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第45話


 「部屋も分けたことだし、どうすっかな」


 ニールは宿に戻るや否や、俺とリンフィアの部屋を分けた。

 まあ当然っちゃ当然だが、その二人部屋にちゃっかり自分が入ってるあたり大好きかよって思ってしまう。


 一人でゆったりするのは数日ぶりだ。

 よく考えたらラクルから出て四六時中一緒にいた気がする。

 

 「暇だ。あー暇暇。娯楽がない」


 俺は徐に壁に貼ってあるチラシを見た。

 そこには、


 「………ん?」


 要約すると、勇者が召喚されたということが書いてあった。

 写真も貼ってある。


 「ははっ、あいつらも有名人か」


 写真に写っていたのは蓮と琴葉だった。

 蓮は落ち着いた感じで、琴葉は元気いっぱいな感じで笑っている。


 「元気そうで何よりだ」


 感じることがあった俺はゆっくりと立ち上がる。


 「俺も頑張んねーとな。特に目標は無いけど」


 明日からクエストを受ける。

 リンフィアが戦いに慣れるまでは、Gランクのクエストを受けるつもりだが、ある程度なれたら一気にDランクを受けようと思っている。


 「アイテムを揃えておくか」


 






———————————————————————————







 と言うわけで、今道具屋にいる。

 こっちでも値切ろうと思ったが、もとが安かったので、そのままの価格で買った。


 「いやー、流石商業都市。安いとこはバカ安いな。接客も丁寧だし、あのボッタクリに教えてやりたいぜ」


 ボッタクリとは、ラクルの道具屋の事だ。

 値段が高い上、ちょっとした狼藉を働きやがったため脅して値切ったあの道具屋だ。


 「食いもんも安かったし、久々になんか作ろうかねぇ。作っときゃアイテムボックスで保存できるし。んじゃ帰り——————待てよ。せっかく出たんだし。やっぱ散歩しよう」


 ついでに街をぶらつくことにした。


 よく考えれば最初に散歩した時はニールの事で集中出来ていなかった。

 今度こそまともにぶらぶらしたい。

 





———————————————————————————





 「ん? 魔法具屋か?」


 俺はなんとなく目に入った魔法具屋に入った。



 「うーわ、暗いな。やってんのか? いや、人はいるか」


 「なんだい、つまんないね。驚かそうと思ったのに。ひっひっひ」


 店主はこの婆さんの様だ。

 意図的に気配を遮断できている。

 若い頃は相当強かったのだろう。


 「いやー、大した気配遮断だな、ばーさん。殆どの客は驚かせられるんじゃねーの?」


 「当たり前さね。あたしゃ数十年隠密をやってきたからね」


 隠密、忍者か?

 いや、おそらくスパイか何かだろう。


 「そして数十年生きてきた経験があっても、あんたみたいに底なしは見たことがないね。バケモンかい?」


 失礼な婆さんだ。


 「ばーさん、バケモンは言い過ぎだろ」


 「ひっひっひ、これも何かの縁だ。一つ忠告してやろう」


 不思議な雰囲気の婆さん。

 こんなセリフを吐かれると基本的に外れることのない予言を言われる。


 「衝突物に気をつけろ。ひっひっひ」






———————————————————————————








 俺は魔法具屋を後にした。


 「妖怪ババァめ。フラグ立てンなよ」


 とりあえず衝突物に気をつけ——————


 「うおっ!」


 

 後ろから何かがぶつかった。

 結構な衝撃。

 人だ。

 この世界では珍しい黒髪の女。

 俺と同い年くらいか?


 「あ?」


 予言通り、衝突物が来た。

 フラグ完全に回収された。

 早いなー



 女は頭を抑えている。

 頭からと言うことは下を向いて走っていた様だ。

 まあ、強くは言わないでおこう。


 「す、すいま……せ………ん?」


 「おー、大丈夫か………………ん? お前——————」



 見覚えのある少女。

 俺はこいつを知っている。

 名前は確か、


 「寺島か?」

 

 「ひ、聖くん」


 寺島 美咲。


 確か俺のことをめちゃくちゃ嫌ってた様な、いや、ビビってた様な気がする


 「何してんだ? こんなとこで」


 「あ、あの………」


 やはり怯えている様子。

 俺がというより多分不良嫌いなのだろう。


 「ほら、手」


 とりあえず立ち上がらせよう。


 「え?」


 「何してんだ。お前、確か目立つのは嫌いだったよな。へたり込んでないで立った方がいいぜ」


 「!」


 美咲は俺の手を掴んで立ち上がった。


 「お前………泣いてんじゃねーか。何があった?」


 「うっ………うう」


 というと突然ボロボロ泣き出してしまった。

 

 「おおお、ちょ………それはマズい。話は聞いてやるから。ついてこい」


 俺は美咲の手を引いて近くの飲食店に入った。







———————————————————————————







 「落ち着いたかよ」


 「うん」


 「それで、何があったんだ?」


 俺は寺島に尋ねた。


 「えっと、その前に聞いてもいいかな?」


 「ん? なんだ?」


 なんでここにいるのか? とかか? だとしたらなんと言えば良いのやら。


 「聖くんって、不良なの?」


 予想外の質問。

 なぜそんな質問を。

 一応答えるけど、


 「まあ、定義的には不良に分類されるだろうな」


 「そう………それじゃあ——————」



 俺は寺島から色々聞いた。

 俺のことは琴葉から聞いたという事や、基本自分から喧嘩はふっかけない事など色々暴露されていたらしい。

 ちくしょう、琴葉め。


 「これって本当?」


 「ああ、その通りだ。ちくしょうめ。アイツ言いふらしてないよな………」


 寺島は黙り込んだ。

 まあ、数回やった血祭りはドン引かれるだろう。


 「そっか………」


 「もういいよな?」


 「え? あ、うん」


 「それじゃあ俺が質問する。何があったんだ?」


 「えっと、実は………」



 俺は、書状のことと、裏路地で溜まってる不良のことも聞いた。


 「なるほどな。取られちまったか」


 「うん、私がぼーっとしてたから………」


 それは、胸糞悪いな。


 「………行くぞ」


 「えっ、どこに?」


 「決まってんだろ。取り返すぞ。その書状」

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