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第378話


 「模擬戦か………」



 そういえば、前回訓練場で模擬戦して以来一度も戦っていない。

 修行はつけてやってるが、そう言う流れにはなっていないのだ。


 丁度いい。

 テストも兼ねてひとつ戦ってやろうか。



 「いいぜ」


 「マジっスか!?」


 ガリウスの表情が晴れていく。

 めちゃくちゃ嬉しそうだ。


 「ああ。今まで教えてたのが出来てたか見てやる。さっきやってたセルドとの戦闘じゃ、見れなかった部分もあるしな」



 模擬戦なので木剣を使う。

 お気に入りの木刀はボロボロなので、今ではこっちが訓練用だ。


 俺は木剣を肩に乗せて、中央に立った。

 久しぶりの戦闘に、エルが意気込んでいる。



 「頑張るのです!!」


 「ほどほどにな」


 「ハイなのです!!」


 本当だろうか。

 ま、こいつもそこまで馬鹿ではあるまい。


 「加減するな………とは言えねっすね。でも、真剣に戦ってください」


 ガリウスはグローブをつけ、拳を合わせながらそう言った。

 レッドの方も、主人に答えるように気合を入れている。



 仕方ない、要望には答えてやろう。

 他でもない俺の舎弟の願いだからな。


 「わかった」


 「!!」


 では、今から行うこれは試合ではない。

 あくまで真剣を望むならこれは“死合”だ。

 俺は木刀から戦闘用の真剣に持ち替えた。



 「来な。今のテメェは舎弟じゃなく、敵とみなす」





 ゴォオオオッッッ!!!





 「………………!!」


 設定した強さは、ミレアレベル。

 あいつがギリギリ勝てる強さだ。

 今のこいつはあいつより弱い。

 どれほど応戦できるか。


 殺気を飛ばす。

 必要なのは戦えることより、殺せることだ。

 死を飼い慣らし、殺気を振り切り、躊躇いを噛み殺すこと。

 ガリウス………いや、大半の生徒が、完全にはこれを出来ない。

 これが出来るだけで、動きは大きく変わってくる。




 「………ぅ………く………ァアアアアアアアッッッ!!!!」



 殺気を振り払う。

 そうだ、何でもいいんだ。

 みっともなくとも、己を鼓舞する事ができる事は大事な事だ。



 「行くぜッッッ!!!」


 その合図と共に、レッドが上空に炎を吐き出した。

 いや、あれは炎ではない。

 あれは、溶岩だ。


 「ゴァアアッッ!!!」



 初手としてはまずまずだ。

 言った通り、様子見をしている。


 「エル、回避」


 「はいなのです」


 難なく溶岩を回避。

 そして、その間にガリウスが接近していた。


 エルの方に。


 「!?」


 「先ずはお前だぜ、クジラァ!!」


 こっちにくると思ってなかったのか、ギリギリで躱すエル。



 「てことは………」


 「グルルルァアアア!!!!」


 「にゃんこはこっちか」


 


 戦力の分断。

 そして、倒せそうな方から狙って戦う。

 一応考えているようだ。



 「オラアアアアアアアア!!!」


 「やー!!!」



 エルの気の抜けた声。

 だが、




 ガキィイイイン!!!




 声に反して攻撃力はエグい。

 水の鞭のような触手がガリウスを襲う。


 「チッ………」


 一本を殴って弾く。

 もう一本をもう片方の手で弾き、沖から迫る鞭をさっきの方の手からの炎属性の炎弾で飛ばし、後ろから迫った隠れ鞭を蹴って防いだ。


 「ラァア!!!」


 その勢いで上に飛び、エルに向けて魔法を撃つ。

 放たれた炎弾をエルは鞭で弾く。

 すると、


 「後ろがガラ空きだぜ!!」


 背後に移動していたガリウスがエルを狙う。

 拳が直撃する——————かと思いきや、



 「!?」



 ピタリと動きが止まる。

 そう、エルはワザと後ろを開け隙を作ったのだ。

 そして、こっそり触手を地面に忍ばせ、今ガリウスの動きを止めている。


 「くっ………!!」


 ガリウスは捕まった状態から魔法を放った。

 しかし、避ける。

 

 「当たらないのです」


 トドメを刺そうとした。

 そのときだった。




 「ああ、知ってる」


 「!?」


 ゾワっと何かを感じた。

 何かくる。

 そう思ったエルは咄嗟に触手を振りほどき、上空へ逃げた。


 そして気づいてしまった。

 そう、途中からガリウスは、違う魔法を放っていたのである。


 「わぁ、油断ならないなのです」


 「クッソ………!! 何つースピードだ」





 このボルケイノタイガー、なかなか動きがいい。

 おそらく、ガリウスの指示で時間稼ぎを徹底されているのだろう。

 なかなか嫌な感じの邪魔を入れてくる。

 

 「賢いな、ニャンコ」


 だったら、これはどうだ?



 俺はレッドから距離を取る。

 そして、魔法を放った。



 「さて、どう出る?」



 俺が狙ったのは、ガリウスだ。


 「!!」


 主人を狙ったことに気がついたレッドは雄叫びをあげながら俺を狙ってきた。

 大した忠誠心だ。

 だが、そうじゃない。

 ダメだな。

 不正解だ。



 俺は今のうちに魔法を連射してガリウスを狙った。

 そして、案の定隙ができる。


 「エル!!」


 「ハイなのです!!」



 レッドに、だ。

 上空にいたエルは、そのままレッドに向かって突っ込んだ。

 ここでようやく、ガリウスはミスを自覚する。



 「バカ野郎ッッ!! 後ろだレッド!!!」


 後ろから迫るエルの攻撃をかろうじて躱す。

 だが、それに気をとられたレッドは俺に完全に背中を向けてしまった。


 あ、と声を漏らすガリウス。

 こいつの思っている通りである。


 これで、終わりだ。



 「筋はいいができるまだまだだ。上達しているにしても、 発展途上もいいところ。お前ら両方………出直してこいッッッ!!!」




 そして、 レッド撃破。


 2対1となったガリウスは止む無く降参したのだった。

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