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第400話


 「探すのはいいが、肝心の鱗粉の位置が見つからないな」


 戦っては探して戦っては探している。

 しかし、小一時間ほど探していたが、鱗粉の匂いも、妖精の魔力も全く感じられない。


 「ご、ごめんさなぃ………」


 シュンとするドレイル。

 すると、流………いや、ここではルクスとしておこう。

 ルクスは、ドレイルにこう言った。



 「謝る必要はないさ。これは君がいるからこそ出来る探索方法だけど、誰も出来ないことをやっている君を責め立てる権利が俺達にはないし、そんな事はしないよ」



 「………う、うん。ありがと、う」



 「おー、いいこと言うじゃねェかルクス。な、ラビ」


 「うん」


 俺たちはしみじみとそう思った。


 「そうか? うーん、だったらそろそろ解放してくれないかい? おチビちゃんちょっと噛む力が強………あ、これ結構強いよ? これ本当のヤツ」


 ルクスが例のごとく手を出そうとしていたので、ラビを持って行って噛みつかせている。


 「じゃあ、手をこいつの後ろに回そうとすんな」


 「ふんあ(すんな)


 しばらくしてマジで痛がりだしたので、少し様子を見てから解放した。

 しかし、やはり見つからない。

 本当に一筋縄では行かなそうだ。


 「これはまさか………食われた?」


 「ちょっと、縁起でもない事言わないでよね!」


 「いてェ!?」


 ミヤはグルーの頭を小突いた。

 初めはみんな笑っていた。

 だが………






———————








 「おい、これは………」


 「ああ、 もう8時間だ」


 フールーとユーリンがそう言った。

 少し苛立ちが見える。


 「急ぎ目で探したのですが………」


 「まだ大丈夫ダネ………たぶん」


 プリヴィアを励ますボルコも少し自信を失っている。



 おそらく、ざっと全体を回った気がする。

 広い山だが、亜人の鼻を持ってして本気で探し回れば、少しくらい見つかる筈だ。

 ()()()()()()()()()()()()()


 「おいおいおいおい、マジで食われたんじゃねェのかよ………」


 冗談だったその一言だが、見つからないうちに全員がそれを疑い始めてしまう事になった。



 だが、



 「………ししょう、何かわかってるな」


 ラビはジトーっとした目で俺を見ていた。

 明らかに疑っている。


 「お、わかるか?」


 「いやーなかおしてるぞ」


 わかってきたじゃないか、ラビ。


 そう、こいつのいう通りだ。

 グルーは喰われた………つまり、ピクシーは既に死亡しているという可能性をあげているが、それはないと俺は思っている。


 ここが危険だとは承知であの男は依頼をしただろう。

 しかし、表情には一切に焦りはなく、喋り方もなにもかもが平生だった。

 

 さて、問題はピクシーがどこにいるか、だ。

 俺の考えが正しければ、見つからない事にも原因がある。

 そう、鱗粉だ。

 俺達は、鱗粉を手掛かりに捜索をしていたが、見つかることはなかったし、おそらくそれでは見つけられない。

 何故なら、これは前提として()()ピクシーが発見されたとしたら、という話が事実でなければならない。

 現状を鑑みると、ピクシーは動いていない可能性が高いのだ。


 そりゃそうだ。

 犬の亜人が匂いが全く追えなくなるほど長期間経って依頼されているとは誰も思うまい。


 

 おそらく、これは予想でしかないが、確証を得るに足る何かがあり、ピクシーは長期間それの庇護下にあったのではないかと俺は睨んでいる。


 

 ピクシーを守護するなにか。


 それはおそらくヒトではない。

 仮にヒトならば、そいつがどうにかするだろう。

 それにクルーディオの確証がヒトによるものだったら、そもそも奴は俺たちに依頼しない。


 つまり、俺らが探すべきは奴が頼っている何か。

 そこまで分かれば後は………

 




 「ケン、何かわかるダネ?」


 「少しだがな。ドレイル」


 ドレイルは少しビクッと体を揺らすと、 こっちを向いた。


 「鱗粉の匂いを追いつつ………お、あった」



 俺は地面に生えていたとある花を摘んでドレイルに見せた。


 マナフル草。

 魔力の密集地帯で、環境が適応しているときはよく生えている。


 「こいつの匂いの強い場所も探ってくれ」


 「ま、マナフル草なんて、どう、するの?」



 「こいつを追えば鱗粉の場所どころか、ピクシーの場所がわかるかも知れない」


 

 「「「!!」」」



 ここまで回りくどい事をしたのだ。

 それをじっくり調べたお陰でヒントは得た。

 クルーディオの正体もなんとなく掴めたと思う。

 ならば、そろそろ捜索を終えてしまおう。



 「俺たちは、マナフル草を使って“宿り木”を探す。それが、最後の目標だ」



 「本当だろうな?」


 「にわかには信じられないが………」


 ユーリンとフールーが疑ってかかった。

 そして、グルーとミヤも疑うの目を向けている。


 子供がものを無くした時と同じ心理だ。

 いくら日にちがあっても、部屋からそれが出てこなくてはもう無いのではないのかと思い込んでしまう。


 「どのみち………」



 プリヴィアは続けてこう言った。


 「どのみち、方法はないのです。皆さん、信じましょう」


 少し冷静になって理解したのか、最終的には納得していった。


 「ケンさん、よろしくお願いします」


 「サンキューな」








 こうして、プリヴィアの説得のおかげで、俺たちは捜索を始められた。

 マナフル草は匂いが強いらしく、すぐに見つけられた。

 そして、目当てのものが見つかったときのこいつらの顔は俺はしばらく忘れられそうもない。

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