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第422話



 「ついに来たな………」



 そして迎えた、魔獣演武祭本番。

 俺たち生徒は、各待機場所にて待機命令が出ていた。

 待機場所は1,2階の教室。

 学年が低い順で街がある方向を向いてならび、同学年の中ではクラス等級順で並んでいる。

 もちろん、最後尾は俺たち特別科だ。

 ちなみに一個前が戦闘科の特等。

 レイやニールがいる。



 すぐにで競技を始められるよう、既に生徒全員動きやすい格好になっている。

 なお、特定の競技以外は装備を全員統一しているため、指定の運動服を着せられる。

 


 「にしても………」



 皆いつになく真剣な面持ちだ。

 ピリピリとしていて、且つ活気とやる気に満ち溢れた独特の雰囲気と高揚感は、昔参加したスポーツの大会を思い出す。

 

 だが、その方が俺としても助かるのだ。


 今回はスポーツの大会とは少しわけが違う。

 重たいものを背負って戦うものが大勢いる。


 俺もその一人だ。

 啖呵を切った以上、負けるわけにはいかない。

 全部救う。

 それが今回のゴールだ。




 と、 内心意気込んでいると、





 『あー、聞こえるか?』





 音魔法で拡声されたファリスの声が会場中に響く。

 普段使ってる魔法具とは圧倒的に音質が違っているため、会場はざわついた。


 「え? こんなに音綺麗だったかな?」


 「すごく滑らかだ………」


 「魔法具を変えたのか?」



 音魔法はまだ広まっていないらしい。

 まぁ、確かにあれは結構難しいのだ。

 その難易度は、音魔法なんてありがちな魔法が、古代から引き継がれなかった所以でもある。



 『今回の魔獣演武祭は、魔闘祭と同様街を巻き込んだ大規模な祭りだ。よって、特に式があるわけではない。だが、競技の頭にコール位はさせてもらう』




 この放送の内容も例年と同様らしい。

 規模が大きくなったとはいえ、ベースである魔獣祭と魔闘祭は崩さないスタンスで行くつもりのようだ。





 『まず、第一種目だが、“旗戦”という競技を行って貰う』




 説明が入った。

 放送している人間もファリスから変わったらしい。


 説明を要するに、使い魔と人間どちらでもありで、4人、又は4体などの形で馬を作って、その上に旗となる生徒が、教室にかかっている旗を持って戦うとのこと。

 馬は各クラス3騎。

 人間は必須。

 旗はクラスが上位になる程重くなり、移動が困難となる。

 的に攻撃ができるのは旗持ちのみ。

 大型の使い魔参加は一チーム一体まで。

 なお、馬が大型の場合、大型使い魔による攻撃は禁止とされている。

 最も多く旗を所有していたクラスの勝利。

 旗が奪われる、又は旗役が落ちれば負け。

 

 以上がルールの全容だ。






 いつも通りの魔獣祭のような競技で、少しホッとする生徒たち。


 だが、予想外の事というものは、如何なる時でも起こりうるのだ。



 それは唐突に告げられた。

 


 「………ん? 何ダネ? 声が………」


 いち早く察したボルコ。

 前の方から大きな声が聞こえる。

 随分と騒がしい。

 魔法具のせいで、他の教室の“音を”ジャミングされ、はっきりは聞こえない。


 しかし、その声には、焦りが含まれているような気がした。



 「焦り………まさか………」



 そして、流れてくるアナウンス。








 『特科諸君、一つ言っておく。最初の“旗戦”は——————今から15秒後だ』








 「「「………………………………はぁ!?」」」



 そう、これだ。

 これを聞いて皆騒いでいるのだ。

 教室からも、廊下からもドタドタと慌てる声や物音が聞こえる。



 阿鼻叫喚だ。



 全学年全クラスを1,2階に集めて密集させたせいでかなり騒がしく感じる。

 さらに、ジャミングのせいで耳障りだ。



 だが、流石にうちのクラスはそこまで馬鹿ではない。

 



 「………これは………今から対策を練られるか?」


 「チッ、野郎………ややこしい真似しやがって」



 ガリウス、ウォルスはそういう。

 しかし、それでも焦っているのが見ていてわかる。



 「どどどどど、どうしっっ!!!」


 「ドレちゃん落ち着きなよ………まぁ、そういう僕もちょっとこれはヤバイかもって思うけどね。さっきの様子からして、多分うちら伝えられたの最後っしょ」


 「くっ………せめて1分あればよかったのですが………」



 ミレアもシャルティールもドレイルも、他のみんなも焦っている。



 残り12秒



 「………」




 あーあー、相変わらず好き勝手してんなー。

 ま、何をやるかは卑怯な真似はしないだろうから、どうせくじ引きでもして決めたのだろう。

 だったら至って問題無し。


 ………………さて、今回俺はサポートだが、ここは大いに役に立てそうだ。





 「そんじゃ、始めよーか」




 俺は椅子から立ち上がって、魔力を流す。


 予め用意していた魔法をまずは1つ発動。

 これは、ファリスも使っていた拡声の魔法。


 音四級魔法【アナウンス】


 スッと息を吸い軽い【威圧】を発動させながら俺は言った。







 『静まれ』







 「「「!!」」」



 圧を込め、音魔法で全員の耳に発した言葉で、一瞬ピタリと動きが止まる。

 さらに魔法発動。


 音三級魔法【ミュートエリア】


 外の音を遮断し、俺の声だけが聞こえるようにした。




 『効率重視だ、悪いが仕切らせろ。必要な情報を簡潔に言う。今から耳に入った席に移動して、指示が入った奴は使い魔を出す準備をしろ。じゃあ行くぞ』


 畳み掛けるように言った俺は、さらに魔法を使った。

 





 音二級魔法【サウンドコンダクター】




 俺専用に作り出した音魔法。

 声ではなく、振動を使って音を作り出し、指定した方角へ飛ばす。

 一方的な音の伝達だが、こういう状況では一瞬で指示が可能。

 俺専用というのも、これは調整にはかなり計算が必要で、一気に送るには並列してその計算をしなければならないという常人ではまず扱えない仕様だからだ。




 「「「………!!」」」





 指示が伝わる。

 全員迅速に持ち場へ行った。




 『よーしお前ら。後は、言うまでもねーよな?』



 


 




 



 サポート。

 俺の役目は、いかにハンデを“壊せるか”。

 準備時間が短い程度じゃ俺は抑えられない。

 結構マジで行くぜ、今回は。




 「悪いな、イシュラ、春。フツーに勝たせてもらうぜ」




 

騎馬の数を一クラス5騎から3騎へ変更しました。

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