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第41話


 今俺たちは場所を移してニールの拠点である洞穴にいる。

 中はそれなりに綺麗になっていて生活するには十分の場所だった。

 俺たちはそこでそれぞれ何をしていたのか話し合うことになった。

 


 俺とリンフィアはそれぞれ城からの追放と奴隷からの解放から然程日にちは経ってないのであまり話すことは無かった。


 俺はとりあえず、勇者や神に関係する話は避けつつ話した。


 「こんな感じだ」


 「へぇ、王様に追い出されたって、国王に追い出されてたんですね。追っ手を返り討ちにしたってところはケンくんっぽいです」


 俺は国王に逆らって追い出されたことにしてある。


 「とんだならず者だな」


 「ならず者って言うな」


 コメントが辛辣だ。

 そんなに俺が嫌いか。


 「気をつけてくださいね、リンフィア様。この様な奴と一緒に居ればいつか襲われますよ」


 「おぉい! なんてこと言ってんだ!」


 物凄い誹謗中傷。


 「そうですよ。ケンくんはそんな事をしません。おんなじ部屋で寝た時も何もしませんでしたもん」


 「やめろ! 誤解を招く! こいつそこそこ強いから殺気が不快なんだよ!」


 ニールからの殺気を一身に浴びる俺。


 いや、だって部屋代勿体無いじゃん。


 「俺はもういいだろ! 次だ次。次はニールだ!」


 「お前の指図なぞ受けるか馬鹿者!」


 「私も聞きたいです。今まで何をしていたのか」


 「はい、では話させていただきます」


 なんて切り替えの早さだ。




 「そうですね。私はリンフィア様とはぐれた後、とにかくリンフィア様を見つけるために旅を始めました。なんの手がかりも無かったので、片っ端から調べていくことにしていきました」


 それを思うと、今会えているのは本当に奇跡だ。

 逆によく見つけられたなと思う。


 「しかし、私は半魔族。こちらの生活はあちらとは違うので苦労しました。その上、手持ちも少なく宿に泊まることができませんでした」


 「大変だったんですね」


 「いえ、貴方の今までの事を考えると私の苦労などゴミに等しいですとも。それに、お金を得る方法はあったのです」


 なるほど、それで冒険者になったわけか。


 「街で話しかけてくるボンクラどもを片っ端からボコボコにしてそのサイフを………」


 「待てえええええ!!!」


 「なんだ、煩いぞ。非常識だろうが」


 「非常識はどっちだ! どこのバーサーカーだよオメーは! ヘラク◯スでもそんな事しねーわ!」


 まさかの発言にツッコミを入れざるを得ない。


 「ええい! 煩い! 私は暴漢どもから自分の身を守ったのだ! 正当防衛だろうが!」


 「財布抜き取ってんだからアウトだっつってんだろ!」


 「はぁ………」



 俺たちはリンフィアを間に挟んでしばらく騒ぎまくった。









 「も、申し訳ありません、リンフィア様っ。ついカッとなってしまいました」


 「本当に悪いくせですよ、そこ。何かと突っかかる性格直さないと。ケンくんも!」


 「う………」


 叱られてしばし反省する俺とニール。


 「それで、続きは?」


 


 「オホン。私がそんな風に毎日を過ごしていたら、とある男から声をかけられました。いつもの様にボコボコにしてやろうと思いましたが、その男は人間にしては異常な強さを持った男でした。それがダグラス殿です」


 ギルドマスターのおっさんか。


 「ダグラス殿との戦いは途中で止めとなり、帰ろうとした私はダグラス殿から冒険者になるのはどうかと誘われました。そのアドバイスを聞いた私ですが一つ問題が。それは………」


 「種族ですね。登録の際にバレてしまうので断念しようと思ったのです。しかし、私は見てしまいました。魔族の知り合いが冒険者になっていたところを。聞けばバレずに済む道具があるとか。私はそれを入手して冒険者となったわけです」


 「この鎖ですか?」


 「おお、リンフィア様もおもちでしたか。まさかダグラス殿が?」


 リンフィアは相槌を打った。


 「やはり彼は種族差別をしないんですね。嬉しい限りです」


 ダグラスの事はあまり知らないが俺もそう思った。

 この人間こそが至上であると言う思想を持つ国で、亜人や魔族に偏見を持たないのはすごいことだと思う。


 「では続きを。冒険者となった私はいろんな街でリンフィア様の事を探しながらクエストをこなしていきました。そのおかげで試験があったり、妙な異名をつけられたりしましたが、今日までリンフィア様の事を一番に考え、行動した次第です」


 「えへへ、一番ですか。ありがとうございます、ニール」


 「リ、リンフィア様!」


 デビコンだ。

 デビコンが発動したぞ。


 「そうだ! リンフィア様、これをお返しします」


 「あ! そうだった」


 そう言ってニールが取り出したのは、中央に石が埋め込まれたネックレスだった。


 「何だこれ?」


 何とも言えないが妙な力を感じる。


 「母の形見です。小さい頃から肌身離さず持っていたんですけど、ニールに預けていた間に私があんなことになったのでしばらく見ることも出来なかったんですけど、今考えたらニールに預けてて良かったです」


 「………」


 鑑定しようと思ったがやっぱり止めておこう。

 人の形見をそんな風に見たくはない。


 「綺麗な石だな。でも何の石だ?」


 少なくともトモから貰った知識の中にはそんな石は無かった。


 「さあ、でもなんか凄い石らしいです。母が言ってました」


 「ふーん。ま、いいか。とりあえず今日はここに一晩泊まって、明日クエスト報告に行こう」


 「はい、わかりました」


 「お前も来るんだろ?」


 「無論だ。このニール、もう片時もリンフィア様の元を離れる気は無い!」


 らしい。

 でもそれならその方が安心だ。


 リンフィアとニールは久々の再会で積もる話があったのだろう。

 ずっと話している。


 俺は一足先に寝た。


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― 新着の感想 ―
[一言] あっ、コレ鑑定しといた方がよかった奴やん…( ꒪꒫꒪)
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