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第396話


 クルーディオ・フーガ。


 彼は、魔獣祭の開催準備期間から本番にかけて必ず現れる謎の男。

 大会自体に手出しをするわけではないので、たまたま毎年開催する日付である日にちが重要なだけという可能性もある。


 だが、毎年なのだ。

 毎年突然現れては、何もなかったかのように忽然と消える。

 目的はわからない。

 だが、やっている事は有名だ。


 



 「裏クエスト?」


 俺はプリヴィアにそう聞き返した。

 

 「ええ。ギルドではなく、個人個人にクエストを依頼しているようなのです。私はその依頼の報酬を手に入れるために、ボルくんに頼んで一緒に依頼を受けてくれる仲間を集めています」


 プリヴィアはボルコとアイコンタクトを取ると表情を緩ませて笑みを見せた。


 「「………」」


 こいつらがこれ見よがしにいちゃいちゃするもんだから、ドレイルが顔を真っ赤にしてうつ伏せてしまっている。


 「あっ、も、申し訳ありません!」


 「いやいい。存分にやっちゃってくれ」


 「それは困るぅ………」


 ドレイルは超小声でそう言っている。

 流石にこいつの心臓にも悪そうだから、やっぱり本題に入ってもらおう。

 と、思っていたら、プリヴィアは急に真剣な表情になった。


 「ヒジリ・ケンさん」


 「おう?」


 「お願いします。どうかお力添えを。私はどうしてもそれを手に入れなければなりません」


 「ケン、俺からも頼むダネ」


 プリヴィアとボルコはそう言って頭を下げた。

 こうなっては断れまい。


 「………わかった。協力してやる」



 俺がそう言った瞬間、場がドッと沸いた。

 どうやら周りの連中全員こいつの仲間らしい。



 「わ、わ、わ」


 突然囲まれてドレイルはわたわたと慌て始めた。

 あがり症だなー。


 「いやぁ、良かったよ。ボルコ兄ィ達に協力しなかったら強制しようと思ってたんだよね。あ、俺はグルーね」


 キャップを被った同年代ほどの男子生徒はそう名乗った。


 「コラっ! 戦闘科でも、自信過剰になるなって言われてつでしょ! この人特科生なんだよ! あ、私はミヤ。よろしくね!」


 ミヤはグルーを拳骨で殴りながらそう言った。

 周囲にいたのは10人。

 うち5人は下等の生徒だった。


 「「「よろしく!!」」」


 ベニー、セイン、リョク、キサラ、モモル。

 まるで戦隊モノにように髪の色を揃えている。

 かなり明るめの色なので、めちゃくちゃ目立つ。

 話によると、5人とも医学科らしい。

 なるほど、医学科は確かに学科の中ではイレギュラーだ。

 こいつらはただ単に回復魔法を覚えるのではなく、ちゃんと医療の技術も学ぶ。

 戦闘は、戦闘科がいなくとも、最悪魔法の火力で戦闘はできるが、医療となると少しばかり治療がいる。

 協会の修道女なんかもこう言ったことの勉強をさせられると聞く。


 次はこいつらだ。

 この2人の他に、フールーとユーリンという、男女。

 フールーは、坊主頭でごっつい杖を手に持っている。

 おそらく総合科だ。

 

 ユーリンはチャイナヘアだが、拳法を使う様子はなく、普通に杖だった。



 「お前………」


 「やぁ」


 ルクス・フェルディアこと楠 流がこんなところにいた。


 「ついユーリンちゃんにつられてね。俺もここに来たんだ。そしたらあの美女が頼みごとをするもんだから………思わず受けてしまったんだよ」


 こいつ本当に節操ないな。


 「そんな目で見るなよ。アンタだって美人を連れているじゃないか………………少し奇抜なセンスだけどね」


 そう、あの髪で台無しになっている感はある。

 しかし、当人は気に入っているのだから、それに口出しするわけにもいかんだろう。


 「おーい、ケン。そろそろ細かい内容を話しておきたいから集まってくれダネ」










———————————————————————————










 となりで、ドレイルが幸せそうにケーキを食べている。

 ラニアとラビもばくばくと食べまくっていた。


 「お前らもちゃんと聞いとけよ」


 「「うん」」


 ラビはともかく、ラニアも夢中になってるな。

 まぁ、あとで伝えればいいか。

 それにしても、ドレイルたち姉弟はめっちゃ食うな。

 流石は亜人族。


 「あの………よろしいでしょうか?」


 「ああ、大丈夫だ。こいつらは無視でいい」


 こんなのに構ってたら話が進まんだろうしな。

 俺がそういうと、プリヴィアは小さく頷いて、話を始めた。



 「そうですか。では………………今回受ける裏クエ

 スト。噂ですが、依頼内容は毎回変わるとのことです。しかし、現時点で一つ問題があります」


 「問題?」


 「はい。そうです」


 問題か。

 そういえば、やけに情報が不確定だ。

 らしいだの噂だの。

 問題というのは多分、


 「どこに依頼者がいるかという事か」


 「はい」


 少し、暗めの雰囲気になった。

 なるほど、一切手がかりがないわけか。


 「正直手詰まりなのです。何をすればいいのかさっぱりで………」


 「そうか」


 「アンタ、随分と余裕だね。アテでもあるわけ?」


 「やめろユーリン」


 余裕ぶっていると思われたのか、ユーリンが俺に突っかかってくる。

 すると、


 「確かに、アンタやけに余裕だな」


 「ちょっ、グルー!!」


 こいつまで突っかかって来た。

 この反応から察するに、こいつらはこいつらで依頼を受けたい事情があったらしい。

 さっきボルコが云々と言っていたので、グルーの場合はこいつ自身ではなく、ミヤが報酬を得る手伝いをしているのだと推測した。

 まぁ、突っかかるのも無理はない。

 



 「なるほど、余裕なのが気に入らねンだな?」



 何故なら、アテはある。



 「んじゃ、情報が少しくらい入ればお前らも余裕になるだろ。な、にーちゃん?」



 俺は、後ろに座っていたレザーアーマーの男にそう問いかけた。

 さっきのアサシンどもよりずっとレベルの高い隠密。

 そんな奴がここ会話を聞いた段階で注意をこっちに向けたんだ。

 関係ないわけがない。



 「さて、情報を貰おうか」

フールーとユーリンの武器および所属学科を変更しました。

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