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第456話


 「それで、私はどうしたらいい?」



 確かに。

 ちょっとばかり扱いに困る。

 メメは向こうからすれば死んだはずの人間なので、そう思わせておくというのがベストなのだ。

 だが、条件次第ではそうもいかない。



 「そうだな………なぁ、ここって固有スキルで作った空間なのか? それとも固有スキルで何処かに繋げた空間なのか?」



 ここが作られた空間なら監視されていた可能性は高い。

 。



 「うーん………多分繋げた空間だった気がする。マギアーナ郊外に部屋を作ってるのをみたの」



 なるほど。

 何時ぞや俺やダグラスを閉じ込めたような空間の固有スキルのような能力ではない、と。


 だったらおそらく大丈夫だ。

 美咲の千里眼みたいに、何処かを見るというスキルは、長時間の使用は出来ない。

 もし向こうにそう言ったスキル持ちがいたとしても、それは使わず、おそらく出てきたところを直接誰かに監視させる筈だ。

 それならば、監視はさっきの奴だ。

 堂々と監視をしているだろう。


 ならば方法次第でいくらでも隠せる。

 と言うわけで。



 「よし。ちょいとばかし芝居を打つか」


 「?」












———————————————————————————

 












 「よう」



 俺は向こうを向いていたメメの偽物に声をかけた。



 「あ、ケンくん。無事………って言うか無傷だねぇ。えふふふ。流石に強いのね」



 偽物だとわかって会話すると、なるほど。

 これはかなりゾッとしないな。

 似てる似てない何てレベルじゃないぞ。

 姿と声はもちろん、口調や仕草、ちょっとした手癖や目線の向け方までそっくりそのままコピーしている。


 だが、今はそんなことより。



 「お前、何したのか分かってんのか? お? 偽物ちゃんよ」



 「!!」



 一瞬目を見開く。

 すると、



 「あー………………あはははは!!」


 「………」



 芝居をやめ、完全に素になった。

 これはこれでなかなか気持ちの悪い感じだ。



 「そっ、か。確か顔とかついてたんだよね。()()



 あれという言い方に少しカチンと来たが、今は抑えよう。

 


 「うん。るーはメメちゃんじゃない。これはるーの固有スキルだよ。てか、最初からわかってたよね?」


 「ああ。何となくな」


 「おっかしーな。完璧だと思ったんだけどなぁ」


 「お前、俺が天崎 命はいるかって言ったら天崎さん?て疑問形だったろ。やつが、俺が呼んでるだろうから、って言ったんなら、なんかおかしいなって思ってな。いろいろ注意深く探ってたら、なんとなくそう思ったんだよ」


 「へぇ、君ヤンキーっぽいクセして結構頭いいんだ。そういうギャップ、るーは嫌いじゃないよ」



 相変わらず軽口を吐く偽物。

 そんな偽物に俺は一つ質問した。



 「で、なんでそんな嘘ついたんだ?」


 「それは普通にいるって言った方が行くかなって思っただけ」


 「じゃあ、質問を変える。奴は今どこだ?」


 「さぁ? あの子結構自由気ままだからね。キチッとしてる時は命の神様から指令が降った時くらいかな。信心深いしね」



 チッ、俺は舌打ちを打った。

 ろくな情報は得られなかった。

 こいつは多分嘘はついていないだろう。

 こいつの嘘はだいぶわかりにくいが、これに関しては多分そうだと思う。



 「なら、最後に一個」


 「?」



 「お前、このままでいいのか?」




 「——————」






 ここでようやく、表情を崩した。

 何か思うところがあるらしい。

 しかし、直ぐに表情を戻して、こいつはこう言った。



 「いいんだよ。これで」



 偽物はそう言うと、踵を返して立ち去ろうとした。



 「どこ行くんだよ」


 「逃げるよ。どうせ追ってこないでしょ?」


 「お前が何も俺らに危害を加えん限りな」


 「じゃあ、逃げるよ」



 偽物は、そのまま何処かへと消えていった。

 あの表情は一体なんだったのだろうか。

 いや………そんなことより。










———————————————————————————









 「終わったぞ、暗木」


 「終わった?」



 俺たちが話していた場所は裏路地だ。

 その路地の壁になっていた建物に、メメは避難していた。

 というより、俺があいつに声をかける前に上にぶん投げたんだけどな。



 「あいつ、結局何者だったんだ?」


 「るーちゃんだよ」


 「るーちゃん?」



 「楠 留華————————————聞いたことあるんじゃない?」

 


 「くす、のき………って………まさか」



 メメはコクリとうなづいた。

 


 「そう。あの子は、私達を裏切った、楠 流くんの実の姉だよ」


 

 俺は首に手を当て、さっきの偽物の事を思い出す。

 確かに、胡散臭いのは一緒だが、直接顔を見れなかった。

 やはり似ているのだろうか。



 「るーちゃんなんて愛称つけてるって事は、そこそこ仲はいいのか?」


 「うん。結構話したりするんだぁ。私が男の子をストーキングしたり縛ったりする話を楽しそうに聞いてくれる唯一の友達よ。えふふふ」



 その設定マジだったのか。

 というか、そんな話をする仲だったんだな。

 なら尚更腹が立つ。



 「そんな友達が、バケモンにされて黙って観てんのかよ………」



 「それは仕方ないよ。私たちは逆らえない。命ちゃんには絶対にね」



 そう言ったメメの表情には、天崎に対する畏怖と、自分に対する嫌悪が入り混ざっていた。



 「………深くは聞かねーでおく。とりあえず、お前は休め。適当な宿見繕う」


 「お祭りシーズン中に空きはあるかなぁ?」


 「あ、確かに。まぁなんとかなるだろ」






 この後、何とか宿の空きを見つけて、暫く篭ってもらう事にした。

 もうすっかり夕方だ。

 さて、持ち場に戻るとしよう。


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