第414話
3日目
現在まで、残り4日。
第1生徒会室に、数名の生徒が集まっていた。
生徒会のメンバーなら、ミレア、レイ、アリア、シャルティール、ウォルスそれと更に3名の生徒で、総勢8名が集まっている。
シャルティールは然程重要な役割ではないが、一応生徒会だ。
しかし、ウォルスの方はなかなか重要な役割である。
ウォルスは、生徒会会計を務めているのだ。
本来は、総合科が就く役職だが、ウォルスの場合は持ち上がりでこのクラスに来たという事で、以前からの仕事を続けるという形なので許可は下りている。
で、残りの3名はというと、
「うーん、もう何日かで魔獣演武祭かぁ。腕がなるね!!」
ミヤ・アトナ
以前、ケンやボルコとともにクルーディオの依頼を受けた戦闘科の少女。
オレンジでボーイッシュな髪をした、爽やかな少女だ。
「おぉお!! 神よ! ついに我々総合科が劣化特別科などと揶揄される事がなくなるチャンスが来たのです!!」
この大仰な口調で喋っている女生徒は、ストリー・チャーチル。
ロン毛で、横髪をしっかりと刈っているなんとも珍しいヘアスタイルだ。
糸目なので、何を考えているのかわからない………なんてこともなく、むしろわかりやすい少女だ。
そして、
「テメェウォルス!! 縄ァほどきやがれッッ!!」
ガリウスだった。
今は生徒会室にいるが、当然彼は生徒会ではない。
では何故こんなところにいるのかというと、備品を破壊してしまった所を偶然風紀委員会と委員長のボルコに見つかってしまい、捕縛されたのだという。
ちなみに、ボルコは風紀委員長として、そこそこちゃんと仕事はしている。
まぁ、プリヴィアとイチャイチャしてはいるが。
「自業自得だぞ、ガリウス」
「あ! どこ見てんだテメっ、こっち向けコラ!! おい! コラ!! 燃やすぞテメェ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐガリウスに呆れるレイ。
ガリウスとレイは立場上………という言い方は大げさかもしれないが、こんな風にガリウスが問題を起こして、レイが立ち会う、といった出来事が多々あったため、とにかく面識はあるのだ。
「はぁ………愚かな」
「んだと、オラァッッ!!」
さらに騒ぐガリウスを無視して、レイはミレアに話しかけた。
「会長、この不良は放っておいて本題に入りましょう」
「そうですね………でもその前に」
ミレアは、ケンから教わった【ミュートエリア】で、ガリウスの声を遮断した。
向こうからはミレアたちの声は聞こえるが、ガリウスの叫び声はシャットアウトできた。
「さて、今回の議題ですが、言うまでもなく魔獣演武祭での、生徒会の立ち回りを確認しておきましょう」
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数時間、会議は行われていた。
いつのまにか忘れられていたガリウスだが、文句を言わないと気が済まないので、端の方のソファの上で寝ていることにしたらしい。
そして、会議はようやく終わろうとしていた。
しかし、
「では、以上で今回の………」
ガチャリ、と音がなった。
ドアのところには、ボルコが立っている。
少し息を切らしながら、間に合ったかダネ、と膝に手を置いていっていた。
「どうした? ボルコ」
「警報………“警報”が鳴ったダネ」
「「「!」」」
生徒会の一同がガタっと席を立った。
「警報………あの“警報”ですか!?」
ミレアが思わず平気で男と話すほどだ。
警報とは、それだけ重要なものである。
この学院では、数年前から突如謎の音が聞こえるようになっていた。
そう、魂魔法の研究によるものだ。
そしてそれは、とある災害の後から突如発生したものだった。
それ以降、同じ魔力反応を観測した場合、警報と呼ばれる魔法具によって、学院長から風紀委員長、そして生徒会執行部へのみ情報が渡すようになっていたのである。
魂魔法の事は聞かされていないが、これが危険だとは認知している。
「よって、ミレア、レイ、俺、それと向こうの生徒会会長と副会長は特殊魔法具の携帯許可が下りたダネ」
「特殊魔法具が………」
「僕まだ見た事無いんだけど………そんなに凄いの?」
シャルティールは、ミレアにそう尋ねた。
「ええ、凄まじいです。古代より伝わった数少ない魔法具。それらがあれば、私達でも学院長にかなり肉薄出来ると聞いています」
「うわぁ………凄いね」
正直想像はつかなかったが、どれだけのものかはなんとなく伝わった事だろう。
「それと、念のため騎士団がくるだね」
「騎士団………学院長が呼んだのでしょうか………?」
コクリと頷くボルコ。
そして、こう付け加えた。
「なんでも、ガルディウス家の現当主が直々に来るらしいダネ」
「!」
「………………」
ガリウスとウォルスが反応した。
ピタリと動きを止めるガリウスとウォルス。
「………」
ガリウスは無表情になった。
不気味なほどに。
そのまま、ガリウスは何も語る事無く、黙って外に出て行った。
「………ふぅ」
ミレアは小さく息をこぼす。
そして、外を眺めてこうつぶやいた。
「今年は………荒れそうですね………」
きっかけ。
そう呼ぶには軽いかもしれないが、間違いなく、起点となる日だ。
魔獣演武祭。
この日、様々な意思が交錯し、そして——————




