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第436話


 「話………? 急を要するか?」



 「んーん。今じゃなくてもいいけど、出来るならすぐがいいなー」



 そうウルクが言うと、レイはなるほどと言って少し間を開けた。

 すると、



 「今はダメだ」


 「そっかー………」



 ウルクが残念そうにシュンとすると、レイはこう付け加えた。


 「今は私の癒しが優先だ。これが終わってからなら問題ない」


 「本当?」


 「あと5………いや10分………やはり15分待ってくれ」



 段々と引き延ばすレイ。

 15分に決めたらしい。



 「うん、それくらいなら全然待つよー。ありがとね、レイくん」



 ウルクがそう礼を言うと、レイは既に目の前に現れたもふもふを全力で撫で回していた。












———————————————————————————











 「ふぅ………」


 満足そうな顔のレイ。

 あの猿は一体どんな気持ちなのだろうか。


 「楽しかったねー」


 「うむ、なかなかだった。いい趣味をしている」


 隠れケモナーのレイはしみじみとそう言った。






 頼んだケーキを食べ終えた後会計に行くと、ここは私が奢ると言って、レイが会計をしに行った。

 男前である。

 まぁ、女なのだが。


 その間、ウルクはエルと少し会話を済まして、レイが戻り次第店を後にした。



 すると、あ、と言ってウルクが立ち止まった。



 「折角だからお店で話ちゃえばよかったねー。そうすればいっぱい使い魔ちゃんと触れ合えたし」



 「落ち着いて話せる場所ならオススメがあるぞ」



 「本当? じゃあそこがいいなー」



 「“ちか道”がある。こっちだ」


 レイはその“ちか道”を指差した。

 ウルクはレイが指差した方へ歩いていく。



 「ここからだ」



 「うわぁ、狭いねー」



 なかなか狭い路地裏だ。

 それなりに通る気が失せる程度には汚い。



 「行くぞ」


 「うん」



 しかし、ウルクは何も言わずに裏道を通っていく。

 小汚い路地はしばらく一本道だった。


 ただ、ゴミはあまりない。

 ファリスがそのあたりをきちんとさせているのだろう。

 彼女はあれでも一応この街の長でもあるのだ。






 そして、最初の角を曲がったところだった。




 「………………うん、そろそろか」



 「………え?………………うわっ!?」




 レイはウルクを急に抱き抱え、そのまま路地裏を猛スピードで進んで行った。



 「レイくん!?」



 「舌を噛みたくなければ黙っていろ!!」



 路地裏は迷路のように入り組んでいる。

 いや、“ような” ではない。



 「ここ………すっごい入り組んでる………」


 「ああ。わざと入り組ませているらしいからな」


 「そっかー………………え?」




 そう言っている間に、ウルクはある異変に気がついた。



 「あれ? だってさっきまで………」




 壁はいつの間にかレンガから鉄になっていた。

 それどころか空が見えない。

 明るさが変わらないので気がつかなかったようだが、現在ウルク達は屋内にいる。




 「この辺りだな」


 

 レイはウルクを下ろした。

 


 「………」



 いまいち事情が掴めていないウルク。

 周囲を見渡すが、やはりここは屋内だった。

 そして、ウルクが全く知らない場所である。




 「生徒会用地下通路。さっき言った“ちか道”というのは隠語だ」



 なるほど、と思った。

 近道と地下道。

 ちか道違いだったのだ。


 「ここは、限られた生徒会役員が何か騒動に巻き込まれた際に、避難する経路だ。光魔法などの魔法具で、上からは内部が分からないようになっている。生徒会役員以外がここを使ったが最後、幻覚作用で見えている床に開いた穴に入って捕獲されると言うわけだ」



 「ちょっ、ちょっと待って!? え? 今もしかして私ってー………」



 「追われていた」



 「!!」



 ウルクは絶句した。

 ウルクを追ってくるとしたらルナラージャの刺客だ。

 ウルクのセンサーでわからないとなるとまずい。


 だが、



 「というよりは見られていたな」



 「じゃあもしかしてー………モンスターカフェに長くいたのも………………」




 「あ、ああそうだとも」




 ここは怪しい。

 それはさておき。




 「見た感じでは大したことのない連中だったのだが、妙だったからな。念のためにこちらを使うことにしたのだ」



 「大したことのない………?」



 ここでウルクは、とある可能性を考慮する。

 自分を見ていたのは、奴ら本体ではなく、雇った殺し屋か何かだと。



 どの道厄介だ。

 対策を打たねばならない。

 そう思っていると、



 「お前が言おうとしていたのも、追ってきている連中も、全て地下の物体に関わっているのか?」



 「!」



 ウルクは驚いたように目を大きくする。

 



 「あの男………チッ、やはり私が持つ情報は不完全だったか………ウルク」



 「………あ、はい?」



 「どうやらかなりの厄介ごとらしいな。話してみろ」




 こうしてレイは、マギアーナに迫る危機を知ったのである。

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