表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
450/1486

第450話


 ゲリラライブを具体的にどこで行うのかと言うと、各地に点在する俺たちのクラスの出店付近にて行う予定だ。


 知った客ばかりと言うデメリットもあるが、それ以上に、今回取った場所は集客という点で大きな利点があるため、ここで行うにあたってはメリットの方が大きいのだ。

 

 つまり、かなり多くの人目には触れられる。





 「んじゃ、それぞれ指示した通りにやれ。興味を引くように、かつ中途半端で落胆させるんじゃなく、ある程度、客どもを満足させて、もう一度聴きたい、見たいと思わせろ」



 「「「おお!!」」」











———————————————————————————












 「ま、俺はここだろうな」



 「うぅ………き、緊張するよぅ………」



 俺はドレイルを連れてレストランの前に立った。

 いい時間帯だ。

 ちょうど混む時間で、ドレイルを見知った客がよくここを通る筈だ。

 まずはこいつらに“客引き”をやってもらおう。




 「見物客、野次馬ってのは伝染するモンだ。だからまずは“種火”を作る必要がある。見知った客。こいつらは種火だ」



 「た、種火………………」



 「まぁ見てな」





 俺はアイテムボックスから魔法具に改造した特殊なギターを取り出した。

 造りは複雑で、音階意外にも、流した魔力次第ではギターでは出せない音も出せる。


 それでは、始めるとしよう。









 「————————————!!!!」










 「「「!!!」」」


 

 鳴らす、鳴らす、鳴らす。

 聴き慣れないギター音に、予想以上の人が反応する。

 加速。

 更に加速し、加えて音を一種類追加。

 勢いというのは人の心に大きな波を生む。

 まだだ。

 まだ足りない。



 俺は更に一種類、また一種類と加え、一つのギターに、まるで一つのバンドが出来ているような異様な光景を生み出した。

 更に人だかりが増える。



 よし………



 ここからは動きを加え、派手なアクションを見せる。

 

 いいぞ、盛り上がってきた。



 こういう“魅せる技”というものは、本当に人を惹きつける。

 同じくらいのステータスがあっても、これは経験が無ければ生み出せない動き。

 自分ではできない動きというのは、人にとって興味の対象となるのだ。

 そして、




 「………………………っと」

 



 一通りの演奏を終え、周囲の見物客達は俺に雨のような歓声と拍手を送ってくれた。


 まぁ、客引きだがこれはこれで悪くねー気分だ。

 向こうにいた頃は、ギターが弾けても披露する機会がなかったからな。



 「さてと………準備はいいか? ドレイル」



 「う、うん!」



 問題は………無さそうだ。

 それじゃあ客引き本番、始めようか。




 「おい、テメーらァア!!」




 「「「!!」」」




 「“続き”が聴きたくねェか?」




 そう呼びかけると、群衆から凄まじい歓声が弾丸のように飛んできた。




 「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!」」」







 「っ………!!」



 ゾクゾクと体を震わせるドレイル。

 人前で歌うことのなかった彼女が初めて覚えた“武者震い” というやつであった。





 「今度は歌詞つきだ。行くぜ?」




 俺はドレイルと目を合わせた。

 ドレイルは、心なしかワクワクした様子で、コクリとうなづいた。

 




 「ふぅ………………」



 目を閉じ、一呼吸。

 そして、








 「スゥ………ッ———————————————」










 「「「!!!」」」



 場にいた全員が、その歌声に聞き惚れた。

 俺の時とは対極的な反応。


 静


 アップテンポな演奏で盛り上がり、騒ぎ回っていた俺の時とは違い、逆にこちらでは誰もが歌を聞き、一切の音が消えた。


 


 だが、それでも流石に外部から音は漏れる。

 故にちょっとしたズルを行なっている。


 そう、音魔法のミュートエリアだ。


 外部の音を消し、ドレイルの歌と俺の演奏に身が聞こえるようにしている。






 そして、一曲歌終えた。







 「フゥ………………あ、ありがとう、ございます、ました」




 ペコリとドレイルがお辞儀をすると、一気に歓声が湧いた。





 「スッッゲエエエエエエエ!!!」



 「何だ今の!? めちゃくちゃ感動したんだけど!?」



 「声綺麗………」



 「もっと聞きたい!!」






 大成功だ。

 客引きはかなり上手く行ったと思われる。

 



 「キャラじゃねーが、これもパフォーマンスだ」



 俺はパチンと指を鳴らした。

 すると、あらかじめ仕掛けていた魔法具が作動し、大量のビラをばら撒いた。


 そして、俺は宣伝した。




 「ライブ、というモノをあんた達はしってるか? まぁ、知らないよな。平たく言や、こいつレベルの歌い手や楽士が集まって演奏会を行うってことだ………場所、日時は紙にある通りだ!! もっといい演奏、歌、踊り、そういうもんが見たい連中は見なきゃ損だぜ? この機を逃せば二度と見れねェ!! 何人でも連れてこい!! 人数が増えれば増えるほど、イイモン見せて聞かせてやる!!」



 「よ、よろしくお願いします!!」




 さァ、どうなるか。

 本番が楽しみだ。












———————————————————————————













 「………」


 

 一人の少女がビラを拾う。

 それを見た少女は、故郷のことを少し思い出した。

 でどころはどこかと当たるを見回す。


 いた。


 金髪の少年、派手な頭の少女がこれをばら撒いたらしい。

 なるほど。

 なるほどなるほど。






 「————————————見・つ・け・た」





 少女はニィっと顔を歪ませた。

 二つ結びの黒髪の少女。


 日本人の少女はウネウネと動く何かを手に握りしめ、ケンを見つめていた。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ