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第452話



 「………………」




 ………暗い。

 ここは何処?

 



 彼女は目を覚ました。

 昼のことだった。



 「………………!」



 体をよじり、動こうとするが、何かに拘束されて、動けない。

 動けば動くほど、ジャラジャラと喧しい鎖の音が聞こえてくる。



 「………………——————、!?」



 さらに、彼女は異変に気付いた。

 声が出ないのだ。

 口は塞がれている。

 しかし、それは原因ではない。

 喉にいくら力を込めても、腹から声を出そうとしても、微かな音すら出ない。



 ボヤけた頭にがだんだんと冴えていき、彼女は恐怖を募らせていく。

 そして、





 「——————、!?」





 痛み。

 貫くような痛みが全身を伝う。

 その瞬間、彼女は完全に目を覚ました。

 それ故に、思い出す。




 そうだ………私………逃げないと!!




 彼女は、いきなり激しく動き始めた。

 逃げんださんと暴れ回るが、鎖と痛みが邪魔をして、全く動けない。

 魔力の方もダメだ。

 この感じでは、おそらく使った瞬間魔力欠乏症になると彼女自身自覚している。


 今彼女の唯一の武器となりうるのは、固有スキルのみ——————







 しかし、









 「暴れても無意味でござるよ」




 「!!」




 彼女は突如として現れた少女、天崎 命を目にした瞬間、恐怖と絶望で表情を歪ませた。


 


 「おやおや、それは仮にも仲間だった者に向ける視線ではあらぬでござろうに………」



 ギリっと奥歯を軋ませる。

 どの口が言っているのだと叫びたい。

 しかし、その声すら今は出せないのだ。



 「拙者としても無念にござるよ。かつての友人を、化け物にするのは」



 「………………!!」




 焦りと恐怖。

 頭の中はそれでいっぱいだった。

 彼女のやり方は幾度となく見てきた。

 それにまさか、自分がここまでされるなんて思っていなかったのだ。

 たった、たった一度の失敗で、化け物にされるなんて、不条理にも程がある。




 「本当に、無念だ——————メメ殿」



 「   」




 この目を、知っている。

 心のそこから哀れむ目。

 それなのに、その目のまま躊躇いなく非道なことを行う。

 正に狂気だ。

 とてもまともとは思えない。




 ああ、ダメだ。

 私は死ぬ。

 死ぬ。

 死ぬ。

 死——————






 そして、暗木 メメの意識は何処かへと消えてなくなった。












———————————————————————————














 「………………」




 「………………」






 俺と暗木は、無言のまましばらく歩き回った。

 一見、なんの法則性もないように見える。

 だがおそらくこれは………



 「合図はまだ終わンねーのか?」


 「えふふふ。気付いてたんだ。もうちょっと待ってね。後何回か曲がったら出てくるから」



 そう、これは合図だ。

 決められたルートを通った者をなんらかの方法で識別し、それを拠点の鍵にしているのだろう。





 「あ、着いた」



 暗木がそう言った瞬間、壁から暗い穴が開いた。

 空間系統の固有スキルという訳らしい。

 すると、



 「罠だけど入る?」


 と、遂にはっきりとバラされた。

 そうだろうとは思ったが、ここまで来るといっそ清々しい。


 「やっぱり? まぁ、入るけどな」


 「えふふふ、勇ましい。やっぱりヤンキー君ね。惚れちゃいそう」


 「言ってろ」

 



 よくわからん奴だ。

 掴み所が無いというか、のらりくらりとしているというか。

 そんなことを思いながら俺は穴に手をかけた。

 ここで、ん? と違和感を覚える。

 



 「………………じゃあ、いってらっしゃい」



 どうやら、こいつは入らないらしい。



 「俺だけで入る感じか?」


 「うん。私、巻き込まれて死ぬのは嫌だしねぇ。えふふふ」


 「ふーん、そうか。まぁいいけどよ。そんじゃな。一応言っておくが、変に俺の仲間に手ェ出すんなら多分俺平気で殺すからな」




 俺はポンと穴の中へと飛び込んだ。

 特に躊躇いはない。

 どうせ罠だ。

 出ようと思えばどうにでもなると俺が思っている。

 



 しかし、穴に入った瞬間一つだけ、気になることというか、引っかかるところがあったのを思い出した。

 





 あ、これ言った方が良かったか?

 いや、別にいいか。

 確証ないし、どうせはっきりとは答えないだろ。

 

 お前………………なんで変装なんかしてるんだ、なんて聞いてもな。










————————












 「………バレてたかな?」



 暗木メメ………いや、その偽物はそう言った。

 本物が死んだ事はケンは知らないはずなのに、正体を疑われている気がしてならなかったのだ。



 「バレたのなら特異点って凄いなぁってなるなぁ。るーの変装って姿から何から全て模倣するのに。身も知らないメメちゃんの変装見破るなんて」




 少女は小さくため息をついて上を見上げた。

 模倣していた少女のことを思い出す。

 ストーキングする程の極度のメンヘラ体質だった暗木だったが、少女にとっては友人だった。

 だから、




 「るーはあなたが怖いよ、命ちゃん」




 少女は、楠 留華は、そう呟いて何処かへと消えていった。

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