第442話
『匿名者からの希望により、解説ではなく映像をお流しする事になった。いやはや便利な魔法具が…………オホン、失礼。視聴をする者は今すぐ広場に集合だ』
俺は、フェルナンキアで手に入れた映像魔法具を貸し出して、中継映像を流せるようにした。
あれを真似て作った魔法具を飛行型の使い魔にくくり付け、こちらで出力すると言った形式だ。
「通信機は音だけだったからな。なかなか便利じゃないか。これはどこで拾ったんだ?」
ファリスがそう尋ねたので、
「フェルナンキアの闇市だ。あそこはなかなか掘り出しモンが多いぞ」
「ほう、では今度行ってみよう」
またこいつはミレアに怒られたいのだろうか。
まあいい。
さて、ガリウスとウォルスだが、
「お、近道選んだか。魔力消費を抑えるなら、短いこっちだな」
今まさに、崖から飛び降りていた。
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「レッド、いったん引っ込め」
飛んだ瞬間、ガリウスはレッドの現界を解除して手もとに引っ込めた。
「的は小さい方がいいだろ?」
「その通り」
結構勢いをつけて飛んでいる。
下には脱落者が大量にいるとはいえ、上位クラスは間違いなくここを通過するだろう。
ならば、万が一ガイウスへつながるトンネルが奪われないように急がなければならない。
「さっさと終わらせてやる」
ガリウスはそう息巻いていた。
そしてその瞬間、
「!!」
宙を舞っていたモンスターが標準をガリウス達に定めた。
「来たぜ」
「行くぞ」
防御魔法を展開。
なるべく効率よく自分を守るようにサイズを絞った。
密度を高くして、防御力を高めなければならないのだ。
「ヴヴヴヴヴ!!!」
ガリウス達に向かってくる蜂のモンスター、バーサークビー。
凶暴なモンスターの針が一直線にガリウス達に向き、飛び出してきた。
「っ!!」
引き付けて、ギリギリの位置で横に魔法を射出。
その勢いを利用して回転しながら針を避けた。
するとさらに、
下方から魔法が飛んできた。
「最低限は仕方ないか………」
ウォルスはグッと体の前で手を組み、防御魔法を腕の前に発動させた。
「まずは真ん中まで突っ込むぞ」
「あ? どうする気だ?」
「時間がないからとりあえず突っ込むぞ」
「チッ、しゃァねぇなッッ!!」
ガリウス達はさらに加速して一気に中央まで移動した。
「ぐ、ぅ、ォオオオオオオオオ!!!」
体に数発の魔法を受けるも耐えて一気に中央まで来た。
そして、
「フラッシュだ、ガリウス」
「! なるほどね」
フラッシュ。
そう、目眩しだ。
「喰らえや!!!」
光五級魔法・フラッシュ
強烈な光が周囲を覆った。
「くッ、目眩しかッッ!!」
「だがその手には乗らんぞ!!」
対光魔法には闇魔法が使われる。
フラッシュの場合はブラインドを使って相殺する。
向こうはガリウス達の目を塞ぐためか、かなり大人数でブラインド展開した。
そう、これは定石だ。
目潰し返しはよくやる戦法である。
故に、これは失敗だった。
ウォルスは待っていたと言わんばかりに詠唱を開始した。
「『其は影を縫い、結ぶ者【パッチシャドウ】』」
闇三級魔法【パッチシャドウ】
闇魔法を縫い付け、固定する魔法。
光魔法を保持しつつ、向こうの魔法を邪魔をした。
「後ろの蜂はァ!?」
「無視だ!!」
「おっしゃッッ!!」
ガリウス達はそのまま一気に下まで降りて着地。
やはり数発のは食らってしまったが、そのまま真っ直ぐ進み、教師陣を振り切った。
「ハッハッハ!! 」
「レースの方は大した事はない。一気に奥まで進むぞ!」
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それから、ガリウスたちはレッドに乗ってコースを進んでいった。
予想通り、敵はほぼ手抜きしかいなかった。
中にはかなり本気で来ていたところもあったが、特等でもないので、ガリウス達の敵ではなかった。
だが、手抜きという意味ならガリウスたちも変わらない。
何故なら、ガリウス達にとってのメインイベントはレースではないゆえに、力を温存していたからである。
そして、最終ステージ
「もう散々休んだな」
かなり早くたどり着いたので、ガリウス達は体力の回復と武器のメンテナンスを行っていた。
その間に数チーム通って行ったが、ガリウス達と同じ場所を通る気配はなかったので、そのまま無視を決め込んでいたのである。
「いよいよだ。調子はどうだ? ガリウス」
「余裕に決まってんだろ………………と言いたかったが、カッコつかねぇことにかなりテンパってんだわ。今まであの野郎には一度も勝てなかったし、それどころか手も足も出なかった。あの圧倒的な強さを俺様はよく覚えている………………」
ガリウスはグッと手を握りしめた。
「だが、俺様はここで勝たねェと、多分一生何も超えられないし、何にも勝てねェ腰抜けになっちまう」
「………」
ダンッ!! と地面を踏む。
ガリウスは覚悟を決めたのだ。
過去に打ち勝ち、先へ進もうとする覚悟を。
「じゃ、行こうぜ、相棒」
「………ああ!」




