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第389話


 「クソッ………なんて圧だ………」


 猛烈な圧で周囲を包む。

 ニールですら一瞬躊躇した。

 しかし、あいつならすぐ入ってくるだろう。

 言ってしまえばこれは気持ちの問題。

 どうにでもなる。


 「む………」


 マルフィの砲撃が完全に目隠しのみになった。

 意識が既に俺から逸れている。

 どうあっても自分で俺から一本取りたいらしい。

 好都合だ。


 ニールにとってはここが正念場。

 しかも威圧により精神は極限状態。

 これを使わずどうするか。


 劇的な勝利が欲しいわけではない。

 そろそろあいつには自覚させる必要がある。

 


 あいつの圧倒的な弱点を。



 「ニール………」



 話しかけて更に集中を乱す。

 そう、今必要なのは精神の不安定さ。

 どんどん揺るがせ。


 「ここで決着だ」


 あたかもニールを狙っているように思わせる。

 そうやってどんどん視野を狭める。

 条件は整った。


 さぁ、思い知れ。

 自分の克服しなければならない弱点を。




 俺は体の向きを、ある方向に向ける。

 正面には、リンフィアとリル。

 俺は意識を完全に変えた。


 「!!!!!」




 

 ゾワッッッ!!!






 猛烈な怒気がこちらに向いている。

 

 そうだ。

 こいつの頭の片隅には、確実にリフィがいる。

 俺も人のことは言えねェが、もっと信頼してやっていいだろうに。

 だから、





 「お前は庇おうとする」



 「な………こ、いつ、ッッ………!!!」



 俺は予め剣を出していた。

 怒気がダダ漏れのあいつの動きは簡単に予測できた。

 それを利用して一番力が入らない部分を攻撃。

 剣を二本とも空に飛ばした。




 「………………」



 「こいつは決定的にアウトだぜ、ニール」


 ニールは手を上げてこう言った。


 「負けだ」



 小さくため息をつくと、マルフィを引っ込めた。

 もしかしたらミレアが落ちてくると思ったが、エルかビリーに乗っかっているらしく落ちてはこなかった。



 「確かに、これは少しマズイかもしれんな………」


 「そうだぜ。それにお前は回避できる筈の失敗をしちまった」


 「………あ」


 ニールは頭を抱えている。

 理解したらしい。


 「俺が模擬戦だろうがなんだろうが、リフィを痛めつけたりするわけねぇだろうが」



 「そうだった………お前も甘やかしてるんだった………」


 遺憾だが言い返せない。



 「残りはリフィとミレアだけだが………」



 ぶっちゃけこいつらは普通に勝てそうだな。

 だから、こういう事にしておこう。




 「なぁ!! お前ら!!」



 「「?」」



 大声で呼びかけた。

 2人とも首を傾げている。



 「ぶっちゃけお前らはまだまだ修行が足りねェからさ!! 決着は今度の行事でつけようぜ!!」



 俺はそう提案した。

 今のまま戦っても負けることはない。

 リンフィアの場合は地力が、ミレアの場合は実戦経験がまだまだ足りていないのだ。

 地力がなければそもそも通用しないし、あったとしても経験が無ければ、“戦闘”は出来ない。



 「………そうですね」


 リンフィアはリルを引っ込めた。

 ミレアもビリーに乗っかって地上まで降りてきた。


 「うーん、それじゃあ、やめときましょうか」


 「ええ、悔しいですが、彼の言う通りです。この中ではおそらく、私達が一番下なのでしょう」



 そう、厳しい言い方かもしれないが、こいつらはまだダメだ。

 確かに、普通より全然強い。

 ミレアの魔力は学院でも屈指のものだし、リンフィアの戦闘における勘や戦い方は既に一人前だ。


 だが、まだ足りない。

 とりあえずはそこを補う必要がある。




 「終わりなのです?」



 エルがクジラに戻って頭の上に乗っかった。

 こいつ、今回はあまり活躍出来てなかったな。

 まぁ、結構な乱戦だったし仕方ないか。



 「おう、終わりだ。物足りねーだろうが、また今度な」




 「はいなのです!」



 合宿最後の模擬戦は終わった。

 無傷だが、なかなかあいつらもいい感じになってきている。

 今度の目標は、とりあえず魔獣演武祭。

 約束だから俺は出ない。

 サポート専用キャラに徹するつもりだ。

 そこで、リンフィアとラビを徹底的にレベルアップさせる。

 おそらく、第1対第2の戦いか、個人戦となるだろう。

 実力を図るいい機会だ。

 この2人には、最悪戦うことになったとして、一年後の戦争で一緒に戦えるくらいには成長してもらう。

 使い魔………どの道そろそろだったので、より好都合だ。


 今度の魔獣演武祭が楽しみだな。











———————————————————————————











 と、息巻いていた俺だが、ここで思いもよらぬ事態が発生する。

 全くの予想外、と言うわけでも無かったが、正直言って、かなり厄介だ。

 現在、各国は睨み合いを行なっている。

 しかし、その均衡を破ろうとしている国があった。


 結論から言おう。



 可能ならば止めようと思っていた戦争は、唐突に始まることになる。

 そして、 俺の運命も大きく変わることになるのだ。

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