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第415話


 1日、2日、3日、と、ケンがファリスに相談を受けてから、日にちはどんどんその日に近づいて行った。


 企む者、止める者、知らぬ者、傍観する者。


 色々なところで、色々な者がそれぞれの思惑を抱いて動き始めている。


 

 それは、既に大きく膨らんで国すらも巻き込んだ大騒動に繋がっている事に気がついているのは、ほんの数名。



 それを知っている彼らは皆、須らく中心に位置する存在。

 その一人一人の一挙手一投足が、運命を左右する。


 予言の戦いまで、後一体どれほどの日にちを残せるか、誰が死んで誰が生きるか、勝者と敗者は一体誰なのか。

 それはまだ誰にもわからない。

 

 

 


 4日目。



 現在まで残り3日。




 この日もまた、運命を動かす。










———————————————————————————










 「………」



 俺は思わず首を傾げた。

 現在進行形で意外なものを見ている。


 そう、ガリウスだ。


 いつも騒がしい俺の舎弟は、なぜか今日はほとんど喋らず、神妙な顔で一日を過ごそうとしていたのだ。



 「なぁ、ウォルス」


 「ん」


 「あいつ何かあったか?」


 

 俺はそう尋ねると、ウォルスは少し考えた後、



 「………自分で聞いてみたらどうだ? ケンなら、きっと教えてくれるよ。“兄貴分”なんだろう?」



 確かに。

 その通りだ。



 「そだな」



 「………」




 何か悩みがあるのだろう。

 それは大体察しがつく。

 そしてそれが、ガリウスにとって重要な事だと言うこともわかる。


 それは、ウォルスの表情を見れば明らかだ。

 いつもすました顔をしているウォルスが、僅かながらにそれを崩している。



 流石に気づいて放っておくのは気持ち悪い。

 これでも一応は兄貴分だ。

 さて、相談を聞いてやるとしよう。




 「よ」


 「あ、アニキ………」


 「浮かねー顔してんな」


 俺は屋上の方を指差した。

 とりあえず、サボろう。



 「行こうぜ」


 「………ウス」











———————————————————————————












 今日は少し曇っている。

 これは一雨来そうだ。


 屋上についた俺たちは、いつもの場所に行って話をする事にした。



 「なんか悩みがあるんだろ?」


 「………」



 ガリウスはバツが悪そうに頭をかいている。

 しかし、 決心がつかないのか、なかなか話を切り出さない。

 なので、




 「………………ずっと気にはなってたんだよな」


 「?」


 「お前は格闘術はまだまだだ。経験もそんなに無いはず。だが、たまーに動きも基礎が見え隠れしてる」


 「!」


 ガリウスは驚いた。

 自覚はないのだろう。


 それはそうだ。

 見えたのは本当に僅かにだからだ。


 続ける。



 「ガルディウス。魔法騎士団の戦士を幾人も輩出した名門中の名門。だが、その家の息子であるお前からは、その動きが見えない。それは何故か。それは、お前がワザと騎士として訓練された力を使おうとしていないからだ。我流だけで戦おうとしているからだ。だから、どうしても隠しきれない部分が、ほんの少し表に出る」



 

 さらに、



 「お前、やけに騎士団の連中にツンケンしてたよな」


 「!!」



 今度はひどく驚いていた。

 ここまできたら、なんと無く答えはわかった。




 「お前、家を出たのか?」


 「………やっぱり、アニキはスゲェや。よくわかったっすね」


 「まぁ、これに関してはそこまで深読みしなくてもわかっただろうけどな。で、悩みはどうせそれ関連だろ?」



 「………………………そうっす」






 ここでようやく、ガリウスは語り始めた。

 ポツリポツリ、と。


 「今度親父が来るんすよね………任務だかなんだか知らねェけど、絶対会いたくねェんすよ」



 ガリウスはギリっと奥歯を鳴らした。

 よほど家の事を嫌っているらしい。



 「なるほど………家族か………」


 わからなくもない。

 家族が疎ましいと言う気持ちに関しては、多分理解できる。



 「なんつーか………見返してやりたいんスよね」


 「!」


 ………もしかしたら。

 とりあえず、続きを聞くことにした。



 「そもそも俺が家を出た理由………いや、逃げた理由っすね。俺は、家族の連中曰く才能があるらしいんすよ。でも、その期待が重く感じた俺は、ガルディウスの家から逃げた。その時の連中の眼………俺は失望したっすよ。あんなのは家族に向ける目じゃ無い」


 ガリウスは拳を握りしめた。



 「勝手に期待して、その期待に潰されたってわかったらすぐに捨てる。俺はどうしてもそれが許せなかった」



 怒り。

 大きな怒りがまるで炎の様に燃え盛っているのが見えた。


 だが、



 「………………!」



 顔を上げ、こちらを向いたガリウスの顔はとてもスッキリとしていた。


 ああ、やはり。





 「あざっす、アニキ。お陰でスッキリしました」



 嫌っているのは間違いないだろう。

 だが、この表情を見てわかった。


 こいつは、認めて欲しいのだ。



 ああ、そうか。





 俺は——————こいつが少し、羨ましい。

 認めて欲しいと思える親がいることが、ひどく羨ましい。



 ハッとしておれは首をブンブンと振って、その感情を心の奥へしまった。



 何はともあれ、 一旦は片がついたらしい。

 “一旦”は。



 



 「そんじゃ、そのままサボるっすか?」


 「………おう」


 







 そう、このままでは終わらない。

 ガリウスは、少し読み違えていたのだ。

 自分と家族の問題を。

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