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第381話


 「おお、でっかい湖だな」


 「ここにくる途中の川もかなり広かったですね」


 「そだな」



 さて、魚を釣ろう。

 いや、捕まえるといったほうがよさそうか。


 俺はとりあえず、気配察知で魚が多い場所を探した。



 「………あの辺か」


 俺は靴を脱いで裸足になった。



 「ミレア、あの辺の湖の水を持ち上げるから、お前の魔法具を網に括りつけて魚をとってくれ」


 「なるほど、わかりました」



 俺はネットを取り出してミレアに渡した。

 ミレアはいつものステッキと鉄球を取り出して、網に括りつけた。


 ステッキを振って、網を浮かべる。


 「こんな感じですね」


 「そうそう。じゃあ、エル」


 エルは影からひょっこり顔を出した。


 「はいなのです」


 「頭掴むからそこまで飛んでってくれ」


 「?」







———————









 「………ご主人様」


 「我慢しろ」


 「ちょっと雑なのです………」



 俺は今、片手でエルの頭を掴んで、そこまで飛んで行ってもらっている。

 頭を掴んでぶら下がっているわけだ。

 まぁ、我慢してくれとしか言いようがない。



 「それじゃあ、始めっかな」



 位置を固定。

 魔力集中させた。

 湖を射撃して、俺の真下に追い込む。


 「わー、揺れるのです」


 あとで謝ろう。

 とりあえず、誘導には成功。

 上空にいる俺とエルに気づかない魚達は呑気に俺たちの真下に近づいていった。


 「よし………」



 そして、魚の大群が範囲に入る。


 「今!!」



 風魔法で魚を少し斜めの上空へ吹き飛ばした。

 ここでミレアの番だ。



 「ミレア!!」


 「了解!!」



 ミレアは鉄球を操って、上手いこと網で魚を捕獲した。


 「おぉっはっはっは!! 大漁大漁ってか!!」


 「なんでもいいから離してほしいのです………!」









———————————————————————————









 エルに謝罪をした後、食べれそうな魚をアイテムボックスに移した。

 その後から、休憩がてら湖を見ている。

 今更だが、結構いい場所だ。





 「いや、やっぱり慣れてるな。ずっと使ってんのか?」



 「はい。幼い頃から戦闘ではこれを使っています。応用は利きますが、はじめの方はその自由度から操ることが少々難しくて手こずっていましたね」


 へー、そういう時代もあったのか。



 「ケン君は………異世界の人なのでしょう?」


 「む………」


 そうか。あの時こいつは見たんだったな。

 この反応って事は、まだ幼少期の俺しか知らないんだな。

 それも限定した記憶。

 ()()は見られてないで何よりだ

 



 「まぁ、そうだな」


 「昔のケン君も、昔の私みたいに色々失敗したのですか」


 「昔………昔か」







 失敗。

 失敗。

 何が失敗かというのなら、俺は初めから失敗していたのかもしれない。

 自己を持たず、ただ父の要望に応えるため、この身を道具のようにして扱っていたあの頃、何が成功かわかっていなかった。

 多分、間違えてはない。

 成功失敗云々関係なく、そもそも根本から始まっていなかったのだ。

 そりゃあ、失敗のしようは無いはずだ。

 何故なら、道具の失敗は使い手の失敗だからである。

 そうだ、それが失敗だったのだ。

 そうやって自分を持っていなかったから俺はあんなものを見て、あんな思いをして、あんな終わりに出くわして、あんな、あんなあんなあんなあんなあんなあんなあんなあんなあんなあんな








 「ケン君!!!」



 「っぁ………」



 気がついたら汗まみれになっていた。

 いかん、過去のことを考えたらこうなるのは俺の悪い癖だ。




 「もういいです。すみませんでした………」


 「ぁ………ああ。大丈夫。気にすんな」


 俯いているミレア。

 流石にこれはダメだったか。

 昔の話。

 少しくらいなら、大丈夫だろう。


 「ほら、顔上げろ。大丈夫っつってんだろ?」


 「………はい」


 ミレアは俺を見た。


 「そうだな。器用な子供じゃなかった。不器用で、ついでに無愛想。先生達も俺を腫れ物みたいに扱ってたな。まぁ、人付き合いが苦手だった」


 嘘は言ってない。

 実際の幼少期の俺の話だ。


 「今は、大丈夫じゃないですか」


 「友達のおかげだ。無愛想な俺とずっと居てくれた友人がいたから、今はこの程度に喋れるようになった。それと、ある出来事だ。これは語りたくない」


 「っ………」



 この時の俺は気づかなかった。

 俺は初めて、真正面から拒絶した。

 語りたくない、と。


 「はい、終わりだ。さっさと野菜とって帰ンぞ」


 「………そうですね」



 その後山の中で山菜を採って俺たちは拠点に帰った。

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