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第37話


 「取ってきました」


 リンフィアは手に持った魔石を俺に渡した。


 「生き物を殺すことがこんなに辛いとは思いませんでした………」


 「そうだろうな。お前みたいなやつが生き物を殺すのを躊躇わないわけがない。だがな、」


 俺はまっすぐリンフィアを見てこう言った。


 「モンスターはいずれ人や動物に害を与える。誰かがやらねぇとダメなんだ。お前や俺はその誰かになるんだ。冒険者ってのはそう言う仕事でもある」


 リンフィアはしっかり聞いていた。

 俺は続けた。


 「殺すことに目を背けるんじゃなくて、向き合って、受け入れて、命を背負う覚悟を持て」


 「………覚悟………はい!」


 これで良い。

 これで戦える。

 こう言っておかないとコイツは多分ずっと引きずる。

 それはこいつの心がもたないだろう。

 


 「ありがとうございます。ケンくん」


 「………ああ」


 ちょっと罪悪感はあるが、もう問題ない。

 俺たちはゴブリン討伐のために再び捜索を始めた。










 「いました。あそこです」


 「ああ。数は3匹か………やれるか?」


 出来るなら無理はしないでほしい。

 

 「はい………やります」


 その一言には強い意志を感じた。

 惰性で言ってるわけではない。

 

 「わかった。やると言った以上こなしてこい」


 「わかりました!」



 リンフィアはすぐに動いた。

 その間に策を練る。


 今度はさっきより少し開けており、障害物が少ない。

 なので閉じ込めるのは無しだ。

 一体は【ファイアアロー】で倒せる。

 しかし、他の2体は別だ。

 運良くどちらか仕留めたとしても、もう一体を逃してしまう。

 

 (今度は取り逃しちゃだめ。これから冒険者として過ごすためにもここで妥協してはいけない。どうしましょうか………この場所では今の私の実力で全部仕留めるのは不可能………そうだ、この場所だからダメなんだ。別の場所に誘導すれば)


 リンフィアは誘導するポイントを探すべく途中で引き返した。

 

 (狭くて罠を張れる場所………あそこですね)


 近くの木の密集度が高い場所を見つける。


 「『土よ、敵を欺く罠となれ。ピットフォール』」


 ピットフォール。

 落とし穴を作る土魔法で、穴を掘るだけではなく、てっぺんを塞いでくれる効果もある。


 「それじゃあ」


 ゆっくりとゴブリンに近づく。

 強化魔法は既に使用済みだ。


 「ふぅーっ………」


 (覚悟………)


 しっかりと前を見据える。

 覚悟は決まったようだ。


 「行きます」


 ゴブリンのいる方まで走っていく。

 今度はこそこそするのではなく、相手に位置を知らせるために音を立てる。

 

 「ギ?」


 音に反応した。

 周りをキョロキョロ見て音を発生源を探る。


 「ギギッ!」


 リンフィアは高いところに登り、姿を晒した。


 「………」


 「ギィアアア!!」


 襲ってこないとわかったゴブリン3匹がリンフィアのいる木まで登った。

 登り切った瞬間、リンフィアは飛び降りて


 「こっちです」


 と言って逃げた。


 「ギギギ!」


 「ギィ!」


 ゴブリンはリンフィアを追いかける。

 身体強化のおかげでギリギリの距離を保てている。


 「はっ、はっ、はっ」


 草をかき分け、痕跡を残しつつ誘導する。

 落とし穴までもう少し。


 「ギギ」


 「ギ」


 ゴブリンは迫る。

 リンフィアはただただ逃げて落とし穴へ誘導する。


 「着いた」


 落とし穴のある位置までたどり着いた。

 一方ゴブリン達はリンフィアを囲っていた。

 リンフィアと落とし穴を中心にしてゴブリンが三方向からじりじりと迫ってくる。


 「………っ!」


 杖を構えるリンフィア。

 誰かが動けばその瞬間ゴブリンが飛んでくる。


 「ギィィィ!!!」

 

 「!」


 奇声とともに一斉に飛びかかるゴブリン。


 「今!」


 リンフィアは魔法を使う。


 「『風よ、舞い上がれ。ガスト』!」


 下からの突風がリンフィアを吹き上げる。

 ゴブリン達の隙間スレスレを通って上空へ。

 

 「ギ!?」


 突然で驚いたゴブリンは上を向いた。

 そして、


 「ギッ!………ギィ」


 3匹はぶつかりあってそのまま落とし穴に落ちた。


 「………」


 リンフィアはそのまま上空で杖を構える。


 「………ごめんなさい。命を、貰います」


 魔力を貯める。

 その魔力を魔法に注ぎ込んだ。


 「『炎よ、炎球となり敵を穿て。ファイアボール』」


 放たれた【ファイアボール】はゴブリンの入った落とし穴へ落ちる。











———————————————————————————









 


 「終わりました」


 「ああ、頑張ったな」


 俺は頭に手を置いた。

 リンフィアは置いた手を握ってこう言った。


 「ケンくん。私頑張ります。目標とかないですけど。頑張って依頼いっぱいこなして頑張ります!」


 「おう、頑張れ。折角自由になったんだ。いろいろやって好きなように生きろ。きっと楽しいぞ」


 リンフィアはまた一つ強くなった。

 そう思えた。


 「まだクエストは終わってない。あと4匹だ。もう半分倒した。初の依頼達成までもう少しだ」


 「はい!」


 また捜索を始める。

 その時だった。




 チリッ




 俺はその気配の方向を振り返った。

 何かが、いる。


 「どうしましたか?」


 「リフィ、最終試験だ。今度は俺の保険は無しで戦ってみろ」


 「………わかりました。頑張ってみます!」


 リンフィアはゴブリンを捜索しに走っていった。











 「さて、あそこか? 結構強い………誘ってみるか」


 俺は、魔力を貯める。

 この世界の全ての種族に魔力を感知する能力が備わっている。

 これは鍛錬しないと出来るようにならないが、さほど時間はかからない。

 ある程度強いやつなら微弱な魔力を感知できるし、強弱を理解することもできる。


 「フッ………!」

 

 気配があった方へかなり強めの魔力を飛ばした。

 と言っても、かなり加減はしているが。


 さあ、何が出てくるか?


 「!」


 「お前か? 私を呼んだのは」


 「《女王》か………」



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