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第437話



 「ルナラージャの勇者………いや、異世界人か」



 「うん。多分さっきの視線がどうしたって言ってたのは、あの子達が雇うなりして仕向けた連中だよー」



 そう、直接ではない。

 直接見に来ればウルクにバレている。

 それを知ってかしらでかはわからないが、今重要なのはウルクの事が完全にバレてしまったということである。



 「お前がここにいるのはバレていたとは思うが、こうなった以上、確実に知られてしまっただろう。おそらく、向こうも更に打って出るぞ」




 「まぁ、そうなるだろーね」



 そう言ってチビ神がフッと現れた。

 ウルクの肩に乗って話に参加するらしい。


 「や、レイちん」


 「チビ神か………」



 「今レイちんが言った通り、多分向こうはウルちんを狙って行動してくると思うよ。ただ、向こうもそれだけに時間は割けないはずだよ」



 チビ神はくるくると人差し指を回しながらそう言った。



 「どういう事だ?」


 

 「レイちんも知っての通り、この学院の地下にはとある物が存在する。それは“天の柩”って言う特殊な道具でねー。ミーが全盛期の時に使っていた古代からある道具の中でもかなり異質なものだよん」



 「全盛期という事は、神として存在していたときに扱っていたのか?」



 「ピンポーン、そ。だから、あれが向こうの手に渡っちゃうとヤバイんだよね。そこで、邪魔する事にしたの」



 「邪魔?」



 「うん。遠隔操作で取られちゃわないように、邪魔をして直接じゃないと取れないようにしてるの。それだったら後はまんまと取りに行った奴らをケンちんがボッコボコにしておしまいってわけ」



 チビ神もケンの力は信用している。

 というよりは、ケン以外は止められる人物がいないと言ったほうが正確だ。



 「でもね、妙なんだよね」


 「?」



 「刺客を使うって点は全然頷けるんだけど、幾ら何でも、あの子らこの街に来てからのんびりし過ぎな気がするってゆーか、なんてゆーか」



 「だったらいいじゃないか。こちらにも時間的に余裕が生まれる」



 「だといいんだケド」

 


 チビ神は顎に手を当て、何か考えていた。




 「特異点、アマサキ ミコト………………一体何を考えてる?」












———————————————————————————












 そして昼が過ぎ、あたりは既に真っ暗になっていた。

 見上げれば星空や月が見えている。


 そんな景色を見つめながら、命は街で買ったスイーツを食べていた。



 「むむむ………これが異世界クオリティ………やっぱり拙者たちの学園祭とは訳が違うようにござるな。いやはやあっぱれ………あ、このクッキーおいしい」




 各クラスの出店のスイーツは命の舌を満足させていたらしい。

 貴族ばかりのこの学院は、食文化の狭いこの世界の住民とはいえ、なかなか舌の肥えている者が多い。

 だから、一般人よりはこだわりの強い者が多かったりする。



 「むぐむぐ………………む、しかしやや当たり外れは大きいでござるなぁ。このクッキー欠けてるでは御座らんか」



 命はクッキーをかざした。

 欠けた部分が丁度月の欠けた部分と同じような感じだった。



 「ま、味はいいので問題ないのでござるが………やはり、まん丸がいいでござるなぁ。そうは思わぬか?

由知殿」



 一応これでも独り言ではない。

 話し相手はいた。



 「えー、美味かったらそれでいい感じじゃんか。つかそれだってあんましかけてないじゃん」




 圧倒的な力でリンフィア達を苦しめた日本人。

 ユノ・ハルトロスこと、乃坂 由知だ。


 

 「やれやれ、由知殿と来たら………無粋よなぁ」


 「いやいや、そこまで普通こだわらないじゃん?」



 「………………」



 妙な空気が二人を包んでいる。




 「由知殿………何故我らを裏切った?」



 そう、由知は現在命達の方にはついていない。

 この男は国を抜けたのだ。

 


 「んー、強いて言うなら、あそこ辛気臭かったじゃん? それでだよ。俺はああいう閉鎖っぽいのが嫌いなの」


 「一応尋ねるが、戻ってくる気は御座らんか?」



 「ないね。言っとくけど、多分俺と楠はそっちに戻ることは永久にないじゃんよ。諦めな」



 「そうでござるか………………」



 命は残念そうに肩を落とした。




 「殺さなくていいわけ?」


 「クラスメイトにそこまでする気は御座らんよ。ただ————————————」





 「っ………!!」




 命はゾッとするような笑みを浮かべて、由知にこう言った。




 「邪魔をするようであれば、一切の躊躇なく首を跳ねる故、それだけは努努忘れぬよう肝に命じておいて欲しいでござるよ?」



 「………………っ、わかってるじゃんよ、天崎」



 

 しかし、これでも由知は屈することはない。

 暫くして、何も会話をしないでいると、由知はゆっくりと立ち上がった。




 「それじゃ、久々にクラスメイトの顔も見れたし、お暇するじゃん」



 「行くでござるか?」



 「いや、ここにいるつもりだぜ? 何せこれから敵になる二カ国の戦いの序章が見られるじゃんか」



 由知はニッと笑って腰に帯びた剣に手を添えた。

 その剣には、以前までなかったとある紋章が彫られていた。



 「じゃあな、天崎。またどこかで」




 それは国の紋章だった。

 ルナラージャでもここミラトニアでもない。




 「さらばだ、裏切り者。今度敵としてあったら素っ首斬り落として晒そうぞ」




 「ははは………………それは楽しみだ」




 乃坂 由知。

 元ルナラージャの転移者にして、裏切り者。

 

 現所属国——————ルーテンブルク。

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