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第429話



 「よ」



 「げ」



 俺はニールを見つけて軽く挨拶をすると、ものすごい嫌な顔をされた。

 予想通り会いたくなかったらしい。



 「よかったナー。怪我がなさそうでよ。ぷくく」


 「こ、こいつ………………そのニヤニヤ顔をやめろ!!」



 街へ行く前に、ちょっとばかしニールをからかいにきたのだ。

 エルに二人掛かりでやられたのだ。

 プライドは最早ボロボロだろう。



 「おい竜女。何を………………なっ!」



 丁度いい。

 レイもいるようだ。

 からかってやろう。



 「おーおー、レイさんではございやせんか。調子はどうだ? ん?」



 「ぐ………いちいち腹の立つ男だ………」



 『ご主人様………あんまり良い趣味じゃないのです』



 「へーい」



 他でもないエルがそういうのならやめておこう。

 



 「ま、それはさておき。お前ら気がついてるか?」


 俺はあえて主語を抜いて尋ねた。

 すると、レイとニールの反応が二分した。


 「? 何の話だ」



 レイは首を傾げていた。

 だが、ニールはコクリと頷いて反応する。

 やはりニールはわかっていたか。



 「なんだ、お前も気がついてたのか」


 「まぁな」


 実は、今日の朝からとあるものが発している気配がほんの僅かに漏れ出していたのだ。


 魔力ではない。

 だが、僅かに魔力が混ざっているため、かなり敏感な魔族か超高レベルの魔法使いならかすかに感じ取れるのだ。

 


 「これは何なんだ? 魔力とは何かが違う。正直言って今もかなり曖昧だぞ?」


 「おい、一体何を話しているんだ」


 「やっぱお前は分からんか。でも、お前クラスなら方角を示せばわかるだろうから………あっちの方よーく集中して探知してみろ。何か感じるだろーから」


 レイは俺が言った通りの方角を向いて、集中した。

 すると、



 「? 何か………………混ざっているのか?」


 「わかったか。何となく察しているだろうが、ちょいとばかし面倒ごとだ。特にレイ。お前は間接的にだが関連はある」




 「………聞こうか」












———————————————————————————











 「なるほど。その魂魔法とやらで世界情勢が変わる可能性がある、と」


 「正確には魔法ねーけどな。ただ、こいつを向こうの異世界人に取り込まれると相当厄介だ。だから破壊しようとしてるんだが………」



 レイは忌々しそうに舌打ちを打った。




 「あの新任教師と第二の会長が生徒の人命を顧みずに破壊しようとしている………お前はそれを止めようとわざわざ回りくどい方法を取っているわけか。フン、律儀なやつだ。真面目なのか不真面目なのかはっきりしろ」



 「ははは、俺ァ不真面目さ。少人数の命のためにちーとばかし全国民の命を危険に晒してンだからよ」



 ケケケと俺は笑った。

 そう、本来はあってはならないのだろう。

 だが、



 「俺はな、犠牲って奴が大ッッッ嫌いなンだよ。それで理不尽に命を奪われるなんてことがあってたまるか。俺は絶対認めねェ。だからよ」



 俺は二人の肩をがっしりと掴んでこう頼んだ。



 「協力してくれ。あいつらに一位を取らせたくねェ。つまり、この祭りをガチでやってくれ」



 正直、俺が出られない以上保険は必要だ。

 教師、特科二組が敵となると、最も信頼できるのはこいつら戦闘科特等クラスだ。


 「「………」」



 ニールとレイは、俺の肩をコツンと小突いた。



 「まぁ、断る理由もないしな。それに、その異世界人がリンフィア様の日常を脅かす可能性が少しでもある以上、放っては置けんな」



 「生徒会副会長として、学院で不届きな行いをする者は見過ごせん。それを止める手段がそうであるのなら、私が全力を出すのも吝かではない。そもそも、手を抜く気などないがな」




 ニールとレイは頼もしい笑みを作ってこう言った。




 「「任せろ」」





 こりゃ、結構力強い味方が出来たもんだ。




 「ただ、優勝するのは俺らだけどな」


 「ほう? 舐めるなよケン。私らとて意地があるんだ。簡単に勝てるとは思うなよ」


 「気に食わんが、この竜女の言う通りだ。我々の誇りにかけ、“武”のつく戦いには勝ってみせよう。あとで吠え面をかかんことだな」




 ニールとレイはそう言って自分たちのクラスへと戻って言った。












———————————————————————————









 




 「ふむ、ここがマギアーナにござるか。いやはや、何やら楽しげな様子にござるなぁ。祭りか?」




 異世界に似つかわしくない、わざとらしいそこそこ中途半端な武士語。


 

 「さてと、拙者の旅もこれにて終点でござろうか。まぁ、予定では残り7日ほどあるゆえ、ゆるりと過ごして参ろうか」



 黒髪のメガネ女子。

 しかし、その大人し目の見た目とは裏腹に凄まじい力を宿していた。



 「とりあえず、休暇でござる」



 天崎 命——————命の神の特異点は、ついに目的の地へたどり着いたのだった。


 

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