第447話
40秒ある。
だが、本命の攻撃に使う時間はおそらく最後の10秒だけだ。
準備を整える必要がある。
「もっとだ………手数、手数がいる………アイツが攻撃に全神経を注げるように、親父さんに大きな隙を作るための………」
ガリウスは氷の鏡に閉じ込められているガイウスの方へ向かう。
頭上だ。
落下と、炎の加速を利用して突っ込み、ひたすらに攻め続ける。
「ズァアアアアアアアアッッッ!!!」
氷が割れる。
ガリウスは手甲剣を振り下ろした。
しかし、ガイウスはガリウスの気配を感じ取っていたのか、惑わされずに上からの攻撃を防ぐ。
すると、
「!!」
ウォルスの魔法がガイウスの死角から放たれる。
視覚共有のなせる技だ。
背中を逸らしてなんとか回避するガイウス。
惜しい。
今まではこうならなかった。
ガイウスも確かに疲弊していたのだ。
「ハッッ!! へばってんなよ親父ィィイ!!!!」
「小癪な………………!!」
ガリウスはウォルスと一瞬目を合わせる。
ウォルスは軽くジェスチャーをして、この先の作戦を伝える。
ガリウスは、次にウォルスが何をするのか、次に自分がどう動くべきか理解した。
「行くぜッッ!!」
炎で勢いをつけ、ガイウスを押し飛ばす。
目的は吹き飛ばす事だ。
ガリウスはただ遠くへ行くようにガイウスを押し出した。
「ぐッ………ゥウうう………!!」
50m程押し出された所で踏ん張って押し止まる。
今度は逆に、大きな隙の出来ているガリウスを蹴って吹き飛ばし返した。
「ガッッ!!………ッッッッッ!!」
クルッと回転し、着地、減速。
グッと足に力を貯める。
一方で、
「!!」
ガリウスが飛ばされるギリギリのタイミングで降ってきた水の槍。
ガイウスは後退しつつ魔力をため、ガリウスの攻撃に備える。
すると、
「熱ッッ………!?」
魔法攻撃の水は熱湯だった。
薄い湯気がどんどん立ち込める。
思わず目を閉じそうになるガイウス。
だが、隙をつくるわけにもいかない。
今まさに迫ってくるガリウスを見逃さないため、ガイウスはシッカリと目を開けていた。
そう、それがウォルスの狙い。
ちゃんと見ていなければ、効果はない。
「吹ッッッッッ飛べやァアアアアアアアアッッ!!」
見逃さない。
ガイウスはためた魔力で攻撃を強化。
ここで打つ。
「終わりだ」
炎を纏った一撃がガリウスを——————
「成功だ。やれ、ガリウス」
————————————仕留める事はなかった。
「!?」
空振り。
これは、ケンがウォルスに教えた複合魔法。
水炎複合魔法【ミラージュランス】
超高温の水の槍と、そこから発生する湯気から作り出す蜃気楼で相手の目を眩ませるという二段構え。
「ズァアアアアアアアアッッッ!!」
ガイウスの腹部に重たい一撃。
ガリウスはガイウスを先程よりもさらに遠くへ吹き飛ばした。
「ぐッッッッッォオオオオオオオオ!!!!」
吹き飛ばされたガイウスを確認するウォルス。
ここだ。
ついに目的の場所まで連れて来させた。
だが、もう本当に限界だ。
この魔法を作動して、勝てなければ負け。
ウォルスは、最後の一撃の全てを込めた。
残り、10秒
「これで終わりだ!!! 勝てッッガリウス!!!」
ウォルスは地面に杖を突き立て、残る魔力をありったけ注いだ。
そして、
「な………に………………!?」
地面から次々に飛び出す魔法トラップ。
これは、ウォルスが最初から設置し続けてようやく発動した罠だ。
今回の戦いに消費した魔力の30%はここで消費されていた。
なかなか居ないだろう。
それほど膨大な力をたった一瞬のために使う者など。
増してや、ウォルスレベルはそう居ない筈だ。
相当の数の魔法がガイウスを襲う。
「なんッッッ………というッッ!!」
少しずつ、だが確実に、その罠はガイウスから余裕を奪っていった。
そして、ついに一瞬だが、ガリウスから完全に意識が剥がされた。
ガリウスは、そこを逃さない。
「い………まだ………ガリ、ウス………」
ここだという瞬間。
ここならば勝てるという瞬間。
それは間違いなく、ここだった。
ガリウスは手甲剣の紋章に根こそぎ魔力を注いだ。
手甲剣の鋒に超高密度の炎の魔力が集まる。
ついに、決着。
最後の一撃が放たれる。
「くッッ………たばれェェェエエエエエエエエッッッッッ!!!」
手甲剣を振る。
鋒から巨大な炎の斬撃が生成され、それはガイウスの所へ飛んで行った。
逆を向いている。
罠の対処で精一杯だったガイウスはそれを防御できず、刃が接触。
爆発。
炎上。
凄まじい炎が延々と燃え盛る。
荒れ狂う爆風が草木を激しく揺らす。
これが、ガリウスとウォルスの最後の一撃だった。
その場には、巨大な黒煙が立ち込めている。
映像魔法具にも何も写っていない事だろう。
何にせよここで決まる。
全ての魔力を使い果たしたガリウスとウォルスか、はたまた2人の全身全霊の一撃を喰らったガイウスか。
この黒い煙が晴れた時、まだ立っている事ができた者が——————勝者となる。




