでに、俺はしておくことがあった。



 「ここの術式は………いや、この方が光の当て方が………お、これだ」



 俺は、ライブ用のとある魔法術式の改良をしていた。

 少し特殊な魔法なので、微調整が必要なのだ。

 この学院ですら術者がおそらくファリスくらいしかいないレベルの魔法。

 完成後も、細かい作業であいつらの要望に応えるべく絶えず変更させていかなければならない。

 まぁ、我ながらこれはなかなかいい。

 流石は俺。


 俺は結構チマチマした作業が好きだ。

 モデルガンやジオラマ作りにハマっていた時期はもうそこらのプロ程度にはうまく作れていたと思う。

 暇つぶし、というのもあったが、こう言った作業は精神統一にちょうどいい。

 集中力が高められる感じが気にいってるのだ。


 そう、集中できる。


 例え頭に子鯨が乗っていようと。



 「………」



 例えよく見知ったガキンチョがこれでもかと言うほど顔を近づけて作業を見ていたとしても。



 「………」



 例え通っている学院の生徒5名ほどが俺を囲って見ていたとしても。



 「「「………」」」



 集中できる。

 そう集中、集中、集中………………




 「出来るかボケェええッッ!!!」

 



 俺の大声に全員ビクッと体を震わせた。

 何だその非難がましい目は。

 俺が悪いってか? 俺が悪いってか!!



 「暇人かテメェら!! 仕事しろや!! リフィ、ラビ、ルクス!! テメェらは特に何してんだよ!! クラス違ェだろがっ!!」


 「いやぁ、あんなまほうみたことないし、きになるだろ。な、リンフィアねえ」


 「うん。ケンくん、ラビちゃんの言う通り気になります。細かい術式を実体化させて手を加えてるって事くらいしかわからないですけど」


 「ヒジリ、一体それは何なんだ?」



 と、尋ねてくる3人。

 ギャラリーにはシャルティールやアルフィーナもいたが、こちらには事前に話していたので特に何も聞いてこなかった。

 だが、囲ってるのでこいつらも有罪だ。

 ギルティ。



 「こっちの集中乱しながら聞きたいことだけ聞きやがって。妨害か? 妨害なのか?」


 「じゅんすいにきょうみだぞししょう。それはワタシも教えてもらってない」


 「当たり前だ。こりゃお前らにはまだ早い。実力的にな」



 俺は掌で立体化した魔法術式を回しながらそう言った。

 言った通り、これはかなり難解故、こいつらではまだ絶対に使いこなせないと判断し、旅の時も今もまだ教えていないのだ。



 「それで、それは何なんだ?」



 流………いや、ルクスは俺にそう尋ねた。

 面倒だが、説明をしよう



 「展開術式だ」



 「「「!!」」」



 シャルティール、アルフィーナ、リンフィアの3人が反応した。

 



 「聞いたことがあります………確か風景を具象化する魔法………素材と複数の魔法を組み合わせて作る………でしたよね?」


 「よく知ってんなリフィ。そうだ。何時ぞや手に入れた超大量の鉄やら木材やらで会場を組み立て。演出用に作った特殊な形状の魔法。音魔法の音響操作。これらの組み合わせでステージを作ってんだ。いやー、なかなか大変な作業だったぜ………」



 ふーっと汗を拭う様な仕草をする。

 丁度作業が終わった。

 特に変更点がない限りこれで完成だ。



 「ケンくんそれってさ………古代魔法、じゃなかった………?」


 「つっても、これはそこそこ近代だぞ?」


 「いやいやいや!! それでもじゃん!! 僕今までそんなの使えるなんて聞いてないよ!?」


 「隠してたからな。言っとくが、俺がこんなあけすけにバラすのは、お前らを信頼したからだぞ」



 シャルティールは口をパクパクさせている。

 すると、今度はアルフィーナが、



 「つまり、最初は信頼していなかったという事で良いか?」


 「そりゃお互い様だ。何かしらツンツンしてただろ。お前もだ、アルフィーナ」


 「う………」



 あまり知られて無いが、こいつは一度俺にケンカを売ってきている。

 しかも結構最近だ。


 こいつだけじゃない。

 大体みんな反発やそれ以外の反応もあった。

 でも、それぞれと正面から関わって、思い出もできた。

 そして、今回のこの魔獣演舞祭。

 そこでみんなが俺を信頼してくれたから、俺も信頼しようと思えたのだ。



 「あのケンカでお前を信頼した。シャルもだ。お互いに迷惑かけた記憶あるだろう」


 「う………」




 ここに来て結構色々あった。

 なかなかに濃い時間を過ごしたと思う。

 だから俺は、遠慮なくこう言った。




 「で、文句はあるか? 2人とも」




 すると2人は、はぁ〜〜、と大きくため息をついた。

 そして、こう言ったのだ。。



 「「ない」」



 はっきりとそう断言した。



 本心からそう言ってくれていると、何となくわかる。

 向こうではろくにこう言った仲間が出来なかったから、何となくこそばゆい感じがする。

 そして、何よりも嬉しかった。


 


 すると、見ていたリンフィアが俺にこう聞いてくる。



 「もういいんですか?」



 リンフィアはまっすぐ俺の目を見てそう言った。

 言いたいことはわかる。

 だが、



 「ああ。そろそろいいだろ」



 こいつらなら、俺を受け入れてくれると、 確信できたのだ。



 「そうですか………じゃあ、いいと思います」



 リンフィアはニコッと笑ってそう言った。

 





 「おーい、ケン!! 少しいいか!! また位置調整だ!!」


 「ゲッ、またかよ!?」



 ユサに呼ばれたので俺は向こうへ渋々歩いて行った。

 どうやらこいつらも最終調整らしく、いよいよ本番が近づいているのがありありとわかる雰囲気なっていた。



 

 さぁ、4日目。

 ここらででっかく突き放すとしようか。


 

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