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第399話


 特に名称があるわけではないが、みんなはこの山を魔巣山と呼んでいる。

 その名の通り、魔物たちが巣を作っているようで、モンスターの数がえげつない。

 ファリスがたまにやって来て、魔力を発散させているので、モンスターバブルやリトルバブルは発生してないようだが、それでもなお数が多い。


 俺たちはいま、そんな危険地帯でモンスターと戦っていた。





 「うおおおおおおお!!!!! フォーメーションンンン!!! クリムゾンッッッ!!!」



 ベニーは大声でそう叫んだ。

 一斉に背を向けて逃げていく。

 追って来ているのはサンダーウルフの大群。

 ランクがCなので、こいつらには少々厳しいだろう。


 ちなみに、フォーメーションクリムゾンとは、ひたすら逃げようという作戦を何となくかっこよさげに言ったものらしいが、ダサいことには気づいていないらしい。



 「なーにやってんだァ?」


 五人組が逃げた先に、グルーが槍を持って構えていた。

 強化魔法をかけ、低い姿勢で虎視眈々と敵を待つ。


 「ふぅウウウ………………」


 槍の纏っているのは炎属性。

 威力勝負か。


 そして、グルーの横を5人が通り過ぎていった瞬間。


 「ヒュオッッ!!!」



 一突。



 槍はサンダーウルフを貫通し、グルーはそのまま群れの最後尾まで突っ切った。

 

 「ハッハッハッハッハ!!!! 喰らえ犬っころ!!」

 

 グルーは地面に槍を突き立て魔力を流す。

 あの槍は魔法具だ。

 槍の魔力を、地中の魔力と同化させて火柱を生む魔法具。


 「灰になれッ!!!!」

 


 ボコッと地面が隆起する。

 そこから螺旋状の火柱が突き出し、一気に10体ほど削った。


 「チッ!! しぶとい!!」


 すると、



 「お」



 ぐしゃり、と音がなると、サンダーウルフの頭がひしゃげた。

 上空から飛んできたミヤが、2対のサンダーウルフを殴り潰したのだ。


 「動きが荒いよ、グルー!!」


 「あーもー、うっさい!! ミヤのは細かいんだよ!!」


 その間にミヤを狙って、三方向からサンダーウルフの電撃は発せられる。


 「!!」




 スルリ、と。

 武闘家特有のなめらなかな足さばきで、悉く電撃を躱す。

 そして、クルッと頭が下に向くように上に飛んで手甲に魔力を貯める。


 「セェアアッッ!!!」


 この手甲もまた、魔法具だ。

 突きが地面に触れた瞬間、地面が揺らぎ、サンダーウルフのいる地点に巨大な岩の槍を隆起させる。



 ドゴォオオオオン!!!!



 グルーの魔法具と同系統のものだ。

 


 「パクんな!!」


 「うっさいわね!!」



 口げんかが始まる。

 そんなミヤの隙を、サンダーウルフは突いたのだ。



 「………ゴァアッッッ!!!」



 「なっ!?」


 死んだと思っていたサンダーウルフからの電撃。

 油断んしていたせいで、もうすぐそこまで迫っていた。


 ——————間に合わない


 そう判断したミヤは手を十時に組んで防御しようとした。

 が、これでは遅い。


 その瞬間。




 「【フレイムキャノン】」



 顔の目の前を巨大な火球が通り過ぎていった。

 電撃はどうやら巻き込まれていったらしい。



 「あ、ごめんね!! ありがとうユーリン!」


 「油断しちゃダメっしょ、ミヤ。アタイらはともかく、アンタは戦闘科だしね」 


 「へへ、肝に銘じておくよ」


 「ユーリン、一気に片付けるぞ」


 「はいよ」


 フールーはゴツい杖を手にとって詠唱を始めた。


 「『我が手より生まれし水は、千差万別の凶器に変ず【ウォータスミス】』」



 水が変形し、剣や槍になってサンダーウルフに飛んで行った。

 しかし、何匹かは仕留めたものの、全滅には至らない。

 だが、狙いはそれではないのだ。


 「弾けろッッ!!」



 フールーの掛け声に応じて、武器が爆散し、高密度の水蒸気に変形した。

 その直後、今度はユーリンが魔法を放つ。


 「急げ、正規の動きではないんだ。保って5秒だぞ」


 「わかってるよ。『熱よ。大気を支配し、空気を燃やせ【ヒートエリア】』!!」


 水蒸気のある場所の様子が変わる。

 チリッ、とサンダーウルフの毛に水滴ではない水分が浮上する。

 そう、汗だ。

 しかし、 それも一瞬のこと。

 次の瞬間、



 「消えな!!」

 


 範囲内のサンダーウルフが一瞬で蒸発した。

 体力を消耗されていなければ、一瞬で逃げられただろうが、こういう手負いの敵相手では大いに効果をもたらす。





 「へへん!! どうだ!!」



 グルーはボルコに向かってドヤ顔を見せた。

 

 「おお、腕を上げたダネ、グルー」


 「そうだろそうだろ! ボルコ兄ィにもそろそろ勝てるかもな!!」


 「そうかダネ? じゃあ、あれも倒せるダネ」


 ボルコは奥の方から飛んできている飛行物体を指差した。

 グルー達はその方向を見た。

 全員ギョッとする。


 「は、ハザードウィング………!?」


 ランクSの危険モンスターだ。

 流石にこいつらには荷が重いだろう。


 「行くか? ボルコ」


 「いや、ここは俺だけで行くダネ」


 ボルコはアイテムボックスから巨大な弓を取り出した。

 威力増強の魔法が何重にもかかった超凶暴な弓だ。


 「こいつはエグいな………」



 「初撃必殺。これは戦闘の頭だけでしか使わないと決めてるダネ」


 ボルコはその巨体ですら見合わない弓を引きながら、こう言った。



 「何故なら、これを使えば大体一撃で終わるダネよ」



 話す。

 甲高い音はもはや破裂音も斯くやというほどだ。

 だが、それに見合った威力はある。



 「はい、終わりダネ」



 弓は真っ直ぐ数キロ先のハザードウィングの喉を目掛けていった。

 大した腕だ。

 矢はハザードウィングを貫通。

 ハザードウィングは魔石になりながら、山のどこかへと消えた。




 「うわぁ………………やっぱ、弓の腕は凄まじい………なんで特科に行ったんだよ、ボルコ兄ィ」


 「スカウトされたからダネ」


 そう、こいつは弓以外にも、魔法の命中率が群を抜いているのだ。

 どんな属性の魔法でも、目視できるなら狙った場所に当てることが出来る超人だ。

 俺も一目置いている。


 「さ、行くダネ」




 特科とそれ以外の力の差をここに来てはっきりと知ることになった。

 やはり、 エリートだ。

 少なくとも、リンフィアは数年以内にこのレベルに来て欲しいなと改めてそう思った。



 

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