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第420話



 唐突に放たれた不穏な発言。

 ファリスが邪魔だとイシュラは言った。

 こいつ、ファリスのことを誤解しているのだろうか?

 


 「おい、お前まさか………」


 「いや、彼女に逆らう気は無い。彼女が妹や他の第零学区の生徒を消そうとしているのなら話は別だが、そうじゃ無いとは知っている」


 「なんだ………そうか………」



 それを聞いてホッとした。

 だが、それならわからない。

 邪魔………何が邪魔なんだ?

 イシュラとファリスの目的は一致しているはずだ。

 おそらく、イシュラはそれをちゃんと理解している。

 二人とも、この実験を停止させたいと思っている筈だ。



 なのに何故イシュラは、ファリスは、お互いの邪魔をしようとしてるんだ?






 「ケン」


 「………ん?」


 「悪いが、今回の魔獣演武祭、何が何でも勝たせてもらう」


 もう語ることはないってか。

 たしかに、これ以上は有益な情報は得られなさそうだ。



 「俺たちは、オーブを入手してアルシュラを救う」


 「そうか………………………………………?」



 何だこの違和感。

 なんだ?

 これは。


 俺はふと顔を上げた。

 目線の先にあったのは、ルイだ。

 どこか悲しげな表情をしている。


 どいう事だ?

 ………………アルシュラを救う?

 “アルシュラ” を救う?








 「いや、待て………なぁ、イシュラ」



 「………何?」



 「お前、アルシュラを救うっつったな?」



 「………そうだ」



 「お前————————————」





 信じたくはない。

 会話した回数は少なかれど、こいつの人柄はわかっているつもりだ。

 だから、信じたくない。

 そんなことするわけないと思いたい。

 だからこそ、俺は尋ねた。






 「——————他の生徒をどうするつもりだ」




 「………………………」




 その沈黙が答えだった。

 理由がわかった。

 相容れないわけだ。

 こいつは妹を救うために、他の生徒を犠牲にするつもりだ。



 「記録がある。記録によれば、アルシュラは管理者と呼ばれるこちらとあちらのちょうど狭間にいる存在。だが、他の生徒はかなりオーブとの同化が進んでしまっている。手を出せばアルシュラに危険が………」



 「もういい」



 俺はそう言って立ち上がった。

 イシュラは俺の目を見ようとしない。

 視線を逸らしたままだ。


 そのまま出口へ向かった。

 部屋を出る。

 が、その前に俺は一言だけ言った。





 「イシュラ」




 「………………」








 「叩き潰してやるよ」















———————————————————————————














 

 あいつはダメだ。

 妹のために罪もない他人を犠牲にしようとしている。

 俺はそういうのが一番嫌いだ。

 これが殺人犯やらもうどうしようもないクズなら幾らでも犠牲にしようが俺は構わなかった。

 だが、あいつは妹と同じ何かを失った者を犠牲にして妹を助けようとしている。





 ………………それでも、あいつはまだ救いがある





 それに、俺が今話をつけなければいけない人物がまだいるのだ。


 ファリス?

 違う

 ミレア?

 違う

 ウルク? リンフィア?

 違う、違う。




 違う。

 こいつらじゃない。

 俺は、今俺の後ろにいる人物と話をつけなければならない。




 「………………お前、いつからそこまでの隠密行動が出来るようになったんだ?」




 話しかける。

 だが、返事はない。


 こいつは、最初から俺たちを見ていた。

 だが、俺が怒りを見せた瞬間、わずかに気配に揺らぎを見せたのだ。

 油断じゃない。

 それは、単純にこいつの人柄だった。

 心が揺らいだのだ。


 だから、俺は尋ねなければならない。





 「なぁ、春」



 「………やっぱり、あの時にバレちゃったかぁ」


 暗闇から、春が出てきた。

 何かを決意したような、そんな表情だ。



 「………トモのやつに何か言われたのか?」


 「まぁ、言われたといえば言われたかなぁ。でも、これは私の意思。ここの来たのは自分の意思だよ」


 


 思えば妙な話だ。

 わざわざトモがこいつにつく理由はなんだ?

 いや、そもそもそこはスタート地点ではない。

 あいつが何を考えているのか、が重要だ。

 現時点で、あいつは何をしようとするのか。



 決まっている。

 予言の遂行だ。

 そして、それの妨げになり得るのは、当然敵であるルナラージャとルーテンブルクだ。

 この学院との繋がりが深いのは、おそらくルナラージャ。

 ウルク、チビ神、そして魂属性の研究だ。


 オーブ………あれはおそらく神器だ。

 オーブが向こうの手に渡れば、多分俺は命と戦う時にかなりの苦戦が強いられる。

 神器で、より多く神の力を引き出されれば、それだけまずい事態になる。

 

 そのまずい事態とは、他の被召喚者がこちらに攻め入ること。

 琴葉達が危険にさらされることだ。

 

 だから、トモは手っ取り早い策に出たのだろう。

 俺は、それを春に尋ねた。





 「………………“天の柩”を壊しに来たのか?」




 天の柩


 それは、命の神が地上に置いた神器の一つ。

 ファリス達がオーブと呼ぶ球体のアイテムの名称だ。


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