第380話
ぶっちゃけ、俺は寝られればどうでもよくなってきた。
が、せっかくなので快適なのを作りたい。
しかし、これ見よがし派手なのを作るのもアレなので、こうする事にした。
「と言うわけで、地下に家建てたがどうだ?」
「わー、やっぱりケンくんこういう事すると思ってました」
リンフィアが遠くを見ながらそう言った。
「上は地味な感じの当たり障りのない臨時の家、しかし、地下通路を通ればあら不思議。超快適な4部屋の地下室があるという」
バイクを作って、余った部品で魔法具を作っていたらなんとなくハマったので、色々生活用品を作ってみたりしちゃった俺。
拳銃を作って以来、並立思考を展開しながら同時にかなりの作業が出来るようになったので、バイクも1日で数台作ってしまった始末。
もはや道具屋になれそうだ。
空調や料理設備、冷蔵庫に風呂やシャワーに加え、トイレまでも完備。
「どうだリフィ、完璧だろ」
「キャンプ感がないので私は外がいいです」
「………」
「それにお風呂は温泉があるのでそっちに行きたいです。ていうかケンくんが見つけてたじゃないですか!」
膝から崩れ落ちる俺。
確かに温泉は俺が見つけたんだった。
そこはかとないショックを受けている。
エルが頭をポンとヒレで撫でているが、なんとなくやめてほしい。
「でも、たまにはこっちに来たいので一応残しといてほしいです。さ、とりあえず先に料理からするっぽいので、一緒に行きましょう、ケンくん」
「はぁ………へいへい」
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「食材調達とか。俺の手持ちの飯があるからそれ食えばいいじゃん」
「それは駄目です。せっかくの自然環境の中での自炊の機会、学園側がそれを用意した以上、不正な行為は会長たる私が許可しません」
食料を採るのについて来たのはミレアだった。
お嬢様なくせに、こういうイベントには積極的だ。
いや、逆にお嬢様だから、こういうイベントに興味がある勢か。
「かぁー、真面目ちゃんだな、お前。禿げるぞ」
「刺されたいのですか?」
「いや、その顔で言うのヤメテ」
すっごい怖い顔してたぞ、今。
「いつも寮では朝食をお世話になってる分、今回くらいは私が料理を振る舞います」
よくよく考えたら、俺はこの世界に来てから料理しまくってる気がする。
向こうでもたまにしてたが、基本手抜き料理と売店のパンやコンビニ飯ばかりだった。
ったく、リフィ達料理しな………………ぁ、やばい。
完ッッッッ全に失念していた。
「っっっっっ………………………!!!」
「わっ!? どうしたのですか!? いきなりそんな汗かいて………」
「だ、ダークマターが………ダークマターが生成されてしまう!!」
やばいぞ、これは向こうにいるニールにしかどうにかできない。
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そんな不安を抱えたまま、とりあえず食料調達に励む俺と何もわかっていないミレア。
「とりあえず、肉からだな。向こうから動物の気配がする。とりあえず行ってみようぜ」
「はい」
この世界にも、豚や牛、鶏やその他諸々の向こうにもいた動物は存在する。
だが、こっちの動物はこっちの動物で美味いやつらもいる。
森を抜けた先にいたのは、それの一例であるキメラファングだ。
「わ、キメラファングですね………」
大きな牙を持った動物の頭を2つもつ動物。
モンスターみたいな見た目だが、これでもモンスターではない。
ちなみに、モンスターと動物の違いとは、魔力の有無だ。
一切魔力を感じなければ、モンスターではない。
だが、それでも強力な個体もいる。
「なるべく傷つけないように、倒すのは難しい………あれ?」
ミレアはキョロキョロとあたりを見渡している。
何やってんだ、あいつ。
さて、こいつは頭以外は内臓まで食える超自然に優しい動物だから頭を落としていこう。
「よう」
ぽん、と足に触れた。
いきなり現れた俺にギョッとした目で見ながら、キメラファングは雄叫びをあげようとした。
「ゴぁ——————」
ズパパッッ!!
叫ぶ瞬間に、地面から飛び、コンマ数秒もかからず頭を細切れにした。
「頂きますっと」
バラバラになった頭部が地面に落ちる。
とりあえず、燃やしておいた。
灰になったからいつか消えるだろう。
「あ!!」
この段階でようやくミレアが俺に気がつく。
「終わってるぞ」
「早!!」
まぁ、早く仕留めたからな。
というか、キメラファングが邪魔で喋りづらい。
「とりあえずアイテムボックスに入れとくわ」
俺はとりあえずキメラファングの身体をアイテムボックスに閉まった。
これだけデカけりゃ数日狩しなくてもよくね、などと考えてしまう。
とりあえず、肉は終わりだ。
「んじゃ、次は魚だな」
食材調達はまだ続きそうだ。




