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第401話


 「本当に“宿り木”があった………」


 「信じられない………」



 宿り木

 魔力の溜まり場で、ある事のおかげでモンスターが寄り付こうとしない安全地帯。

 そのある事とは、この木に流れる不規則な魔力の流れだ。


 ある一定の地点からここまで、宿り木が自然から吸い出した魔力が流れている。

 モンスターは、その魔力の流れ方を嫌がるのだ。

 人間でいうところの、黒板を引っ掻く音のようなものと思っていい。

 それは人間などのモンスター以外の生命体には一切効果がなく、冒険者達はここを安全地帯と言って狩りの拠点なんかにするが、そもそも希少すぎるので、そう言った例はほとんど無いのだ。



 「直で初めて見たな………」


 「アタイもだよ」



 ユーリンとフーゴーも感嘆の声を上げていた。



 「でも、何故ここに宿り木があると気づいたのですか?」


 プリヴィアは俺にそう質問した。

 俺はそれとなくさっきまでやっていた推測を全員に話そうとした。

 だが、


 「ちょっと後でも良いか?」


 「え?」


 俺は目だけで軽く周囲を見回す。

 戦闘科とボルコはさすがというべきか、気づいていたらしく、向こうに気づかれないよう警戒をしていた。


 「あの………」


 「ラニアと()()()()()


 ドレイルは、俺が言った事の意図を汲み取ってラニアとたわいもない会話を始めた。


 さて、どうする。

 手練れは3人。

 後は雑魚だが、15人程いて、ボルコやドレイル以外は手を焼くレベル。

 状況が悪い。

 加えて敵の位置が悪いうえに生徒の前、さらにあの五人組ときたらバラバラになってやがる。


 「ま、いけるけどな」



 手練れは俺とエルで対応する。

 残りは各自に任せよう。




 「さーてー………………と」







 ゴォオオオッッッ!!!!








 「「「!!!」」」


 

 周囲に殺気をまき散らした。

 俺が殺気を向けた敵は、自分への明確な殺意を感じ取った瞬間、速攻で戦闘体勢に入った。

 殺しから、戦いへと強制的に持っていく。



 「エル、行くぞ」


 「はいなのです!!」



 俺は一番強い奴のところへ、エルは人間体になってその次に強い敵のところへ向かった。



 「おいお前ら!! 指示出すから従え!!」



 軽めの威圧を飛ばす。

 気にくわない奴もいるだろうが、そいつらからの反発を防ぐために、この場はすぐにでも強制させる必要があるのだ。



 「っ………これは従ったほうが良さそうだ」

 


 「なんて圧なの………」


 


 よし、強制は出来た。

 ボルコは、最初から従ってくれるようなので、手間はかからなそうだ。


 と、考えていると、


 「!!」



 暗器だ。

 正確に急所を狙ってくる。


 「お喋りとは随分余裕だ。ワシら相手に舐めてかかったら、痛い目では済まんぞ?」

 

 

 チャクラムを飛ばしつつ俺の背後に回る老人。

 さっき会った殺し屋より強いな。

 だが、



 「ぬるい」


 「!?」


 俺はチャクラムの穴に指を通して、直接老人へ投げ返した。


 老人は咄嗟に仕込み杖でそれらを弾き、俺を見失った事に気がつく。



 「ルクス、そのまま右へ誘導しろ。ユーリンはその場で待機。ラビ、そいつら3人撹乱しろ」



 音四級魔法【ハイドスピーカー】


 特定の位置にのみ音を飛ばす魔法。

 指向性スピーカーのようなものだ。


 「チッ、若造がッッ!!!」


 老人は木を切り刻んで俺の足場を奪う。

 剣術も使えるらしい。


 「いいね、動けるジジィだな」


 その間にまた指示を飛ばす。

 着地した瞬間、周囲に貼られた鋼線を斬って、老人の頭上へ。


 「バカな………罠がこんなあっさりと」


 「気をつけろよ」


 「何を——————」





 ピンッッ





 ドサっという音と共に、老人が崩れ落ちた。

 何が起きたかわかっていないようだ。


 「!?? ぅグァアッッッ!!」


 こっちは俺がくすねた鋼線だ。

 老人の死角になる場所に一瞬で仕込んだのである。


 さらに俺は指示を飛ばす。


 「ラビ、 飛びながら4メートルほど伸ばして、そのダガーを後ろに振れ」


 「おう!!」


 ラビがダガーを振ると、医学科五人組を狙っていた殺し屋の肩にそれが飛んだ。

 

 「ちょっとズレたが、まあいいか」


 ダガーは殺し屋の肩を砕き、そのままラビの手元へ帰っていく。


 「ボルコ、今から指示する地点に矢ァぶっ込め」


 「あいよーダネ」


 ボルコは俺の指示する場所へ素早く正確に矢を撃ち込んだ。

 とんでもない腕前だ。



 指示を飛ばす。

 どんどん思う通りに位置を操作する。

 よし、いい感じだ。

 思っていた通りの形になっている。



 「じゃあ、そろそろ………ん?」


 俺が倒した老人が起き上がって何かをしていた。

 手には空き瓶を持っている。


 「毒か………」


 「こうなっては勝ち目はない………諸共死ぬがいい!!!」


 老人は、瓶を割って毒を外に排出した。

 勝ち誇ったような笑みを浮かべ、 こちらを見る。


 「ははははははは!! この毒は単なる解毒魔法では解けんぞ!! 正確な成分を分析して魔力を調節し——————は?」



 俺は一瞬で解毒した。

 数種類の物質を投げ込み、反応を見た。

 毒の種類は10種。

 魔法を加えられているため、こちらは調節が必要な低レベルの魔法しか使えないが大した問題ではなかった。

 それらの毒を一個一個丁寧に、かつ一瞬で解毒したのだ。



 「な、何という………!!」


 「悪いなジイさん。全部終わりだ」


 「!!」



 さっきの指示でどうにか殺し屋連中を中央へ追いやる事に成功。

 手練れはエルとドレイルが倒していた。

 


 「こんな、 馬鹿な………!!」



 老人は悪態をついて、地面を殴った。

 だが、もうどうにもならない。

 戦いは終わりだ。



 「受け入れろ。残念ながら戦いも、あんたの人生も、」


 剣を振り上げる。

 今回は犯人探しは無しだ。

 俺たちを狙った以上、容赦しない。


 俺は最後の一撃を老人へ放った。



 「これで、ゲームオーバーだ」

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