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第441話



 「………む」



 「よう、ファリス」



 俺は観戦しにいこうとする途中でファリスと出会った。

 敵チームとくっちゃべるのはどうかと思うかも知れないが、まぁ特に気にしない事にする。



 「観戦か?」


 「ああ。お前も観戦か、ケン」



 「おう。因縁の、親子対決を見てやらねぇとな」



 ファリスは何となく俺が言いたいことを察したらしく、小さくため息をこぼした。



 「お前、あいつの事情を知っているようだな。全く、酷な兄貴分だ」



 「どの道親父の影を振り払わねーとあいつは強くなれねーさ。その事がどれだけあいつの実力を封じているか、勿体ねー」



 「勿体無い、か。まぁ、言い分は分からなくもないさ」




 俺は少し間をとって、こう付け加えた。

 



 「………………過去に縛られるってのは、少なくともいい事じゃないってのはよくわかる。足に絡みつき、目を塞ぎ、耳を塞ぎ、体を縛り、重りのようにのし掛かり………蝕みつくす。これは呪いだ。アンタも大人なら、経験あるんじゃないか?」



 「………………ああ、よく知っている」



 ファリスの過去、か。

 よく良く考えたら、この前の話を聞く限りでも間違いなく何かはあるのだ。

 重たい何かが。



 「止めだ。こんな話ばっかしてたら根が腐る………そういや、アンタのとこは誰だしたんだよ」



 「知らん、適当だ。今回は配点が低いからな。一位且つガイウスに勝つだったら高得点だが、正直それが出来得るのは私かファルグくらいだろう。次に向けて主力は温存だ。あの騎士はそれだけ強い。一度会話すれば大抵のやつはそれがわかる」



 「なんだ、知り合いか?」



 「三帝ともなるとそこそこ顔が知れてる。私もあのラクレーですらそこそこ知り合いは多い方だぞ?」



 マジかよ。

 あのラクレーが………



 「ラクレーは意外だな………そんじゃ、一つ参考までに聞きたいんだが」


 「ん?」


 「ガリウスとウォルスが組んで戦った場合、ガイウス・ガルディウス相手にどの程度まで迫れると思う?」



 ファリスは難しい顔をして考えた。

 そして、



 「………率直に言うが、多分ほぼ間違いなく負けるだろうな。善戦はするかも知れないが、それでも奴には及ばんだろう」



 なるほど。

 うん、正しい

 その分析はほぼ間違いない。


 だが、



 「ちょいとばかりハズレっかもなァ」



 「何?」



 「ちょいと番狂わせがあるかもよ?」




 あのブレスレット。

 よくは見れなかったが、あれが見た通りなら、もしかしたらが起こりうる。


 やはり、ウォルスはなかなかの策士だ。










———————————————————————————










 「崖上りか………」




 土魔法で作ったであろう巨大な土山が目の前に立ち塞がっていた。




 「レッド、爪だ」



 レッドは爪を伸ばして、岩山に突き刺した。



 「ロッククライミング。冒険者時代によくやったよな」



 「懐かしいな」



 そしてレッドは岩山を垂直に登っていく。

 すると、



 「ガリウス、下から狙っている連中がいる」


 「チッ、面倒クセェ。視覚共有で攻撃位置だけ予測頼むぜ。最低限しか動ねェから」


 「任せろ」



 崖の下は来る途中ガリウス達に跳ねられた生徒だった。

 この競技は自分の武器の所持可能なので、向こうは弓を持っている。


 狙いを定め、一気に放った。



 だが、アイザックの視覚共有により狙いは分かっている。



 「“レ”右足、“ウ”左肩、頭」



 「よーし、ほいっと」



 右足を上げてレッドの右足を狙っていた弓を回避。

 ウォルスの左肩と頭を狙った矢は直後に右に飛んで避けた。




 「回避成功」



 「いいねェ。連中の様子は?」



 「かなり驚いているらしいな。視覚がぶれている」



 「ハッ、ザマァねェな。つーかヨォ、ウォルス。やたら骨のねぇ連中ばっかじゃねェか」



 「仕方ないよ。このレースは配点が小さいらしいからね」


 「そりゃクソ親父倒して一位とる自信ねーから言ってんだろ」



 「お前はあるのか?」



 「いや? 一位は無理だろ。だが倒す。アニキも今回勝ちに拘ってンのに、何も文句言わないで俺らにこの一戦をくれたんだ。だったらせめて、あのクソ親父ぶっ殺して勝つのが筋ってもんだろ」



 「そうだな。む、右足飛んで左回転」



 

 そう、この2人にとってレースは始めから眼中に無かった。

 ガイウスを倒す事だけに全力を注ぐつもりなのだ。



 「お、頂上だ」



 2人は岩山を登り切った。

 すると、目の前にある看板がたっていた。



 「ふむ………左右で道が分かれているな。右と左で難易度が違う。右が近くて難しい、左が簡単で長い。よくあるやつだ。どうする?」



 「人が少ないのは?」



 「コースアウトのリスクを考えれば左だな」



 「じゃあ右だろ」



 「………言うと思ったよ」



 ガイウスはレッドに指示をだした。

 右を進むらしい。


 これも一つの作戦だろう。

 

 魔法を使うのは、主に対人戦の時だけで、コース自体で魔力を消耗する事はあまりなかった。

 どちらかと言うと、使い魔や、生徒の身体能力を重視した競技なのだろう。


 だったら、すぐには回復できない魔力を温存するのがベスト。時間的余裕を持つと言う意味合いでも、右はありだ。

 そうガリウスは考えている。


 レッドは右を進んでいく。

 真っ直ぐ進んでいくと、岩山の終わり、崖があった。





 「………なるほどね」







 

 確かに時間の短縮にはなり得る。

 だが、成功すれば、だ。



 「ハッハッァ、こいつはエグいな。中央のちっこいコースエリア以外は全てアウト。空中には野生のモンスターとサポート側の教師による砲撃。浮遊は禁止だから、下手すりゃ当たって地面に真っ逆さまって寸法だ」



 「これはなかなか骨が折れそうだ」



 下にはかなりの数のリタイヤしたチームがいた。

 よく見れば、ここの足跡も多い。

 つまり、皆引き返したのだ。


 しかし、




 「ま」



 「飛ぶんだけどね」




 ガリウスとウォルスは何の躊躇いもなく地面に飛び込んでいった。


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